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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第22章 『固有魔法』
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謎の女

 ノックスは今日、突如ルナに呼び出され、研究室へと訪れていた。



 研究室にはルミナやミラ、それにシャロンも来ており、机の上には山のように書類が置かれていた。



「それで、俺に何を見せて貰えるんだ?」


「ついにね!お兄ちゃんが前に言ってた、『お尻を洗浄する装置』が完成したんだよ!」


「……なに……!?……本当にか……!!?」


「うん!ミラちゃんがいろいろ数値化してくれてね。そのおかげで完成できたの!」


「…ちょいちょい、あたしらだって手伝ったでしょーが!」


「もちろん、ルミナさんにシャロンも!」


「最初聞いた時は『そんなの作ってどうするの?』って思ったけど…すっごい楽しかった!」


「早速試してみて!」



 ルナに促され、胸の高鳴りを抑えつつノックスは研究室に拵えられた小部屋に入り、『洗浄式便座』の具合を試す。


 便座の横に設えられた受容体に魔力を流すと、便器からモーター音が鳴り出し、ノズルが現れる。


 それがピタリと止まると、水が噴射された。



 排便はしていないノックスだったが、15年振りに味わうこの感覚に至福の表情を浮かべていた。



 受容体の下には左右に動かすダイヤルのようなものが設置されており、動かすとノズルが前後へと微調整できる仕組みとなっていた。



 ノックスが小部屋から出てきたのを見た4人は、ノックスからの感想を今か今かと待ちわびた表情を浮かべていた。



「……素晴らしい…………素晴らしすぎる…………よくぞこれを作り上げてくれた!!!!」


「…えっ!ち、ちょっと!?お兄ちゃん!!?いくらなんでも感動しすぎ……」



 ノックスは感動のあまりルナに抱きついて感謝を述べた。



「ちょっとぉ!?そこは第一夫人のあたしに抱きついてよぉ!!ほれほれ、いらっしゃいなダーリン♡」



 ルミナは両手を広げて迎え入れようとしたが、ノックスはハッと我に返り、ルナから離れ、

「夫人ではない。」

 とあしらった。



「しかしながらこれは素晴らしい。早速お披露目式、それと量産に移るぞ。」




 その後、ノックスの一声により、すぐさまお披露目式が執り行われた。


 水洗式トイレの次にまたトイレの改革が行われたとの事で、特に主婦や女中らの見物人が数多くいた。



 こればかりは実際に自分で使ってもらった方が早いという事もあり、見物客らは列に並んで洗浄式便座を体験してもらう。



 当初は『なんの役に立つのか』『お尻を洗ったからとて同じでは』と怪訝な表情を浮かべていた見物客らは身をもって体験すると、恍惚とした表情を浮かべていた。



 早速ノックスはこの洗浄式便座を公共設備に配備させた。


 安価な値段では決して無かったが、利用者らはこのトイレに痛く感動し、購入のために予約が殺到していた。


 それは国内だけでなく、国外からも予約が殺到し、現場では嬉しい悲鳴を上げていた。



 利用者らは、


『素晴らしき使い心地。』


『いと気持ち良し。』


『楽園はここにあったのだ。』


『新たな扉が開かれた。』


 などなど、様々な声をあげていた。




 ともあれ、『キュア』と『洗浄式便座』はイブリース王国の主力商品となり、かつてないほどに貿易黒字をたたき出したおかげで国民の生活が益々豊かになっていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから幾日が過ぎ、訓練の為に今日は野外へと赴き、浜辺で新兵の訓練を施していた。



 暇つぶしということでベリアルが兵を相手に稽古を付けていた時だった。



「ガハハハハハ!!ほれほれ!!打ち込みが弱いぞ!!ほれそこも!!」



 楽しそうに兵を相手取るベリアルであったが、不意に稽古を取りやめた。


 突然の事で理由を尋ねたが、バツが悪そうにはぐらかすばかりで、早々に立ち去ってしまった。



 そんなベリアルはさておき、今日は魔術の訓練を行うために新兵らを相手にアインが教えていた。



「あのー、アインさん!なんで魔術の出力を絞るんです?」


「簡単な理由ッスよ。戦闘が長引いた時、魔力切れを起こさないようにするためッス。」


「それなら、マジックポーションではダメなのでしょうか?」


「飲めればいいッスけどね。ただ、無闇に大きい魔術を撃ちまくるより、威力を絞って精度を上げることッスね。」


「……なるほど……」



 コリンたちの後輩に当たる新兵たちはアインから教わる魔術の理論や戦法を真剣に聞いていた。


 とは言え魔術を絞るという戦法は、マイナとダンジョンで共闘しながら教わった物ではあるのだが。



 アインはマイナと共にダンジョンで戦闘訓練を行いながら、ノックスの魔術の無駄の無さに改めて感嘆した。


 マイナにも聞くと、

『あのお方ほど魔術を極めている人は見た事がない』

 との事だった。



「他に聞いておきたい事とかあるッスか?」



 アインが尋ねると、新兵の1人が手を挙げており、指名すると興味津々な表情で尋ねてきた。



「アインさんは、一体どれくらい強い魔術を撃てるんです?」



 その質問には皆も興味が惹かれたらしく、一斉にアインを見やっていた。



「んえ?お、俺のッスか?」


「せっかく浜辺なので、見てみたいです!」


「アイン先生!!」


「え〜っへぇ〜、どうしようっかなぁ〜。」



 などと言いつつ満更でも無い様子でアインは海に向かって立ち、念の為に感知スキルを使用し海に人の気配がない事を確認する。



「……そこまで言われたんなら仕方ないッスね〜!んじゃあ、とくと目に焼き付けておくッスよ!!」



 アインは最大火力の魔術を行使すべく魔力を練り上げ、海に向かって両手を(かざ)した。



「焼き尽くせ!!!!」



 膨大な魔力と共に火魔術が撃ち出され、水平線に向かって巨大な火球が飛んでゆく。


 それを見た新兵らはとてつもない魔力に驚き、一斉に『おぉ……!!』と感嘆の声が漏れていた。



 水平線に向けて撃ち出された火球は軌道を変え、上空に向かって消えて行った。



「どんなもんッスか?」


「……凄い……凄いですよアインさん!!」


「……すっげーー………あんなの喰らったら一溜りも無いよなあ……」


「アイン先生!!さすがです!!」


「いや〜それほどでもッス〜〜。」



 普段褒められ慣れていないアインは顔をにやけさせ、自慢げな表情を浮かべていた。




『潜んでいた(わらわ)を見つけ、かような魔術を撃ち放ってくるとは。随分なご挨拶をしてくれたようじゃのう。』


「んえっ!?」



 不意にどこからが女の声がし、アインらは驚いて辺りを見渡す。



『妾を見つけておるのに知らぬフリをするとは。失礼な奴じゃ。』



 声の主は海から聞こえ、アインが海を見やる。



 すると、海から何者かが浜に降り立ち、濡れた青い髪を魔術により一瞬で乾かした。



 アインはその者の姿を確認するや、顔を真っ赤にして腰を抜かした。


 それだけでなく、新兵の男共もアインと同じ反応を見せ、中には鼻血まで噴き出させる者がいた。




 海から現れた謎の美女は、全裸だったのだ。

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