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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第18章 拠点作り
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あれから

「…ルナ……!」


「…ここは……?」



 ルナが目が覚めたという知らせを受け、ノックスが病室へと訪れた。



「ここは船の中だ。

 ……迎えに来るのが遅くなってしまって……すまなかった……」


「…あ………あなたは………ほ………本当に………お、おにい…ちゃん……?」


「あぁ。」


「…本当に……本当に………お兄ちゃんなの……?」


「…13年ぶりだな……お互いすっかり成長したが、俺はノックスだ。」


「……お兄ちゃん……!!」



 堰を切ったようにルナは大粒の涙を流し、ノックスの胸のなかでわんわんと泣き始めた。



「おにいぢゃぁぁあああああん!!し、しん、死んじゃったのかと……!!」


「……心配かけたな……けど、もう大丈夫。

 ……もう……大丈夫だ。」



 胸に顔を埋めて泣きじゃくるルナの頭をノックスは優しく撫でる。


 ノックスの体内に残る少年ノックスの魂の残滓の影響か、ノックスにも熱いものが込み上げる。


 それを堪えつつ、一頻り泣き止むまで、ノックスはいつまでもルナの頭を優しく撫でていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 気持ちが収まったところで、改めてルナの話を聞いた。



 ノックスが『悪魔の口』に落とされた以後の話を。



「…お兄ちゃんが落とされてから、とても怖かった……

 あたしも殺されるんじゃないかって……

 奴隷にされて売られて、私は1人のおじさんに購入されたの……」


「…確か、シェイマス・ジェファーソンという当時の枢機卿だな。」


「…ハーフデビルのあたしに、その人はとても優しかった……

 『ここならもう安全だ』って。

 …でも、その日のうちにそのおじさんも、おばさんも……殺されて………」



 ルナは当時の恐怖を思い出し、震えながらシーツをギュッと握る。



「……そのあとは、名前を『ディアナ』と呼ばれ、ベスティロ枢機卿の奴隷として譲渡されたの…」


「……そういえば、マイナらに『ここには来ないで』とか言ったんッスよね?あれは…?」


「……あたしはベスティロにさんざん見せつけられてきたの……

 捕えられた魔族が、教会のいい様に利用され……無惨に殺され……晒される様を……」


「……利用……?」


「…それって、『勇魔大戦活劇』ってやつかい?」



 一同の間にホークが割り入る。



「…確か、そんな名前だったかと……」


「…なんだ?その『勇魔大戦活劇』というのは?」


「過去の『勇魔大戦』の演劇さ。リアル思考なのか、【魔王】役に本物の魔族を利用して、本当に劇中で殺しちまうのさ。」


「……え……?……でもあれは、勇者たちも一緒に死んだんじゃ……?」


「貴族の連中はそんなものは求めちゃいないさ。ただ、自分たちが安全な場所で、魔族が無惨に殺される様を見て愉しんでやがんのさ。」


「……そ、それだけのために……」


「…隷属の首輪をかけられ、一生ここから出られない。

 ……あたしはもう……死んだのと同じだと……ずっとそう思ってた………死にたいとも思ってた……

 ……何より悔しかった………お父さんやお母さん、お兄ちゃんを殺したやつが、のうのうと生きてることが許されるなんて……!!」



 語気を荒らげたルナの目には再び涙が浮かぶ。



「……いっそのこと……あいつらを殺して、自分も死んでやるって思ってた………でも……出来なかった…………

 ……そんな時……お兄ちゃんの名前で手紙が来たって聞いたの。

 そんなの有り得ない、人違いだろうって……

 もし本当に生きてたとしても、ここに来ればどうなるか………だから、本当に生きてるのなら、あたしの事なんて忘れてって………」


「………それで、『ここには来ないで』って言ったのね……」



 ルナは黙ってこくりと頷く。



「……でも……正直嬉しかった………お兄ちゃんが生きてたこと。あたしを助けようとしてること。

 最初見た時はお兄ちゃん、あいつらに殺されちゃうって思ったのに……」


「あれは演技だ。ルナの解放を第一として考え、それを悟らせないためにな。」


「正直言って、ノックス様に敵うやつなんてこの世にいないッスよ。そこで呑気に寝てるやつも、ホントは火龍で、ノックス様1人で手懐けたんッスから。」


「………え……?……火………龍………?」



 アインが病室で寝かせていたベリアルを指さし、驚いた表情でルナが確認する。


 ベリアルは寝言で

「……うぅん………はにこむ……おかわりをよこすのじゃ……」

 と呟き、幸せそうな夢を見ているようだ。



「…………」


「…いや、ほんと!これでも一応火龍なんッス!!」


「……てことは……お兄ちゃん本当はめちゃくちゃ強いの……?」


「めちゃくちゃ所じゃないわ。ルナちゃんが気を失ってからどうなったか……聞いたらビックリするわ。」


「……その話はまた今度としよう。今はまず、ゆっくり休むんだ。」


「……うん………あのね…お兄ちゃん……」


「…なんだ…?」


「……助けに来てくれて……ありがとう……」



 その言葉にノックスが優しく微笑むと、ルナも表情を和らげた。


 まだ不安と恐怖が残っているのか、ふとしたことで折れてしまいそうな笑みを浮かべて。

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