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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第21章 リッチ討伐派遣
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裏切り

 モズが撃ち放った浄化魔術が再生中のリッチに浄化魔術を撃ち、続いて魔道部隊から撃たれた広域浄化魔術により、リッチを完全に無力化させた。



 リッチを形成していた骨が再生を止め、完全に無力化したかを皆が静かに見守る。



「……やった………のか………?」



 警戒しながらリッチが復活しないかと静かに見守っていた討伐隊だったが、リッチは完全に行動を停止したのを確認するや、大歓声があがる。



「ぃよっしゃぁぁああああ!!やったッスね!!」


「……ふぅ……アインがいきなりあたしに『氷の雨(フロストレイン)』を使ってくれって言ってきた時はどうなるかと……」


「……でも……おかげでやりましたね!!」



 一同はリッチ討伐の成功を祝って大いに喜びあっていたが、ロザリオはどうしても腑に落ちそうな表情を浮かべていた。



「……どうした……?なにか腑に落ちん事でもあるのか?」


「……いや……色々とおかしいかなってね……」


「……?……おかしい…?」


「あまりに手応えが無さすぎると思わないかい?」


「……それだけこちらの軍勢が強かったということでは?」


「…………………」



 それでもロザリオは腑に落ちないらしく、思考を巡らせあらゆる可能性を探っていた。



 その時、ハッと思いつき、ロザリオはすぐさま確認する。



「そういえば、サンドラ女史は!?」


「いやはや、さすがは列強に名を轟かせるロザリオ殿、ザリーナ殿です。それに、ウィンディアよりの精鋭もお見事です。

 さらに言えば、魔族の方々のお強さには感服致しました。」



 突如何者かが拍手をしながら賛辞を送る。



 皆がその声の主を探すと、いつの間にかサンドラがリッチの残骸の上に立っていた。



「……サンドラ殿……?」


「我がラヴィーナの兵が束になってでも勝ち得なかったこのリッチを討伐することのできる方々。

 本来ならば、火龍をも倒したノックス国王陛下にお越しいただきたかったが……それでも……

 ……あなた方を手放すには、実に惜しい……」


「……なに……?」


「……!!!!皆、離れろ!!!!」



 途端にサンドラから禍々しいほどの魔力が一気に膨れ上がり、サンドラを中心に解き放たれる。


 勝利に酔いしれ、完全に油断していた者らはその魔術に巻き込まれる。


 ロザリオ、ザリーナ、アインはすぐさま魔障壁を展開し防ぎ切り、その背後にいたモズとマイナとハイゼルをも守る。

 ノエルは俊足を活かして距離を取っていた。



「サンドラ女史!!何を!!?」


「あなた方は貴重な人材……是非ともその身をこのラヴィーナへと捧げていただきたい。」



 サンドラから放たれた謎の魔術に巻き込まれた討伐隊らは目が虚ろになり、サンドラを守るかのように隊を成す。


 周りを見渡すと、弓兵と魔道兵の背後にはサンドラの部下が抑えており、身動きを封じられていた。



「それにしても、さすがはロザリオ殿。リッチを無力化しても尚、油断することもないとは。」


「……色々と腑に落ちなかったんだよ。部外者の僕に討伐に至る計画も、ほぼ全て任せっきりだったしね。

 だけど、まさかキミが裏切るとは思いもしなかったよ。」


「ふふふふふ………本来ならこの魔術であなた方を手中に収める計画でしたが……まぁ、第2のプランへと移行しましょう。」


「サンドラ殿、なぜだ!!なぜ貴殿が裏切った!!」


「弱りきったこのラヴィーナ共和国にとって、リッチの魔術はとても素晴らしき物です。ただし、このラヴィーナ共和国を強き国にするには、それだけではなりません。

 あなた方のように、真に強き者らを手中に収め、身を捧げて頂く必要があったのですよ。」


「……それだけのために……!!」


「さて、お喋りの時間はおしまいです。大人しく、我らの手中に収まってください…!!」



 サンドラの合図と共に、操られた討伐隊が一斉に襲いかかる。



 先のアンデッドとは違い、討伐隊らは操られているだけであり、死者ではない。



 1対1ならいざ知らず、さっきまで共闘していたはずの討伐隊を斬り伏せることに躊躇(ためら)いを生じる。



 操られていたシリュウの槍がモズの背後から襲わんとするその時、上空からメローネが間に入る。



「シリュウ!!こんな奴の言いなりになるなんて情けないネ!!さっさと目を覚まセ!!」



 メローネの呼び掛けに応じることも無く、シリュウはそのままメローネ相手に攻撃を繰り出す。



 メローネは上空へと一時避難しようとしたが、シリュウはそれを逃すまいとしがみつき、両者が上空で揉み合いになっていた。




「……悪く思うな……!!」



 ノエルは俊足で縦横無尽に駆け回っていたが、討伐隊の集団に向け突進して蹴りを喰らわせた。


 吹き飛ばされた討伐隊らであったが、骨が折れたにも関わらず無理やり身体を起こし、尚も攻撃を継続させようと動き始める。



「くっ!!やはりこいつら…!!」


「ならこれで!!」



 モズが討伐隊に向け浄化魔術を使用するが、全く効く気配が無い。



「……なら……!!」



 ならばと今度はサンドラに浄化魔術を撃ち放つも、こちらも効く気配が無かった。



「……ムダのようだね。どうやら、サンドラ女史を……いや、サンドラを殺せば討伐隊も正気に戻るかもしれない。」


「…そんな……」



 操られている討伐隊を殺すことに躊躇い、一行はジリジリと追いやられる。



「あはははははは!!!!どれだけ強き者らであっても、やはり人は殺せないようですね!!

 ……さあ……大人しく降伏し、我が下僕となるのです!!」


「……仕方ない……彼らを殺すぞ!!」


「……ロザリオ……!?しかし彼らは操られているだけで!!」


「そんな悠長な事言ってられる状況じゃない!このままだと僕らが……後ろだ!!」



 ザリーナの背後から討伐隊の刃が襲いかかる。



 混戦で後ろを取られたザリーナであったが、魔障壁では間に合わないと咄嗟に判断し、攻撃を避けつつ剣でカウンターを見舞う。



 ザシュ、と嫌な感触と共に、両断された死体が足元に転がり、仕方なかったとはいえ人を殺めてしまったことにザリーナは心の内で(…すまない)と謝罪した。



 薄ら薄らと目を開けると、足元に転がっていたのは両断されたアンデッドの死体であった。



「ふぅぅ…危なかった……」



 どうやら咄嗟にホークがアンデッドの死体と討伐隊の位置を交換させたのだ。



「……貴殿が……すまない!」


「礼はまだ早いよ…っと!」



 ホークは『交換』を活かし、囚われていた弓兵と魔道兵の位置を交換させ、解放する。



 さらに、ハイゼルが分身体を用いてアンデッドの死体をサンドラの頭上に投げ込む。



「……ふん……無駄な足掻きを……」



 サンドラは落ちてくるアンデッドの死体を剣で払おうとした刹那、ホークがすぐさま『交換』を使用しノエルと入れ替えた。



「…何…!!?」



 突然の入れ替わりで不意を突かれたサンドラは、すぐさま剣で対処しようにも、ノエルは双剣でサンドラの剣をいなしつつ、袈裟斬りを見舞った。



「ぐぁぁああああああ!!!!」



 着地したノエルはすぐさま次の剣戟を浴びせるべく大地を踏み込み、がら空きとなったサンドラの腹目掛けて剣戟を浴びせにかかる。



 しかし、それはサンドラの周囲にいた討伐隊により防がれた。



「……お……おのれ……!!この私に傷を……!!

 ………ならばもうよい………予定より早いが、貴様らにはもう用は無い!!!!」



 怒りの形相でサンドラが魔力を練り上げたかと思うと、大地から禍々しい魔力が迸る。



 そして、大地から黒い手の様な物が現れると、操られていた討伐隊に掴みかかり、魂を引き抜いた。



「……なっ!?」



 魂を引き抜かれた討伐隊は即座に大地へと崩れ落ちる。



 そして、集められた魂がサンドラによりリッチの死体へと寄せ集められ、無力化したはずのリッチの骨がカタカタと動き出す。



「……ま……まさか…………皆の魂でリッチを……!?」



 動き出した骨がリッチを再度形成し、カカカカと笑いながらリッチが復活していた。

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