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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第20章 開発
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フライトボード

 ノックスがフライトボードの試作機に乗り込み、一瞬で空の彼方へと消え去ったことにより、それを見送っていた皆は慌てふためき、急遽大捜索を行うためにと右往左往していた。



 が、当のノックスはと言うと、最初こそ驚いたがすぐさま出力を調整し、空から見るアステル島の景色を堪能していた。



「ふむ……地球のドローンよりも大型だからか、安定しているようだな。

 ……ただ、かなり風に流されてしまったが。」



 上昇したノックスは海から流れる潮風の影響で島の中央付近へと流されてしまっていた。



 ノックスは台座のレバーを操作し、前後左右の移動を確認する。


 ほぼ計算通りの操作感ではあったものの、ノックスはこのフライトボードの致命的な欠陥に気付いた。



 それは、『旋回ができないこと』である。



 前後左右の動きだけならば、各プロペラの出力を調整することで可能なのだが、旋回となると話が変わる。



 構造上、ノックス自身の立ち位置を都度変更すれば旋回せずとも向きを変えることはできるのだが、こんな空の上で自分の立ち位置を変更するなど危険極まりない。



 当初は海を背に上空へと舞い上がったノックスは、仕方なくフライトボードを後退させ、元いた地点へと戻り、出力を下げ、慌てふためく皆の元へと帰還した。



「あぁぁ!!ノ、ノックス様!!ご無事で!!?」


「俺に関しては大丈夫だが、やはりまだ改善点がある。」



 皆はノックスが無事に帰還したことにホッと胸をなで下ろし、額の汗を拭りながらノックスの話を聞いていた。



「まずは『旋回』だ。俺も作っている時に気付けば良かったが、このままでは上空で旋回ができん。

 この点に付いては後方にでも右旋回・左旋回用にプロペラを付ければ大丈夫だろう。」


「……旋回…ですか。確かにその通りですな。」


「他にはなにかありますかい?」


「他には、出力制御だな。俺が使う物なら、プロペラをもう少し小さくしてもよいな。

 あとは音がかなりうるさい。」


「…た、確かにノックス様ならもう少し小さいほうが良いでしょうな。」


「…音のうるささに関しても、なんとかなりそうですね。」


「他に気になる所はありますかい?」


「モーターがかなり発熱する。連続して稼働させると故障する原因にもなるな。」


「ふむ……」



 テスト飛行を終えたが、問題点はかなり挙げられた。


 その後も改良に改良を重ねるべく、試作してはテスト飛行、を繰り返し、ようやっと満足のいくフライトボードが出来上がった。



 飛行時の安定性を図るために、当初は長方形の板2枚をバツ印状にしたものから、アームを取り付けプロペラの位置を搭乗位置から遠ざけた。


 飛行時に旋回が出来るよう、後方には2つのプロペラを2枚縦に配置。


 モーターの発熱は放熱用のフィンを取り付ける案もあったが、どうせならその発熱を活かそうということで、魔石で吸熱させ、そのエネルギーをブースターとして活かすために、後方に2機、ブースターとして配置させた。


 プロペラから発生する音も同様に魔石に吸音させ、同じくブースターのエネルギー源として利用する。


 搭乗位置には机と椅子を取り付け、座りながらでも操作出来るよう改良された。


 左の肘掛けには機体を前後左右させるレバー。


 右の肘掛けには機体を上昇・下降、旋回させるレバー。


 どちらにも魔力を受容させる装置と一対となっている。


 机には各種メーターが取り付けられ、蓄積させている魔力の残量や、ブースターのエネルギー残量を示すメーターが取り付けられた。



 さらに、モーターの出力調整には魔石を介して調整できるよう施され、流す魔力量を極端に変更しない限りは出力が大きく変化しないよう改良する。

 言うなれば、感度を下げたのだ。



 様々な改良を施したフライトボードは名を『フライトボードVer.1.0』として改めた。




 今日はそのフライトボードのお披露目会ということで、沢山の見物人が押し寄せていた。


 たまたま観光に訪れていた者らは、『人が空を飛ぶ』などという話を聞き、半信半疑ながらも見物しに来ていた。



「いよいよだな。」


「えぇ…こんなたくさん人が来るとは…」


「皆ご苦労だったな。色々と我儘を聞いてもらって助かった。」


「へへっ、ありがてぇお言葉ですけど、まだ飛行が成功したわけじゃありませんから。」


「そうですね……あぁ、緊張する……」


「ガハハハハ!人間は空を飛ぶのも一苦労じゃのう!」


「ねぇお兄ちゃん!もし上手く飛べたら、あたしも乗せてね!」


「ああいいぞ。」


「あ、ずるい!俺も乗りたい!」


「私も!!」


「皆も乗せてやるさ。では、早速乗るとしよう。」



 ノックスは搭乗席に腰を落ち着け、胸の高鳴りを抑えつつ、肘掛けにある受容体にゆっくりと慎重に魔力を流す。


 机に備えられているメーターの針がピクリと動き、伴ってプロペラが回転を始める。



 魔力の出力量を慎重に上げていくとプロペラが高速で回転し、ノックスを乗せたフライトボードはフワリと宙に浮いた。



 その瞬間、ギャラリーからは「おぉ!!」っと歓声が湧く。



 魔力が十分に溜まったことをメーターで確認すると、ノックスはフライトボードを上昇させた。



 上空で簡単に前後左右、旋回をさせる。



 感度は良好。プロペラからの音も極端に少なくなり、吸音・吸熱させたエネルギーもブースター用のエネルギーとして充填され始めた。



 ノックスはそれらを確認した後、フライトボードを縦横無尽に飛行させた。



 ギャラリーからは歓声と拍手が巻き起こり、職人らもホッと肩をなでおろしつつ、雄叫びをあげて喜んでいた。



 ある程度飛行させた所でブースター用のエネルギーが溜まる。


 エネルギーをブースターに接続させスイッチを押すと、後方にあるブースターから風が巻き起こり、フライトボードは急加速して一瞬のうちに遥か彼方へと飛び去った。



 その瞬間、再度ギャラリーから歓声と盛大な拍手が巻き起こった。



「いよっしゃぁぁああ!!」


「完璧ですね!!」


「……すごい……あっという間に見えなくなっちゃった……」


「ほう……すごいもんじゃのう。」


「……あれ?おやっさん、泣いてるんですか…?」


「バカやろう!…目に砂埃が入っちまっただけでい!!」



 ノックスは素晴らしいフライトボードの完成度に感動し、1人優雅に空の旅を楽しんでいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 飛行を終え、拍手喝采の中ノックスは帰還した。



 企画に携わった皆と一人一人がっちりと握手を交わし、フライトボードのお披露目会は終了したものの、ギャラリーの興奮はまだ冷めやらないでいた。




「ノックス様、それで!どうでしたかい!?」


「当初の問題点は全て改善されているな。プロペラ音もモーターの加熱、それらをブースターに組み込んだ仕様は無駄がなく完璧だ。」


「ブースターについては問題ありませんでしたかい!?」


「最初は加速に驚いた。ちなみにだが、あのブースターは使用しなければどうなる?」


「それも問題ありやせん。ブースターの容量が満杯ならモーターの動力へと切り替わる仕様になってます!」


「抜かりないな。増産はできそうか?」


「ちょいと時間はかかりやすが、任せてくだせぇ!」


「頼もしいな。ではこのフライトボードの製作指揮はガルウィンが主導の元、よろしく頼んだぞ。」


「へい!!」


「お兄ちゃん!乗せて乗せて!」


「ワシも乗ってみたいのう!」


「ちょいちょい!第一夫人のあたしがまず先っしょ!」


「夫人では無い。」


「あ、ノックス様!俺も乗ってみたいです!」



 皆が我先にと希望したが、ノックスの一存でまずはガルウィンを乗せて飛び立った。


 その後順番にルナやルミナ、他の職人らを乗せ、大空の旅を満喫した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……すごい………空からの眺めがこんな綺麗だなんて……」


「んは〜…!……もっかい飛んでみたいなぁ……」


「計器のほうは問題なく動いちょりますな。あれだけ動かしたにも関わらず、モーターの発熱も完璧に吸熱できておるようです。」


「……お、俺はちょっとだけ怖かったなあ……なんて……」


「……自分で飛ぶより他人に飛ばれると……こんな感じなのか……」



 皆思い思いの感想を述べるも、世界で初めて有人飛行を成功させた事をいつまでも喜び合い、この日の宴会場は夜通し活気に満ちていたのであった。

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