禁じられた兵器
閑話 禁じられた兵器
サントアルバ教国のとある家を貸し切って、4人の男女が1人の男が組み立てた理論について聞かされている。
壁や机にはビッシリと数式が書かれた紙で溢れており、中には難しい数式で埋め尽くされていた。
「まず、僕の考えた理論だ。聞いてくれ。
この世界のあらゆる物質を調査した結果、この2つの特殊な鉱石に行き着いた。
1つ目は『発光石』。見てわかる通り鮮やかな緑に発光する鉱石だ。
そして2つ目は『偏光石』だ。
1つ目の『発光石』だが、発光を齎している物質を調査した結果、微量の放射線を発している事が分かったんだ。
この放射線を詳しく調べた結果、地球のウランに似た物質であり……」
「ちょい待ち!!放射線って!!……てか、ウランってそれ…大丈夫なのかよ!?」
「……微量だから問題は無い。続けるぞ。
地球のウランに似た物質であることが判明。この鉱石から次は濃縮を行い……」
「……待て。何を言っているのかさっぱり分からんが…?」
リョウヤの説明を聞いていたのはタクト、ミサ、コウスケだけでなく、そこにはデュバルの姿もあった。
「…デュバル様、安心してください……俺らもちーっとも分かんねえんすわ。」
「…というか、ウランに濃縮ってことはまさか?」
「ミサの考えている通り、この世界でも作れるんだよ。地球では禁じられた兵器と呼ばれた、核兵器が。」
「……お、おい……マジかよそれ………」
室内に動揺が走るも、デュバルはそれが何なのかは分かっていなかった。
仕方なくリョウヤは核兵器について説明を行い、核兵器の恐ろしさについても解説した。
「……ほほう……そのような爆弾が出来るとは……それではそれを実用化させるのか?」
「…いえ、濃縮ウランを使用した核兵器をそのまま使用はしません。」
日本にも使用された原子爆弾は二つのタイプに分かれており、広島がウラン型、長崎がプルトニウム型である。
この世界でも作り得る核兵器としては、広島に落とされた原子爆弾と同じ構造となるわけだが、リョウヤはその効率の悪さを指摘した。
ウラン型となると、核兵器として使用出来るウランの含有量が極めて低く、採掘や濃縮に膨大な費用がかかるためだ。
「……つまりは原爆は作れねえっつうことか?」
「作れるには作れるよ。金をかければね。もしくは、コウスケの固有魔法を使えば。」
「……ん?……あぁ、『拡大』でウランの量増やせばいいのか!……いや、でもあれはよう…」
「分かってる。『拡大』では長期間拡大し続けるのは無理なんだろ?僕が言いたいのは、ウランそのものを大きくしてほしい訳じゃない。」
「ではどう利用するつもりなんだ?」
「そこでもう1つ。『偏光石』を利用する。これは光を屈折させたり収束させる能力がある。」
「……?……おいおいリョウヤ、何が何やらさっぱりだが?」
「『発光石』からは、放射線が出ているだろう?それを『偏光石』で、出る放射線の向きを揃えさせる。
僕の調べでは、放射線のような不可視光線でも『偏光石』はその効果を発揮したんだよ。」
「……だーーかーーらーー、リョウヤセンセー、それをどうすんだよ?」
「その放射線を拡大させるんだよ。コウスケの固有魔法を使用してね。
言ってみれば、不可視のレーザービームってこと。」
「「「!!!!!!」」」
「……む?何のことだ?」
リョウヤはデュバルに向けて放射線や、それを大量に被曝した場合の効果についてなど詳しく解説を行う。
「……な、なるほど……!!不可視のレーザービーム……!!」
「喰らえば一溜りもねぇぞ……!!」
「……その不可視のレーザー……喰らうとどうなるんだ……?」
「それについてはこれから実験してみる。」
リョウヤは机の上に置いてあった布の掛かった箱の元へと移動し、布を取り払った。
ガラス製の箱の中にはネズミがおり、不安そうにあちこち走り回っては出口を探しているかのようである。
「ここに、さっき説明した『発光石』と『偏光石』を組み合わせた物がある。
コウスケ、こっちに来て『拡大』を使用してくれ。」
「…お、おう。」
装置は太い注射器のような形状をしていたが、先端には針は無い。
どうやらそこが不可視光線の出口のようである。
リョウヤがネズミに照準を合わせ、装置から伸びるスイッチを手に持った。
「コウスケ、『拡大』を。」
コウスケは言われるがまま、装置の出口付近に『拡大』を使用し、それを見計らってリョウヤがスイッチを押す。
照射してすぐさま、その効果が現れた。
ネズミはガラスの中で金切り声を上げたかと思うと、一瞬にして何倍にも膨れ上がり、すぐさま爆発四散した。
「うぉぉ!!?なんじゃこりゃ!!!?」
「……一瞬で爆発した……!?」
「……ふむ………マイクロ波は出てないと思ったんだけどなぁ……もしかするとこちらの世界だから何か魔力の干渉でも……興味深いな。」
驚く皆とは対照的に、リョウヤは結果について詳しくメモをとり、手袋を嵌めてガラスの箱を開けて中の確認を行っていた。
ネズミの血はボコボコと泡立ち、即座に沸騰していたようである。
「……これは面白い……!!これを兵器として運用すれば、あのノックスがいくら強大な力を持っていようが関係ない!!」
「すげぇ!!これで仲間が爆発したとき、アイツはどんな顔見せてくれんのか見物だぜ!!」
「…しかも全く見えない光線よね……こんなの、防ぎようもないわ……」
「おいリョウヤ!いつまでネズミの死骸なんざ調べてんだよ気持ちワリーな!」
「……む?……これも大事な研究のためだが?」
「それより、これ、何て名前にするよ?」
「……考えてなかったな。では、デュバル様がこの兵器に命名してくださいますか?」
「……ふむ……これぞまさに、神の啓示。黙示録。よし、この兵器は今日から、『アポカリプス』と命名しよう。」
「『アポカリプス』か!いい名前ですね!!」
「すぐさまこの『アポカリプス』を運用段階に移行させろ。他の事については、俺が処理しておこう。」
「「「「了解です!」」」」