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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
閑話
234/322

コリンたちの選抜試験5


「きゃああああああ!!!!」



 疲れと空腹と目眩に襲われていた一行に突如悲鳴が聞こえ、驚いてそこに目をやるとミラがエレメンタルリザードに襲撃されていた。



 背中を前足で切りつけられ、うつ伏せに倒れた所へエレメンタルリザードはミラを踏みつけ、血の匂いを嗅いではヨダレを垂らしていた。



「ミラ!!!!」


「コ、コリン……!!!!」



 コリンがミラの元へ駆け寄ろうとしたのをアテナが遮り、目で周囲を見るよう目配せをした。



「こ、これは……!!」



 コリンが辺りを見回すと、すでに何頭もいるエレメンタルリザードの群れに取り囲まれていたのだ。



「……こ、こりゃあ……やばい………コリン、早くスクロールを!!」


「……だ……だめです……!!……あたしのことは……放って………みんな……!!」


「ダメだミラ!!そんなことは!!」


「…みんなは早く……逃げ………ぁあああああああっ!!!!」


「ミラ!!!!」



 尚も喋り続けるミラを、エレメンタルリザードが体重を乗せてバキバキと嫌な音を鳴らして踏みつける。


 ミラは口から血を吐き、力の限りスクロールを取り出して救援信号を出そうとするも、のしかかるエレメンタルリザードがさらに力を入れ、ミラの自由を奪う。



「……だく……ない…………じにだぐ………ないよぉ………」


「……ミラ………!!コリン!!早くスクロールを!!」



 コリンはすぐさまスクロールを取り出し救援信号を発信させようとしたその時だった。



 突如上空から何者かが降り立ち、手にしていた刀を納刀する。



 カチンと(つば)鳴りがしたかと思うと、ミラを踏みつけていたエレメンタルリザードの首が綺麗に断ち切られ、ゴロンと転がった。



「……え……?」



 男は周囲にいるエレメンタルリザードを一瞥したかと思うと、目にも止まらぬ速度で次々にエレメンタルリザードの首を断ち切り、数頭いたはずのエレメンタルリザードを一瞬で全滅させた。



「危ないところだったな。」



 男はミラの元へと歩み寄り、身をかがめて回復魔術を施した。


 背中がざっくりと切られ、骨も折られたミラだったが一瞬で治り、瀕死の重症だったミラは完全に回復した。



「すまんな。本来は俺の介入は許されてはいないんだが、さすがにエレメンタルリザードらがこんな場所にまで遠征していたからな。

 お前たちは無事のようだな。」


「………ノ………ノックス……様………?」


「え……え………ノックス様!?……でも一体どうやってここに……!?」


「フライトボードで上空を旋回していたんだ。ともかく、動ける者はそのブラックグリズリーを拠点に持ち帰るんだ。」


「……あ……は、はい……!」



 思わぬ介入のおかげで命拾いしたコリンらであった。


 その後は倒したブラックグリズリーを何回かに分けて運び出し、コリンらの拠点へと担ぎこんだ。


 その傍ら、ノックスはエレメンタルリザードのしっぽをロープでフライトボードへと括り付けていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ブラックグリズリーの死体を全て運び込み、一行は一息付いていた。



「……あの………ノックス様………先程はあの……助けていただいて……ありがとうございました……!!」


「いや、それについてはいい。それよりも、ミラ、だったな?」


「……え……は、はい……」


「悪いが、俺が介入しなければ死亡、もしくは救援信号を発信していたであろうという状況から、第2試験はリタイア扱いとなる。」


「…………はい…………」


「そ、そんな!!それなら僕たちだって!!」


「そうです!!ノックス様が来ていなければ、あたしらもあのエレメンタルリザードに殺されていたかもしれません!!」


「…ほう?では4人全員がリタイアになっても構わない、と?」


「もちろんです!!たまたまミラが襲われただけで、僕が襲われたかもしれません!!」


「ミラだけがリタイア扱いになるなんて!!そんなの……そんなの………!!」


「まあまあ、お二人さん。ノックス様の話をちゃんと聞こうじゃないか。」



 アイザックは憤るコリンとアテナに、ノックスの話を最後まで聞くよう諭した。



「お前たちの言うように、4人全員がリタイア扱いにしても俺は構わん。

 が、チャンスをやる。

 お前たちはまだ救援信号を出してはいない。さすがにミラはそういう訳にはいかないが。」


「だったら僕も……!!」


「コリン。まあ落ち着いて聞こうじゃないか。」


「……続ける。お前たちが、仲間が一人いなくなったらそこで歩みを止めるというのなら無理強いはしない。だが、兵ともあれば、そういう事態などいつでも起こりうる。

 それを受け入れられず、引き返すなら好きにしろ。」


「……そ……それは………でもこれは試験で……」


「試験ならば次もある。が、そこまで『4人一緒』に拘るのなら、冷たい言い方だが王国兵は諦めろ。そんな気持ちで王国兵になったとて、いざ仲間を本当の意味で失った時、お前たちは前には進めん。」


「……………………」


「……あ、あの………コリンさん。私はここでリタイアでいいんです。ノックス様の言うように、また来年頑張りますから…!」


「さて、どうする、コリン?」


「「………………」」


「…あの……本当に俺たちはこのまま試験を継続してもいいってことです?」


「あぁ。」


「なら俺はやろうかな。」


「…アイザック…」


「だってミラは死んだわけじゃない。ノックス様がいなけりゃ多分死んでただろうけど。俺らも。

 それに、試験ならば次がある。」


「……あたしも残るわ……!」


「……アテナ……」


「だから、ミラ!!必ず試験合格してよね!!待ってるから!!」


「……はい……!」


「……分かった………僕も続けるよ……!……だからミラ!!絶対に追いついてこい!!」


「……分かりました……!!」


「話は纏まったか?」


「「「「はい!!」」」」


「ならば第2試験の後半戦、頑張ってくれ。ミラはフライトボードの席へ。」


「……は、はい!」



 ミラとノックスがフライトボードへ着席し、ノックスが魔力を注ぐとプロペラが回転し浮遊する。


 フライトボードに括りつけた数頭のエレメンタルリザードらがぶらさがっていた。



「しっかり掴まっていろ。」


「……は、はい………!!……あの、皆も!!頑張ってください!!」


「あぁ!!絶対に合格する!!」


「ミラの分も頑張るわ!!」


「ミラが合格した時まで、祝勝会はお預けにしとくよ!」



 3人はミラの姿が見えなっても手を振り続け、ミラもまた同じく、3人の姿が見えても尚も手を振り続けた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 フライトボードに乗せられたミラは泣いたせいか、鼻をすする音が聞こえる。



「いい仲間を持ったな。」


「……は、はい………私には勿体ないくらい……いい友達です……!」


「しかしながら、だ。ミラ。来年受験すると言っていたが。」


「……はい!!皆の為にも、来年こそ必ず合格出来るように頑張ります!!」


「その事だがな。残念ながら、ミラは来年の試験は受けられない。」



「………………え…………?」

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