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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第22章 『固有魔法』
248/322

各部隊の日常

 ストール大陸の北東。


 大小様々な小島が存在するその中に一際大きな島がアステル島である。



 ノックスが魔族たちを率いて拠点とし、当初は100人程度が暮らす国、というより集落に近い存在であった。



 建国から2年近くが経ち、イブリース王国には2度目の春が訪れていた。



 あれから島の住人は右肩上がりで増え続け、現在ではその数1万にも及んでいる。



 当初はガンに蝕まれ、余命幾ばくもない者らが『キュア』を求め訪れたり、『魔王』が支配する国ということで面白半分でやってくる冒険者。


 その者らがこの国が如何に過ごしやすく、快適な国なのかというのを身を持って知り、噂が噂を呼んで住人は今も尚増え続けていた。



「こら!そこ!!手荷物検査はこっちです!!……ほらそこ!!列に割り込まないでください!!」



 入国審査所には、コリンの姿があった。


 コリンらは訓練期間を終えた後、第3部隊に配属となり、ナタリア隊長の元こうして入国審査官として従事していた。


 ナタリアは厳しさの反面とても面倒見が良く、日々の訓練で扱かれていたのだが、部下からの人望はとても厚い。


 ただ、ノックスの事となると人が変わったかのように態度を急変させていたのには当初は戸惑いすら覚えていた。



「……すみませんが、入国はお断りさせて頂いてます。」


「あぁん!!?なんだってダメなんだよ!!」



 時折教会員がイブリース王国に訪れる事があったが、それらはすべて入国拒否の姿勢を取っている。


 当初は教会員の入国を許可してみてはどうかとの案もあったそうだが、魔族も暮らすこの国に教会員を入国させるというのは不可能だと判断されたのだ。



 とは言え、未だに教会員はこの国への入国を諦めた訳ではなく、こうして入国審査に引っかかっては追い返されていた。



「……はぁ……またですか……」


「教会員だからって入国を拒否するなんざ横暴じゃねぇか!!こっちだって高ぇ金払ってやっとここまで来たってんだぞ!!」


「それがこの国の決まりです。教会員の方々は、如何なる事情があれども入国は拒否させて頂いてます。」


「てめぇじゃ話になんねぇ!!責任者を呼びやがれ!!」


「たとえ責任者が来たとて、答えは同じです。どうぞ、お引取りを。」



 声を荒らげる教会員とは裏腹に、アテナは毅然とした態度で一歩も譲ることなく対応する。



「…くそっ!!覚えてやがれよ……!!」


「はい。その顔、しかと記憶しました。もしも貴方がこの国に危険を及ぼそうとするのならば、私が貴方の首を切り落として差し上げます。」



 ギラリと鋭く睨むアテナの気迫に押された教会員は後ずさり、悪態を付きながらもその場から去っていった。



 その瞬間、それを見ていた来訪者から拍手が送られ、アテナはそれに応えるように軽く

「お騒がせ致してすみません。」

 とぺこりと礼をした。



「さっすがはアテナだねぇ……コリンなら前みたく喧嘩しちゃってただろうにさ。」


「……うるさいなアイザック。あれは向こうが悪いって隊長だって言ってくれたじゃないか……」


「ねえあなたたち!!余計なお喋りをしてるヒマがあるの!!」


「「は、はい!すみません!!」」



 副長であるマイナが2人に向けて注意し、コリンらは背筋をピンとさせて敬礼して反応していた。



「……全く……」


「マイナはコリンに厳しいなぁ。隊長より厳しいんじゃね?」


「弟だからこそ、よ。弟に甘くしていたら、他に示しがつかないわ。」


「…姉弟ってのも複雑だなぁ。」


「キリトこそ。余計なお喋りをしてるヒマがあるのかしら?」


「…へいへい。」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『…コチラはホーク、隊長、聞こえますか、と。』


「…コチラはジェラート。あぁ…よく聞こえている。」


『現在島の北西部に来てますが、洞窟を発見。出入りしている個体にはエレメンタルリザードを確認しました。』


「……見立て通りだな……魔力感知で大雑把な個体数は分かるか?」


『…それがどうも個体が多くて…今ヨハンナが『透明』で近くまで調査してます。』


「…了解だ。奴らは狡猾だ。いつの間にか周囲を囲まれていた、などということが無いよう、十分に注意しろ。」


『了解しました。では、何か分かり次第また報告します。』



 王城内にある通信室にて、ジェラートが無線を使用してアステル島の調査を行っていた。


 ジェラートは第2部隊隊長として拝命させられて以降、精力的に情報の収集活動を行っていたのだ。



「…あ、あの、隊長……こちらの無線機ですが……改良出来ました…です!」


「……おぉ………もう出来たのか……!さすがはミラだ。」


「…ちょっとぉ!?あたしも手伝ったんですけどぉ?」


「ルミナ様も流石です……ククク……ノックス様からの説明で理解し、それで改良を施すとは……これで諜報活動も更に効率化される……」


「んじゃあ約束通り、ミラ借りてくね〜!ミラ!今度はあたしんとこに来てね〜!」


「は、はい!」


「……言っておきますがルミナ様……変なクスリを開発すれば、ノックス様にすぐ報告しますからね……」


「だいじょーぶだって!ミラが手伝ってくれてから失敗したことなんかないじゃーん!ほれほれミラ、行くよ!」


「で、では隊長、失礼します…!」


「…あぁ……ミラ、頼んだぞ。」



 無線機に周波数調整装置を組み込み、通話の際に他の部隊と混線させないようにしたのだ。



 ミラにこの無線機について説明すると面白いほど食いつき、無線機の理論や仕組みを1年かけて研究し尽くし、それだけに飽き足らずに改良点などを大量のレポート用紙に纏めあげたのだ。



 その能力を高く評価されたのだが、当の本人は

「こんな機械を思いつくノックス様のほうが凄すぎです……!!」

 と驚嘆していたのだが。



 ともあれ、情報収集が捗り、ジェラートは島内だけに関わらず、ストール大陸にも部下を派遣し、諜報活動を行えるよう準備を進めていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そしてこちらは第1部隊。



 治安維持部隊として活動を行う部隊であるが、兵の訓練もこちらで担当している。



「そこ!!もっと下半身を使え!!腕だけで剣を振るな!!」



 隊長のノエルは本日も張り切って部下らに稽古を付けていた。


 基本の走り込みや素振り、対人・対モンスターとの訓練など、スケルトンらも協力して訓練に参加していた。



「ガハハハハハ!!ほれほれ!!そんな温い攻撃なぞ屁でもないぞ!!もっと工夫せんかい!!」



 ベリアルまでもが訓練に参加し、楽しそうに兵を相手にしていた。



 魔道兵らはアインとモズにより無詠唱魔術の基礎を習い、今ではイブリース兵全員が無詠唱にて魔術を行使できるほどにもなっていた。



「……よし、今日の訓練はここまでだ。各自解散し、休息を。」


「「「「「はっ!!!!」」」」」



 最初こそ泣き言ばかり並べていた兵たちだったが、ノエルの厳しい訓練、ハイゼルのアドバイス、リドルのフォローのおかげで誰も脱落することも無く、屈強な兵へと仕上がっていった。



 ノエルは部下の稽古だけでなく、自身の訓練まで行うために幾度となくダンジョンへと足繁く通っていた。



 その際、他の面々も通ったりしたのだが、ベリアルは常にダンジョン内へと同行してくれていた。


 訳を聞くと、

「ノックスに負けっぱなしは嫌じゃ!!」

 との理由であった。



「ノエルは真面目っスねぇ……」


「そういうアインこそ、最近はよくマイナとダンジョンに行ってるそうではないか。」


「……え、い、いや……ふ、深い意味は無いんッスよ?…魔力調整とか、その辺俺よりマイナのほうが上手いから……それだけッスよ!」


「……?……別に変な事を聞いた覚えはないが……?」


「へっ?」


「……動揺するなんて…何かやましいことでもあるんじゃないかって疑われますよ。」


「……い、いや!そんな事ないッス!!……あ、そ、そういや前にダンジョンにノックス様とも会ったなあ…」


「…話を逸らすなんて余計に怪しい……」


「ノックス様は事務仕事で溜まったストレス解消のためにダンジョンに通ってらっしゃるのだ。」


「……ストレス解消でダンジョン行くのって、多分ノックス様くらいッスよ……」



「隊長!!今日もダンジョンに行かれるのですかい!?」



 一行の元に突如話しかけてきたのはコンラッドであった。


 彼はジーナとフェリックスと共に第1部隊へと配属となっており、他の兵よりも特に訓練に積極的に参加していたのだ。



「あぁ。その予定だが。」


「俺もそろそろ連れてってください!!」


「……ふむ……だが、あそこは1つ目の部屋からエレメンタルリザードが出てくると前に言ったはずだ。それでも来るというのか?」


「お願いします!!」


「…まぁ良いだろう。危険と判断したら即時撤退させるぞ。」


「ありがとうございます!!」


「……しかし、だ。お前は最近やけに訓練に熱心だな……何かあったのか?」


「……い、いえ!この国の兵となる以上はもっと強くなりてぇってだけでして……」



 コンラッドは一瞬顔を赤らめながらポリポリと頭を掻いてはぐらかした。


 その様子にアインは何かに気づいたらしく、ニヤニヤしながらコンラッドに尋ねた。



「はっは〜ん。もしかしてコンラッド………ジーナと……」


「だぁぁあああ!!!!アインさんよ!!!!そ、そんな事ぁ関係無ぇですから!!!!」


「……え?ホントにジーナさんとお付き合いなされてるんですか?」


「それは初耳だな。婚約したのか?」


「………ぐっ………アインさん………まだ秘密にしときたかったってぇのに………」


「へっ!!?そ、それは知らなかったんッスよ!!……てか、マジデスカ?」


「……お恥ずかしい話ですが……その………仰る通りでして……へへっ。」


「おめでとうございます!コンラッドさん!」


「それで訓練にも積極的だったのか。」


「ぐわぁぁあああああ!!リア充ぅぅぅううう!!」


「……こんな俺に伴侶ができるなんて考えた事も無かったんですけど………へへっ………

 あ、でも、この事はまだ…その、内密にしてくれれば……」


「いいだろう。それで、ダンジョンへ行くという話だったか。遅くなるかもしれんぞ?」


「構いません!」


「なら行くとしようか。アインは?」


「……アインさんも来てくれますよねぇ……?」


「…へっ……!?………わ、分かった、行くッスから……コンラッド……その目は止めてくれッス……」



 秘密をバラされたコンラッドは、多少恨めしそうな目でアインを見つめていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……ふむ………銃身の具合も良く、狙い通りに発砲できるな……」



 その頃ノックスは兵器開発部にてセトとモロゾフが製作した銃の確認を行っていた。



 仕組みこそ地球の銃とほぼ同じ機構を取っているが、火薬に関しては魔術を使用した代物だ。



「火薬も変更させたようだな。」


「前までは砂が混じった空気を圧縮させてたんですけど、砂の排出がなかなか思うように行かなくて……故障の原因にもなっちゃってましたんで。」


「今は何を?」


「今は単純に空気の圧縮だけです。圧縮させる空気の量を安定化させる為に、布袋を使って量を安定させて圧縮させてるんですよ。」


「なるほどな。」



 ノックスはそう言い改めて銃を観察する。



 全長は約1メートル。


 銃身にはライフリングが刻まれており、撃ち出された銃弾に回転力を加える。


 窓の掛金のようにスライドさせ、銃弾と火薬を押し込めてリロードをする。


 銃には望遠鏡を取り付け、遠くにいる対象を狙って撃つタイプのスナイパーライフルである。



 ノックスは再度遠くの岩に狙いを定め、引き金を引く。


 発射された弾丸は、見事岩に命中し、精度に関しても問題は無かった。



「そういえば、もう1つ。ノックス様に見て欲しい物があるんですよ!」


「ワシらの自信作ですぜ!」


「ほう?」



 そう言ってセトらが持ってきたのはスナイパーライフルとは形状が大きく異なっていた。



 グリップ部分こそ他の銃と変わりは無いが、銃身が三角形の形状をしており、銃口も広い。


 さらに、銃弾を込める際には中折れ式の拳銃のように折れ曲がり、そこから弾丸を込める形状となっていた。



「……ほう……中折れ式か……」


「その銃、弾丸が特殊なんですよ!」



 そう言うとセトは使用する弾丸を見せた。


 確認すると、円錐形の形状に溝が彫られていた。



「それを作るのにちぃとばかし苦労しました!それは通常の弾丸とは異なり、形状だけでなく成分も違うんですぜ!」


「成分?」


「えぇ。その弾丸にゃあ、ミスリルを混ぜ込んどります。魔術を弾丸に付与させ、撃ち出すんです。ノックス様、一度試し打ちしてくれんですかい?」


「…ほう……!…面白そうだ…!」



 ノックスは試しに弾丸に火魔術を閉じ込める。


 それを装填し、狙いを定めて発砲した。



 撃ち出された銃弾は火炎を帯びて赤い閃光の如く岩へと当たり、そのまま岩を貫通する。


 銃弾はそのまま後ろの木へと着弾すると、木は忽ち燃え盛り、あわてて水魔術で鎮火させた。



「……凄いな……とんでもない兵器だ。」


「…い、いや〜……俺が撃ってもここまでにはならなかったんですけどねぇ……」



 セトは撃ち抜かれた岩をまじまじと見つめながらそう言った。



「この銃……名はなんと言う?」


「一応、『魔法銃』って呼んでます。」


「『魔法銃』か。弾の量産は出来そうか?」


「えぇ。と言っても、ミスリルを使用する代物ですから、ミスリルさえありゃあなんとでもできますぜ。」


「ならばそちらはこっちで工面しよう。」


「銃本体はどうします?」


「予備も含めて10丁ほど用意しておいてくれ。あまり多くても使い手を選ぶ以上、眠らせてしまうことになる。」


「「了解しました!!」」

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