最強の座
左肩から先を失い、満身創痍のノックスは地龍へと歩みよる。
『…よもや…この我を倒す者が現れるとはな…』
「…俺自身も危なかった……」
『…ふはは………うむ。実に楽しい戦いであった……貴様、名をなんと言う?』
「…ノックスだ…」
『ノックス…か……して、ノックスよ、貴様はこの先何を求める?』
「地表に残した妹を助け出す。」
『ほう……少し近くに寄れ…』
ノックスは地龍に言われた通りさらに近づく。
すると地龍の目が白く光る。
しばらくして光が収まり
『…なるほどな……非道な人間共に……それに貴様はこの世界に転生してきたのか…』
「…!?…記憶を?」
『……面白い……これから先のノックスの生き様……見届けてやろう……』
そう言うと地龍は全身から光を放ち、やがてノックスの体を包み込む。
しばらくして光が収まると、すでに地龍は息絶えていた。
すぐさま目眩に襲われた。
この目眩にも慣れた物であるが、かなり久しぶりの感覚である。
懐かしんでる間もなく、失血死する前に地に転がっている左腕を拾って左肩にあてがい、治療魔術を自身にかける。
たちまち腕が元通りになり、左腕に生気が宿る。
すると後方からガシャガシャと慌ただしい音がする。
振り返ると穴で壁に阻まれて来れなかったスケルトン4体がこちらに来ていた。
4体のスケルトンはノックスの腰の辺りに抱きつき、言葉を発さないもののノックスが無事であったことに感激しているようだ。
地龍の死体をそのままにしておくわけにもいかないので、スケルトン達と手分けして解体する。
地龍からは50センチ大のオレンジ色の魔石が出てきた。
持ち帰るために、来た時に掘った穴を広げるために地魔法を行使したところ、威力がかなり高くなっていた。
レベルが上がったことによる威力の増大などとは比べ物にならないほどであった。
驚いたノックスはステータスを確認してみると、レベルが36上昇し、現在2046となっていた。
スキルもいくつか上がっている。
それ以上に目に付いたのが、ステータス欄に新たに【称号】が追加されており、そこには『地龍殺し』と明記されていた。
確認のために火魔法や水魔法を行使してみるも、こちらは威力が増大してはいなかった。
おそらくは称号の『地龍殺し』により地魔法の威力が格段に増大したのだろうと推察した。
強化された地魔法を行使しながら地龍の肉を拠点へと持ち帰る。
拠点に着く頃には待っていたスケルトン達が出迎えており、姫スケルトンが駆け寄って抱きついてきた。
「心配させたようだな。すまない。だがもう大丈夫だ。」
そして地龍の肉を調理し、祝杯をあげる。
と言ってもスケルトンは食事を摂らないのだが。
こうしてノックスは『悪魔の口』の最奥にいた地龍を倒し、最強の座を手に入れたのであった。