地表にて
「ふぅ……やっと出られたか……」
彼は実に13年ぶりに地表へと出られた喜びよりや達成感はあまりなかった。
彼にとってはこれは単なる前段階。
登ろうと決意した時は、こうもアッサリと登れたことに対してすこし肩透かしを食らったほどだ。
ともあれ『悪魔の口』の中に13年もいた経験は無駄では無い。
彼の目的は妹の奪還。
彼は13年間、1度たりとも忘れたことは無かった。
厳しすぎる大自然の中で感覚は鋭く研ぎ澄まれ、眼光も鋭くなっている。
辺りをグルっと見回してみたが、特に人の気配は無かった。
『悪魔の口』から出る前に決めていたこと。
最終目標は妹ルナの救出、及び、保護。
だがそれが簡単にいくかどうかは不明。
なのでまずは情報収集。
相手が魔族排斥を目論んでいる輩であるため、あまり表立った行動はできない。ルナがまだ無事であると信じるしかない。
ただ、もしもルナが既に亡くなっているとなれば、関わった奴らにはそれ相応の粛清は行う予定である。
次に仲間を集うこと。
難を逃れた魔族が他にいるかもしれない。自分たちを殺しに来た輩はほかの種族に対しても同じ蛮行を行ってる可能性もあるかもしれない。
そういった者達ならば奴らに復讐心を募らせているだろう。
最後に安全に暮らせる拠点を作ること。
ルナを救出できたとしても、相手の数や勢力も不明。
安全に暮らせる場所は必ず必要になる。
どこかの国に身を寄せても構わないのだが、相手の勢力次第では国家間の戦争にも成りうる。
彼は改めて自分のステータスを確認した。
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【名前】ノックス
【種族】ハーフデビル
【年齢】18
【性別】男
【レベル】2046
【HP】507856/507856
【MP】472680/473012
【力】20971
【すばやさ】18654
【スタミナ】24006
【魔力】54908
【スキル】斬撃耐性9 衝撃耐性10 自然治癒10 弓術10 槍術10 剣術10 格闘10 鍛治6 錬金6 料理5 短剣術9 毒耐性10 麻痺耐性10 呪術耐性10 精神耐性10 恐怖耐性10 暗視10 威圧10 隠密10 灼熱耐性10 極寒耐性10 雷撃耐性8 暗殺10 裁縫6 魔力制御10 残存思念解読 詠唱破棄 魔力感知10 気配感知10 手加減3 罠作成8
【称号】地龍殺し 魔王格
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こうして見ると自分でも上げすぎたかと思うほどである。
レベルが999でカンストかと思いきや、1000を超えてもカウントされたのには自分でも驚いた。
「地龍って言うくらいだからほかにも火龍とかいそうだな。
それにしても『魔王格』については不明なままだったな。いつの間に取得したかも分からん。」
彼がここまでレベルが上がったのには理由がある。
それは『悪魔の口』に生息しているモンスターは地表よりも強いモンスターが生息していたのが理由である。もっとも、彼にとってはそんなことを知る由もない。
最初の1年はモンスターが強くジリ貧になり本当に死ぬ思いを何度も経験した。
2年目からはモンスターと効率よく戦えるようになり、レベルも面白いほどに上がっていった。
だが、12年目の後半からはレベルがほとんど上がらなくなり、『悪魔の口』でのレベル上げが全くと言っていいほどに滞ってしまった。
すぐさま『悪魔の口』を出ても良かったのだが、12年目の時に倒した地龍の肉を消費するのに存外に時間がかかったのもある。当然全て平らげた。
それと魔法についてだが、彼は一般的な魔法の詠唱法など知らない。体に流れる魔力を感じ取り、イメージでもって魔法を発動している。
そのためか、詠唱破棄というスキルを所持しているが、このスキルを取得して初めて彼は魔法の発動には詠唱が必要なのかと感じたほどだ。
13年間、『悪魔の口』でのサバイバルは常に死と隣り合わせ。最初に転落させられた場所が北東側だったなら彼は転生後もすぐさま死んでいただろう。
あとはルナの生存を信じるならばあまり目立ってはならない。兄の自分が力をつけたと知られれば人質にされるだろう。
幸いにもノックスは母の影響か、見た目は人間と同じである。
ノックスはこれらの事を今1度確認し、ひとまず情報収集へと人里を探し歩いた。