麗しき姫の災難
ノックスがこの世界に転生するよりもはるか昔。
とある王国に可愛らしい赤子が生まれた。
彼女はフィオナと名付けられ、大層に可愛がられて育った。
すくすくと育ったフィオナは、それはそれは美しい姿に育った。
彼女の美しさは、他の国の王子たちから求婚をいくつも迫られるほどであった。
だがフィオナの父は娘を思うあまり、嫁に出すことは無かった。
フィオナもまた、結婚するつもりなど無かった。
彼女には夢がある。
それは自分のピンチに駆けつけてくれる白馬の騎士と結婚することである。
人が聞けば笑われるような夢でも、彼女はそんな淡い夢を本気で夢見ていた。
彼女が17歳の年。
突如として王国に異変が起きた。
それまで懇意にしていた国が突如として牙を向き、王国に大軍で攻め入ってきたのだ。
応戦虚しく、王国はどんどん窮地に追いやられた。
王はフィオナを逃がすため、何人かの側近を付けて逃がすことにした。
それから幾日か過ぎた。
すでに王国は陥落。
王は捉えられ、王妃と共に処刑された。
攻め入った理由だが、表向きは領地拡大。
だが実際は、新たに王座に着いた新国王が、兼ねてより目をつけていたフィオナを力づくで娶るためであったとも言われている。
だがすでに王国内にはフィオナの姿は無い。
彼女は数名の側近達を連れて王国の外へとすでに脱出していた。
新国王は草の根を分けてでもフィオナを探すよう部下に命じた。
やがて、部下からフィオナ一行を見つけたとの報せが入った。
そして数の暴力でもって側近達を蹂躙した。
ついにフィオナは侍女の1人と共に『悪魔の口』へと追いやられていた。
フィオナは新国王の妾になどなるつもりはなかった。
だがすでに膨大な数の兵に取り囲まれている。
逃げることなど不可能だ。
彼女は着いてきてくれた侍女に感謝と謝罪を述べた。
願わくば、来世では少しでいいから幸せになりたい。
そして
フィオナは侍女と共に『悪魔の口』へと身投げをし、その短き生涯を終えた。