ロンメア領
ここはロンメア領。
広大な領土を保有するこの領ではあるものの、『悪魔の口』と呼ばれる大地の裂け目を有するこの領は、もともとはタザン領と言い、今よりも領土が少ないもののかつて世界でも有数の栄華を誇った国であった。
しかしその国の栄華は突如見舞われた大地震により崩壊する。
その大地震により国民の大多数を失い、地震の余波による津波も各地を襲っていた。
そしてその大地震により大地が引き裂かれ、そこが『悪魔の口』と呼ばれるようになる。
なんとか復興を遂げようと努めたものの、『悪魔の口』により交通網が遮断。難を逃れた国民は国を離れ、タザン国は一気に衰退してしまった。
その後は隣国ロンメアと併合し、現在のロンメア領となっているために広大な領土を誇っている。
『悪魔の口』にもいくつか橋が掛けられている。
ただし、世界中の人々はおろか、領民の皆からも『悪魔の口』の底はどうなっているかは不明。
その昔に上からロープで降りて調査しようとしたものもいたらしいが、ロープが食いちぎられ、引き上げた際には本来人が括り付けられていた箇所には鋭利なものにより寸断されていた。
そんなことが何度かあり、皆ここの探索は諦めた。
誰しも釣りのエサにはなりたくないからだ。
そんな『悪魔の口』に、世界で初めて生還した者が現れた。
彼の名はノックス。
人と魔族のハーフである。
彼が『悪魔の口』から出るには、落ちてから13年もの歳月が経ってからのことであった。