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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第21章 リッチ討伐派遣
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互いの策

 馬車に揺られながらリッチが拠点としているアグロス村へと向かう冒険者一行。


 集まったのは歩兵部隊として62名。弓部隊27名。魔道部隊28名。総勢117名もの大部隊である。


 ロザリオが乗車する馬車には同乗したい女性冒険者でごった返しとなっていた。



 20人乗りの馬車が列を成してアグロス村へと向かっている。


 ノエルらが乗車した馬車にはロザリオとの同乗に溢れた女性冒険者や、ノエルに対して睨みを効かせている冒険者。揺られる車内に身を委ねて静かに目を瞑る者などいた。


 が、そのどれもが、これから待ち構える戦いに心躍らせている者は皆無であった。



「……ちょっと……ノエルぅぅ……あの人チョー睨んでるんッスけど………」



 怯えたアインがそっとノエルに耳打ちするも、ノエルはその者を軽く一瞥しただけで鼻を鳴らした。



「おうおう、魔族ども!無視してんじゃねぇぞコラ!!てめぇらがどんだけ強いか知らねぇがな!ヘマして助け求めたって助けてはやらねぇからな!!」


「…………………」


「……聞いてんのかおいコラ!!!!」


「……騒々しい。そう怒鳴らなくても聞こえている。我らの心配をしてくれているなら無用だ。」


「………チッ………つまんねぇ野郎だ………」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 アグロス村に近づくに連れて、すれ違う馬車の数が目立つ。


 どうやら、アグロス村の近隣の村の住人らが避難しているようであった。



 一行はそのまま近隣の村で各自休息を取るも、街中は閑散としていた。


 宿自体が何店舗も閉鎖している状況であり、宿を取るにも一苦労するほどであった。




「……俺たち……勝てるんッスかねぇ……」


「今更弱気でどうすんのよ。しっかりしてよね。」



 宿が取れたものの、部屋は他の討伐メンバーにより埋まってしまったため、仕方なくノエルたちは男女同室で宿泊することとなった。


 ノエルは予備の作戦について皆に話し始めた。



「基本的には奴が言ってた作戦通り行動する。マイナとアインは攻撃魔術、モズは浄化。

 俺とハイゼルは歩兵として前線に参加。ホークは離れ、折を見て『交換』を使用しサポートしてくれ。」


「了解ッス。」


「任せな。」


「…ロザリオはどうするんです…?」


「そこで、だ。ハイゼル、『分身』について確認したい。」


「……ん?なんだ?」



 ノエルが確認したかったのは、『分身』として出現させた分身体には自分の意識があるのかどうか。

 また、分身体が経験した記憶や情報は本体にも共有できるのか。

 本体が知り得ない情報を分身体が取得した時、その情報はどのタイミングで本体に還元されるのか。


 という事であった。



「……なるほど。まず、分身体にも意識はある。『分身』を解術させた時、分身体の情報が俺本体にも流れ込んでくる。

 ノエルは俺に分身を使用させ、陰からロザリオの監視として配置させよう、という訳か?」


「そうだ。」


「なるほど………確かにそれなら陰から見張ってるってバレにくいッスね。」


「向こうは私たちの名前を把握していたし、当然能力も把握しているはずよ。そう上手くいくかしら…」


「念の為だ。あくまでも今回の目的はリッチ討伐。ただ、混戦になる以上、ロザリオの位置は特に把握しておかなければならない。」


「……それもそうね。伏兵がいるいないにしても、他の事に気を取られてリッチに足元を掬われたら笑えないわ。」


「……あのう……ロザリオって人、普段からあんな感じの人なんでしょうか?」


「そうさ。12使徒の中でもダントツの人気だね。強さもさることながら、容姿端麗に品行方正。世の女性みんなの人気者ってとこさ。」


「ヨハンナも昔は追っかけしてたぐらいだからね。」


「……まさかモズもあいつの容姿に惚れたッスか!?」


「そんな訳ありません!!あたしはノックス様一筋なんですぅ!!」



 冗談のつもりで茶化したが、モズは顔を真っ赤にしながらも大声で言い切り、逆に茶化したアインが恥ずかしくなるほどであった。



「……あ……えっと……あ、あたしが言いたいのは……」



 ハッと我に返ったモズは恥ずかしそうに髪を弄っていた。



「あ、あたしが言いたいのは、搦手(からめて)を使ってくるような人かどうかって事です!」


「……ふむ………あまり聞かんな………ロザリオは12使徒の中でも特に騎士道を重んじると評されていたはずだ。」


「……てことは、闇討ちみたいなことはしてこないって事ッスか?」


「どうかしらね。世間で言われている評価と、実際はどうなのかは私たちには分からないわ。」


「……奴がどんな性格であれ、油断だけはするなよ。特にリッチ討伐について、遅れをとるわけにはいかん。」


「「「「「了解。」」」」」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後一行はアグロス村手前の前線基地に合流し、先遣隊の兵から詳しい話を聞く。



「ご苦労さま。前線の具合はどうかな?」


「……アンデッドの量が多くて……全くもってリッチにたどり着く気配がありませぬ。」


「今ここには何人いるんだい?」


「ここには現在約50人おります。20名ずつ見張りを立て、アンデッドの侵入を各個撃破して防いでいる状況です。」


「………ふむ………さすがにかなり消耗しているようだね。あとは僕たちに任せるといい。

 ……さてと……」



 ロザリオは現状確認を終わらせ、くるりとノエルらに向き直った。



「……それで、そっちはもう大丈夫かな?僕の提案通りでも。」


「あぁ。問題ない。」


「ははっ。そう言ってくれて助かるよ。今はお互いの確執は忘れ、リッチ討伐に力を合わせようじゃないか。

 他の皆も異論は無いね?」



 ロザリオは周囲にいる他の冒険者らの顔を確認する。不満そうにしていた者が数名いたが、結果的には誰も異論を唱える者は現れなかった。



「よし。じゃあ作戦は明日からだ。皆も長旅で疲れただろうし、今日はゆっくり休んで明日に備えよう。」



 すぐ解散となったが、ロザリオの周囲には相変わらず取り巻きたちが大勢いた。


 ノエルらは早速テントを張り、休息を取ることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 明朝。


 早速討伐メンバーらは輪になって作戦の最終確認を行う。


 まず先発隊として歩兵40、弓兵10、魔道兵10が先行し、その後ろに交代メンバーが追随する。


 ノエルらとロザリオ、サンドラは後発隊として出陣。


 先発隊が粗方アンデッドを排除しアグロス村までの道を確保しつつ前線を押し進め、必要に応じて交代要員と交代する。


 後発隊は打ち漏らしたアンデッドや、逃げ遅れた避難民の捜索をメインに行う。



 アグロス村までの道が確保出来次第、先発隊と後発隊が入れ替わり、リッチと戦闘する。



 リッチの戦闘はマニュアルにもある通り、弓兵と歩兵が連携し反撃の隙を与えないよう絶えず攻撃し続け、その間に魔道兵が広域浄化魔術に魔力を集める。


 ノエル、ハイゼル、サンドラ、ロザリオは歩兵としてリッチに近接戦を仕掛け、ホークが『交換』で歩兵隊のサポート。


 アイン、モズ、マイナは他魔道兵とは異なり、リッチ戦闘を後方から支援する。



「これが、1番リッチを倒しうる作戦の概要だ。」


「「「……さすがはロザリオ様……!」」」


「君たちも構わないね?」



 ロザリオは不満そうな顔を見せていた冒険者らに確認すると、嫌々ながらも了解したと言わんばかりに手を挙げた。



「……というわけだ。みんな宜しく頼むよ。」


「…あぁ。」


「そういえば、ロンメアやウィンディアからの応援は?」


「到着には今しばらく時間が掛かるようです。応援には、ロンメアよりザリーナ隊、ウィンディアよりシリュウ・メローネ隊が駆けつけてくれるようですが……到着を待ちますか?」


「へぇ…あのザリーナ女史が来るのか。ウィンディアの使者がどれほどの実力かは不明だな。

 まあ、待ちたいのは山々だけど、とりあえずまずは僕らでやれるだけやってみようか。」


「了解しました。」



 一行は早速リッチ討伐に向け、先発隊と交代要員とが先行してアグロス村へと向かい、次いでノエルらも後発隊としてアグロス村へと歩を進めた。

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