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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第19章 イブリース王国
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柔よく剛を制す

 転移のスクロールにて最下層へと一気に到達したノックス一行。


 最下層に拵えた部屋はとりわけ巨大な部屋となっているが、先の小部屋同様薄明るい。



「……ふむ……ここもやはり少しだけ明るいな。」


「…それで、ノックスよ。何か仕掛けをしたと言うておったが、どんな仕掛けを施しておるのじゃ?」


「転移用の魔法陣を至る所に仕掛けてあるだけだ。」


「……む?……なぜそんな物を?」


「このイブリース王国に攻め入った物をここへと強制的に転移させる代物だ。

 王国の入口付近にここと通じる魔法陣を張り巡らせ、有事の際に発動させて転移させる。」


「……ほう……!!それは面白い使い方じゃのう!!」


「魔物化も相まって、ここに送られれば生き残ることはほぼ不可能、というわけですね。」


「……ダンジョンをこんな風に使うとは驚いたぜ……」


「……何かいる……!!」


「皆はここで待機していろ。」



 ノックスはそう言うと皆の周囲にぐるりと魔障壁を展開させた。


 ノアはそのとてつもない気配に恐れ(おのの)き、小さく縮こまってガタガタと震えていた。



「なんじゃノックス!!一人で楽しむ気か!!」


「さすがにこれはやばい。」


「……む……?」



 地響きが近づくと、その正体が顕になった。



「…こ、これは…!!」


「……なんてこと……!」


「……龍……八龍か…!!?」


「……な………こ…こやつは……!!」


「久しぶりだな。地龍。」


『ガァアアアアアアアアアアッ!!!!』


「ジジイ!!?」



 突如現れた地龍はそのままノックスに向かって爪で引き裂きにかかる。


 ノックスは足に力を込めてその攻撃を鞘で受け止めるも、あまりの威力に大地がひび割れめくれ上がった。



「…ま、まさかジジイが現れるとは…!」


「ど、どういう事ですか!!?」


「ジジイの魔石を使うたんじゃ!!ジジイが現れたとて不思議ではないわ!!」


「…で、では、あれは本物の地龍!?」


「…さすがに本物ではなかろうて。本物のジジイならワシの姿を見て何も言わんのはおかしい。」



 ベリアルが皆に説明している間も、ノックスは地龍と戦闘を繰り広げている。



 地龍は息を吸い込んだかと思いきや、とてつもない火力の火炎を見舞い、あまりの高温に即座に大地がマグマと化す。


 しかし、ダンジョンが魔物化している影響か、忽ちマグマは元の大地へと復元した。



「落ちろ!!」



 ノックスが地龍に向かって重力魔術を放つと、その巨体がズシィンと音を立てて大地にひれ伏す。


 即座にノックスは大地を蹴り、地龍に向かって斬撃を放った。



 両断したと思いきや、地龍は大地に潜り、斬撃を躱した。



「…やはりあの時と同様か。」



 地龍は恐ろしい速度で大地を泳ぎ回り、突如現れてはノックスに斬撃を浴びせる。


 ただ、ノックスはその攻撃を躱しながらも違和感を覚え、不思議そうに首を傾げた。



「……あの時より……少し早くなってる……?」


「ノックス!!悠長な事は言ってられん!!早くこの場から逃げるんじゃ!!

 このジジイ、生きておった頃よりパワーもスピードも格段に上がっておるぞ!!」


「いや、安心しろ。称号のおかげで俺も力が増している。」



 ノックスは地龍と戦闘しつつも冷静に分析を行い、この地龍と自分の力の差を比較する。



 大地から音もなく光速で現れ斬撃をする地龍の攻撃を掠めながら、すれ違いざまに斬撃を浴びせる。



 ノックスの放った斬撃は的確に地龍を捉え、地龍の腹に大きく傷をつけた。


 が、地龍は呻くも、その傷は忽ち修復されてゆく。



「……もう回復したのか。」


『ガァアアアアアアアアアアッ!!!!』



 地龍は咆哮し、地震を引き起こしてノックスの体制を崩しにかかる。


 さらにそこへ広範囲に雷魔術が放たれ、ぐらついたノックスの元へと襲いかかる。


 体が痺れ、自由が効かないノックスの元へ最大加速した地龍が飛翔して斬撃を浴びせ、展開させた魔障壁もろともノックスを吹き飛ばした。



「ノックス様!!」


「ほれ見ろ!!言わんこっちゃない!!ワシらだけでもすぐに逃げるぞ!!」


「そういう訳にはいきません!!」


「…私が正面から向かう。ノエル殿はノアと両サイドから。シリュウ殿とサンドラ殿はさらにその後続いてくれ!」


「了解した!」


「り、了解!!」


「ミャウ!!」


「…マジかよ…!…やるだけやってやらぁ!!」


「待て待て!!お主らだけでは分が悪かろう!!

 ……あまり気乗りはせんが……ワシも手伝ってやろう。こんな所で死にたくはない!!」


「……ま、待て……あれは……」



 ザリーナが指さした方向を見やると、瓦礫を押し分けて服に着いた土埃を払っているノックスがいた。



「ノ、ノックス様!!」


「…ふぅ……お前たち、焦るな。」


『ガァアアアアアアアアアアッ!!!!』



 立ち上がったノックスの元へ光速で爪で斬撃を浴びせかけた地龍であったが、どういう訳か地龍は空振りし、ノックスの横の大地を切り裂いた。


 その後も地龍は連続して爪で攻撃を仕掛けるも、ノックスへの攻撃は全て外れた。



「……一体………何が………?」



 困惑している一同にノックスが説明する。



「柔よく剛を制す、という言葉がある。相手の攻撃力が強いなら、わざわざそれに力で対抗する必要などない。」



 ノックスは、地龍から繰り出される斬撃を的確に見切り、直線的に来る斬撃を横からそっと軌道を変える。


 それにより地龍の爪からの斬撃は全て空を切り、ノックスには傷1つ付けられずにいたのだ。



『ガァアアアアアアアアアアッ!!!!』



 攻撃が当たらないことに業を煮やした地龍は咆哮し、身を翻して再び地中へと潜伏した。



 先程までとは一転して静寂が辺りを包み込む。



 ノックスはゆったりと構えつつも、地龍の出現に最大限集中する。




 刹那。


 地龍が音もなくノックスの背後から地中から現れ、目にも止まらぬ速さでノックスに斬撃を浴びせかける。



 その斬撃はノックスを切り裂いたかに見えたが、ノックスは寸前で上空へと宙返りし、眼下を通り過ぎる地龍の背中から斬撃を浴びせた。



 ズシィィィイイイイン!!!!と地龍が倒れ、ノックスが放った斬撃により地龍には深い傷が見て取れる。



 だが地龍はまたもや傷をすぐさま修復させようとしていたが、それをノックスは許さない。



「『砂粒縛・(しぶき)』!!!!」



 途端に地龍の体内から無数の砂の刃が突出し、辺りに血飛沫が舞う。



「トドメだ!!!!」



 ノックスは地龍の首目掛け大地を蹴り、無防備になった首はノックスの放つ斬撃により両断され、地龍の首が大地へと転がり、活動を停止させた地龍はそのままダンジョンへと還元されていった。



 ノックスは一瞬ふらついたが、すぐさま体制を整えて納刀し、「ふぅ。」とため息をついていた。




 そして、この一連の戦闘を見守っているしか出来なかった他の一同は、口をあんぐりとさせて驚愕していた。



「……ノ、ノックスよ……お主はバケモンだと分かっておったが……もはやこれでは大ジジイクラスじゃぞ……」


「……ノックス様……ノックス様の実力を信じていなかったこの私に、なんなりと罰を…!!」


「…ミャウゥゥウ…!!」


「……あ……有り得ねえ………ホントに一人で……勝っちまいやがった………」


「……なんという………恐ろしいまでの強さ……!!」



 皆一様に言葉を発していたが、一人。黙ってザリーナだけはノックスの事を見つめ続けていた。

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