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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
閑話
231/322

コリンたちの選抜試験2

 第1試験の2日後、試験結果が城門前にボードで張り出されていた。


 志願者らは自分の番号を確認しては、一喜一憂としている。



 コリンたちも自分たちの合否を確認すべく、皆で集まって結果を見に行こうとしていた。



「はぁ〜〜……緊張するぅ……」


「……合格………してるかな………どうしよう……あたしだけ不合格だったら………」


「ああもう!2人とも何を悲観的に!」


「ふふっ。そういうアテナだって、不安で昨日眠れなかったんじゃないのかい?目の下にクマができてるよ。」



 アテナだけでなく、コリンとミラにも同様に目の下にクマができていた。



「……う、うっさい!!……ってかアンタは寝れたの?」


「ま、俺は不合格なら不合格でまた来年受ければいいって割り切ってるからね。」


「アイザックはこんな時でも落ち着いてんなぁ。」


「ほらほら、今見ようと後で見ようと結果は変わんないんだし、さっさと見に行こうぜ。」



 アイザックに促され、一同は城門前へと足を運び、自分の番号が書かれているか確認する。



 番号が書かれていないんじゃないかという恐怖と、合格しているんじゃないかという期待が入り交じる中、恐る恐る番号を確認した。



「……え……あ、ある……!……ご、合格してる!!」


「…あたしも……良かった……!!」


「どうやら来年に受験する必要は一先ず無くなったねぇ。ミラは?」


「…………あり……ました……ありました……!!」


「……ってことは4人全員……合格……!」


「いよっしゃー!!合格だー!!」



 コリンは第1試験の合格を喜び、ホッとしたのと同時に嬉しさがこみ上がり、大いにはしゃいでいた。



「……って、試験はまだ!これから第2試験があるでしょ!」


「……そ、そうだった……」



 その後合格者は王国の外へと案内され、森の入口付近で集まっていた。


 当初300人以上いた参加者は126名と半分以下に数を減らしていた。



 第2試験の内容を改めてリドルが説明し、その後ナタリアが質問を受け付ける。



「あ、あの、この森の中にいるモンスターは一体どれほど強いのでしょうか?」



 普段は大人しく、自分から何かを発言することが少ないミラがおずおずとしながら質問したことにコリンとアテナは驚いていた。


 ナタリアがその質問に返答したところ、エレメンタルリザードが闊歩していることにコリンらだけでなく他の参加者からも動揺が走っていた。




 皆からの質問が終わり、いよいよ1週間のサバイバルが始まろうとしていた時だった。



「おいおい、誰かと思えばあの時のクソガキ共じゃねえか。」



 その声に振り返ると、第1試験の際に絡んできた荒くれ冒険者であった。


 あの時とは違い、3人でパーティを組んでいたが、この荒くれ者とは違って大人しそうな男女であった。



「あ、あんたは……」


「第1試験をパスするなんざ運だけは良かったようだけどなぁ。ただし、もしサバイバルで俺の邪魔をしてみろ?殺しゃしねぇが、それなりに痛めつけられたって知らねぇぞ!!」


「…ぼ、僕たちだって…!!」


「コリン。相手にすんじゃないわよ。そんな奴なんて。」


「ハッ!言うねえ!!だが、このサバイバルで生き残り、王国騎士になるのはこの俺様コンラッド様だ!!ほら!いくぞてめぇら!!」


「「は、はいぃ…!!」」



 コンラッドと名乗った荒くれ冒険者はお供の2人を連れ、コリンたちを押しのけて一足先に森の中へと入って行った。



「なんだよアイツ…!」


「ほらほら、俺らもボーッとしてないでさっさと森ん中入ろうぜ。」


「そうね。あんな奴に負けたくなんかないわ。行くわよミラ!」


「…は、はい…!」



 コリンたちも森の中へと歩を進め、第2試験突破を目指すのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 本来この森は鬱蒼としているが、冬のせいでいくらか葉が散ってしまい、代わりに雪が木を纏っている。


 が、それでも生えている木の量が多く、少し進んだだけで瞬く間にイブリース王国が木々に遮られて見えなくなるほどである。


 とはいえまだ出入口付近である場所には他の参加者が大勢おり、逆にモンスターと思しき気配は微塵も感じられなかった。



 ある程度進んだところでアイザックが呼び止め、皆に相談し始めた。



「それで、どうしたんだアイザック?まだ試験が始まって1時間も経ってないぞ?」


「いやぁ、みんなはさ、この試験の穴に気付いているのかなぁってね。」


「……穴……?」



 皆はアイザックの言う『穴』とは何なのか分からずに顔を見合わせていた。



「1週間なんて短い期間生き延びれば合格。確かに簡単そうだけど、それのどこが穴なんだ?」


「ここに入る前に手荷物検査すらされてないっしょ?というか、森の中に入るんだし、俺らだけじゃなく皆食料は持ち込んでるっしょ。」


「……それはそうだけど、それがなに…?」


「ってことはさ、わざわざ食料を調達するためにモンスターを狩らなくてもいいってわけ。」


「なんだよアイザック。勿体ぶってないで早く話してくれよ。」


「この付近にはまだ他の参加者もいるだろ?ってことはさ、ここで皆と固まっていれば、モンスターが来たってすぐ対処もできる。」


「…言われてみれば……確かに……」


「……そう簡単にいけばいいけど。お姉ちゃんも言ってたけど、ノックス様って物凄い策士らしいし。」


「策士策に溺れる、って言葉があるのさ。みんなも考えたっしょ?この第2試験、案外簡単そうじゃね?って。そりゃあ奥に行けばエレメンタルリザードがいるけど、奥に行かなければ平気かも、って。

 ノックス様は参加者の俺たちが死なないよう配慮してくれているんだろうけど、それで試験に穴があることにもしかしたら気付いてないんじゃない?」



 アイザックの言うことは尤もである。


 いくら数が減ったとはいえ、126名もの参加者が固まっていれば、モンスターがわざわざ襲撃することは少ない。


 持ち物検査により、食料の持ち込みを禁止されていたならば散り散りになるを得ないが、それは禁止されてもいない。


 となれば、アイザックの言うように皆で固まって1週間過ごすだけで良いのだ。



 中にはそれに気づかない参加者が更に奥へと踏み入れることもあるかもしれないが、こんな鬱蒼とした森の中をわざわざ皆から離れて奥へ進むような無謀者がいるとも考えられない。



「おーーーい!キミたち!!」



 そんな時、遠くからコリンらに向けて声を掛けてくる男の声がし、振り返ると男が駆け足でこちらに近づいてくるのが確認できた。



「突然すまない。俺はビュウト。キミたちにちょっと相談があってね。」



 ビュウトと名乗った男が相談したのは、まさにアイザックが話していた内容と同じ事であった。



「どうだい?この方法なら安全に1週間を過ごす事ができるはずだよ?キミたちだって、自分たちの食料くらいは持参しているはずだろ?」


「持ってますよ。今まさにその話を皆としてたところで。」


「それなら話が早い!キミたちはこのままこの辺りで陣を張っておいてくれないかい?」


「わかりました。わざわざありがとうございます。」



 コリンらはビュウトの提案を受け、アイザックの話した通り、他の参加者らと固まって過ごす事にした。



「良かった。これで僕らも安心だ。」


「わざわざ向こうから提案をしてくれるなんてありがたいね。」



 だが、安堵するコリンらとは違ってアテナは少し考え込んでいた。



「……アテナさん……?」


「………やっぱりおかしい………」


「…ん?一体なにがおかしいんだよ?」


「だって、参加者が固まって過ごす事なんて、ノックス様が想定できないはずが無い。

 お姉ちゃんから聞いていた話だとノックス様はいつも先の先まで見越してるって聞いたの。」


「それはアイザックも言っていたけど、想定外だったってことじゃないのか?」


「……も、もしくはノックス様はお優しいって聞いてますから……それで……だったりしませんか…?」


「『優しい』と『甘い』は違うわ。もし本当にあたしの杞憂なんだったら、ノックス様は相当に甘いお方だということだけど。」


「んまぁ、アテナの心配する理由も分からなくもないさ。ただ、いきなりこの場にモンスターが突如湧くなんてことはありえないしさ。」


「……それも……そうだけど……」



 アテナは腑に落ちない様子ではあったものの、一先ず皆で固まって過ごす事に同意した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 アテナの心配とは裏腹に、モンスターと会敵することなく開始から既に7時間が経過し、本当にこのまま1週間何事もなく終わるのではないかと誰もが思い込んでおり、試験だと言うにも関わらず緊張の糸は完全に緩んでしまっていた。




 もしもこの場にノエルらのように、ノックスの元で訓練した者らなら直ぐに見抜いていたであろう。



 『ノックスは、訓練に関して決して殺すことはないが、手を抜くことはない』


 ということに。



 そして、皆が固まって過ごすなどという温い試験などまず有り得ない、ということに。




 日が沈みかけ、木々の合間から見える空が茜色へと染まり始めた。

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