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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
閑話
230/322

コリンたちの選抜試験1


「それじゃあ、父さんに母さん、行ってきます!」



 両親の形見である指輪に手を合わせ、コリンは決意を胸に試験会場へと向かった。



 両親はすでに他界。


 教会の方針に異議を唱え、反対運動の集会に参加していたのだが、配管の爆発という不慮の事故、という扱いによりこの世を去ってしまったのだ。



 それからは姉であるマイナと二人三脚で生活をしていたが、今度は自身が衰弱病に罹患してしまった。



 ノックスらのおかげで助けられて以降、今度こそ自分の手で姉を守れるような強い男になりたいと志願し、この選抜試験を受験する事となった。



 姉がリッチ討伐に旅立つ前には王国兵になると熱く語り、姉もまたコリンの背中を押して応援してくれていた。




「…いつ見ても立派な城だなぁ……」



 城門前へとやってきたコリンはイブリース城を見上げ、必ずこの城の兵になると決意を固めていた時、不意に後ろから声をかけられた。



「コリン。早かったのね。」


「……なんだ、アテナか。」


「なんだとは何よ。それにしても、本当に選抜試験を受けに来てたとはね。」



 話しかけてきたアテナとは、ヨハンナの妹である。


 お互いに15歳で同年ということもあり、また、同じく衰弱病として教会に囚われていた、いわば幼なじみでもあった。



「ミラとアイザックは?」


「さあね。ミラならもう会場にいそうだけど、アイザックはまた遅刻かも。」


「おいおいアテナ!俺を遅刻魔みたいに言うなよ!」



 突如声をかけられ驚いて振り向くと、アイザックという名の少年がいた。



 アイザックは2人よりも1歳年上だけでなく、身長も高く容姿も端麗であり、女子からの人気が高い。


 もう1人のミラは1つ下の14歳だが、こちらは大人しく真面目な性格ではある。


 アイザックとミラも同じく衰弱病の元患者であり、こちらは家族共々収容されていたのだ。



「そんなこと言ったって、いっつも遅刻してくるそっちが悪いんじゃない。」


「ははっ!それは違うぜアテナ。可愛い女子たちが俺を取り囲んで離してくれないんだよ。」


「はいはい。」


「おい!!邪魔だガキども!!」



 男がコリンらをいきなり怒鳴りつけたかと思いきや突き飛ばし、それによりアテナは尻もちを付いた。



「痛っ!!」


「お、おい!何するんだよ!!」


「道のど真ん中で楽しくお喋りしてるテメェらが悪い!!ガキは大人しく家にでも帰ってママンのおっぱいでも吸ってやがれ!!」


「な、なにを…!!」


「よせコリン!」



 立ち上がり、食ってかかろうとしたコリンをアイザックが背後から押さえて宥めた。



「な!?アイザック!!」


「…あぁん!?なんだクソガキが!!もしかして俺とやろうってのか!?」


「いいから落ち着きなってコリン!それと、すみませんでした。以後気をつけます。」


「ケッ!!腰抜けが!!」



 冒険者は言葉を吐き捨て、肩で風を切るように道のど真ん中を突っ切って行った。



「何してんだよアイザック!」


「お前こそ、落ち着けコリン。こんなとこで問題を起こしたって何も良いことなんかないだろ?」


「…それは……そうだけど……」


「少しは頭を冷やしなよコリン。アテナも大丈夫か?」


「……えぇ……ムカつくけど、結果でアイツを見返してやるしかないわね。」


「さて2人とも。落ち着いたんならその辺にして、早くミラと合流しよう。」


「それもそうね。1人で心細くしてるかもしれないし。」




 3人は早速王城内に入り、すでに列がズラリと出来てしまっている受付に並び、試験会場へと入っていった。



「ミラ!ここにいたのね!」


「…あ…みんなも来てくれたんだ…!」



 1人心細く試験会場で待っていたミラだったが、3人の顔を見た途端にホッとした表情を浮かべた。



「…一体、どんな試験があるんだろうね…」


「お姉ちゃんから聞いた話だと、一般的には筆記試験と実技試験よ。」


「やっぱ筆記試験だよなぁ……」


「何、コリン?まさかあんた勉強してないわけ?」


「い、いや、ちゃんとしたし!!アイザックは大丈夫なのか?」


「ま、俺の心配ならご無用さ。筆記なんかで落とされたとあっちゃ、俺のファンたちに面目が立たないからね。」


「…言ってろっての。」



 その後4人は説明を受ける。


 その際にチラッと目があったヨハンナらはコリンたちに無言で軽く頷き、コリンらも頷き返した。


 そして各々の指定された番号別に別会場へと分かれ、筆記試験が開始された。



 筆記試験、と身構えたものの、最低限の国語力と演算能力を試すだけの試験であった。


 ただし、演算能力テストの問題の中には、点数に関わることは無い特別問題というのが設置されており、時間の掛かる計算問題や高度な図形、関数などの問題が設置されていた。


 コリンは一旦特別問題は無視して他の問題を解いていき、余った時間で特別問題に取り掛かるも、難しすぎて何が何だか分からなかった。


 仕方なく、その中でもまだ解けそうな計算問題のほうをやってみたが、7桁同士の掛け算と割り算が複合されていたため、解いている途中で時間切れとなってしまった。



 筆記試験が終わり次第すぐに実技試験となるため、一行はすぐさま裏庭へと足を運ぶ。



「…ふぃーーー…!!筆記がようやっと終わった……」


「大丈夫そうなの?」


「…ん〜〜……まあ、ぼちぼち、かなぁ……」


「ぼちぼち、ってねぇ…ホントに大丈夫ならいいんだけど。」


「てかあの特別問題、だっけ?あんなの解ける人いるのかな?時間圧倒的に足りなかったけど。」


「あたしは1問くらいしか解けなかったけど、合ってるのかどうか自信は無いわ……アイザックは?」


「解いても点数にもならない問題なんて、解く必要なんてないだろ?つまりは、そういうことさ。」


「…まあ、そうだけど。ミラは?」


「…あ、あたしは全部解いちゃいました…」


「えぇ!?あんな難しい問題でも!!?」


「僕なんて時間全然足んなかったのに……ミラ、すごいなぁ…!」


「…ま、まあでも…あたしはみんなほど戦えないし……」


「そんなことないぜミラ?人には得手不得手があるもんさ。神様が俺にこの美貌をくれたように、ミラにはその頭脳を授けてくれたのさ。」


「……アイザックの言うことに同調したくはないけど、まあそういうことかもね。」


「…そ、そうかな……えへへ……」




 実技試験は単純なもので、複数設置された丸太をいかに素早く破壊するか、という物であった。



 騎士志願者は各々の武器で。魔道士は魔術で。魔剣士はその両方で。という形式である。


 破壊できた丸太の数だけ点数が加算される、という方式である。



 ここでは騎士志願者のコリンとアイザック、魔剣士志願者のアテナはかなり良い成績を残せたが、魔道士志願者のミラはギリギリ及第点といった具合であった。



 一旦第1試験が終わってあとは結果を待つ形となり、一同は解散することとなった。




「…ふぃーーー……!!…はぁ、やっと終わった…」


「まだ第2試験があるけどね。」


「まぁそれは明後日以降だろ?それに、そもそも第1試験を合格してないとさ。」


「サバイバルだよね。本当に1週間生き残るだけで合格出来るのやら。」


「……………」


「ん?どうしたミラ?」


「……い、いえ……その……森の中にいるモンスターって、どれくらい強いのかなって……私……みんなの足引っ張っちゃうかもしれないし………それに試験だって不合格かも………」


「んまあ実技はアレだったかもだけど、ミラならその分筆記試験のほうはほぼ満点だろ?」


「……そ、そうだといいけど………」


「…終わったことを嘆いても仕方ないわよミラ。とりあえずは明後日以降から始まるサバイバルに向けて、出来る限りの準備はしときましょ。」


「……う、うん……そうだね。」

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