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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第18章 拠点作り
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孤独

 恐怖。


 あたしの心は恐怖でいっぱい。



 両親の記憶はあまりない。



 あたしがまだ幼かったころ、お兄ちゃんが刺されて谷に落とされた。


 何度もその光景が夢に出る。



 あたしが泣き叫んで、お兄ちゃんを助けようにも、あたしは取り押さえられ助けに行けない。



 夢の中で、血まみれのお兄ちゃんが現れる。


 『なんで助けてくれなかったんだ?』


 そう言って夢に現れる。



 ノースやレナントが、怖くて震えているあたしを見て高笑いをしている。



 地獄だった。




 怖くなって飛び起きても、そこでもあたしはまだ地獄にいた。




 ベスティロはあたしを度々連れ回した。



 『勇魔大戦活劇』という悪趣味な劇を見せつけるために。



 捕らえられた魔族が無理やり魔王を演じさせられ、無惨に殺される劇。



 嫌というほど見せつけられた。



 『教会に仇なす者。魔族。魔王。そいつらはこうやって無惨に殺す。』



 観客はそれを見て歓声をあげる。



 その劇中で、ベスティロは忌まわしい何かを召喚したりもした。


 『アニムス』とかいう名前の、得体の知れない者。



 禍々しい見た目通り、魔王役の人は無惨に捕まり、殺された。




 屋敷の中でもあたしに自由など無かった。



 存在を秘匿され、名乗りたくもない名を名乗らされた。



 もうあたしには生きる資格など無く、人形のように心を殺すしかないと。

 そう思っていた。




 お兄ちゃんが助けてくれたあの日。



 薄れる意識の中、レナントらが殺され、ノースがベスティロの頭をナイフで刺し貫いた。



 こんな日が来るなんて夢にも思わなかった。



 現実のお兄ちゃんは、夢の中とは違って優しくて強くて、暖かかった。



 あたしはこの13年間、何も出来なかった。



 ただ怖くて震えて、奴らの言いなりになるしか無かった。




 お兄ちゃんはこの先、たくさんの仲間と共に教会を滅ぼすらしい。



 ざまあみろ。



 教会員なんて全員皆殺しになればいい。



 …………




 ……あたしは……



 ……あたしは何をしてるんだろ……




 ベスティロに奴隷としていいように飼われ、怖くて震えて……


 その上、助けてもらったお兄ちゃんに、ただ任せるだけで………




 あたしを気遣ってくれてるのか、お兄ちゃんは何も言わない。



 いや、もしかしたら、戦力にもならないあたしなんて、もはや蚊帳の外なのかもしれない。




 騎士スケルトンはずっとあたしのそばにいる。



 名前は…確か…『ラインハルト』…だっけかな。



 正直最初は骨だけのスケルトンが恐かった。




 でも、ラインハルトさんはあたしをずっと見守ってくれてる。



 お兄ちゃんの部下の人達も、みんなあたしなんかに気を遣ってくれる。



 こんなあたしのために。




 お兄ちゃんは凄い。



 本当に凄い。



 たった1人であんなにも強くなっただけじゃなく、たくさんの人から慕われてる。




 ベスティロの屋敷ではあたしはずっと孤独だった。



 他の使用人からも、あたしは存在そのものを疎まれていた。



 そんなにあたしが嫌いなら殺してくれればいいのにって。

 そう思ってた。



 いざこうして助けてもらったけど………



 お兄ちゃんはあたしに構ってる余裕なんか無い。



 周りの人たちだってそう。



 あたしのことを、まるで腫れ物を触るかのよう。



 ……そりゃそうだよね。



 お兄ちゃんは凄い。



 でもあたしは違う。




 結局あたしはここでも





 独りぼっちなんだ。

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