少年『ノックス』
「パパ!おかえり!」
「お帰りなさいあなた。」
「ただいま。ルナは?」
「もう寝ちゃってるわ。」
「そうかぁ。ほらノックス、お土産だ。」
「うわっなにこれ!フォレストボアの牙?」
「あぁ、コイツがなかなかにすばしっこくて遅くなっちまったよ。」
「すっげーー!!さすがパパ!!」
「ふふふ。あなた、先にお風呂に入ってきて。その間にご飯温め直しておくわ。」
「あぁ、悪い。」
「パパ、一緒にはいろ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「とにかく走れ!!!!逃げろ!!!!」
「うわぁぁぁぁん!!!!」
「大丈夫よルナ!ノックス、手を離しちゃダメよ!!」
「ママ、パパ、どうしてあの人たち!!」
「お前達は逃げるんだ!!」
「あなた!?」
「俺がなんとか食い止める!お前達はその間にとにかく逃げるんだ!!」
「やだよパパ!!」
「そこだ!!魔族は逃がすな!!」
「女とガキが逃げてるぞ!!」
「そっちは俺たちがやる!」
「早く逃げろ!!!!」
「パパ!!パパぁぁぁあ!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「2人とも、静かに…」
「ママ……、どうしてあの人たち僕たちを…?」
「うぐっ……ひっく……。」
「…人族の中にはね、私たちをよく思わない人もいるの……」
「パパは……」
「………ノックス、いいこと?ルナを連れて逃げるの。ルナ、お兄ちゃんの言うことちゃんと聞いて静かにね。」
「ママ、ヤダよ……」
「ママは後であなた達を迎えに行くから…。ノックス、それまでルナを守ってあげてね……」
「ママ……!やだよ……」
「いいこと、ノックス、ルナ。辛いことがあっても…2人で乗り越えるの……。ルナはお兄ちゃんの言うことをよく聞くこと。いい子にしてれば、ママがちゃんとあなた達を迎えに行くから…!」
「「ママ……」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい女、ガキどもは?」
「あの子達は関係ないわ。それよりもどうしてこんなことを…」
「魔族は滅ぶべきだ。それに加担してるお前も同罪だ。」
(どうか……、あの子たちだけでも無事に逃げて…)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ…はぁ……」
「うぐっ……ひっく…………」
「……ここは……パパが前に言ってた『悪魔の口』…?」
「お兄ぢゃん……パパとママにあいだい………」
「泣くなルナ、パパもママも必ず迎えに来てくれる……それまで我慢できるよな…?」
「見つけたぞ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やめろ!!ルナを離せ!!」
「さすが魔族の血を引いてるだけあってしぶといなぁ。」
「おにいちゃぁん!!いやぁ!!離して!!助けてえぇぇ!!!!」
「離せよ…!!妹を…ルナを離せ!!」
「ぎゃははははは!!おい、魔族と人間のハーフなら高く売れるんじゃねぇか!?」
「…やめろぉ!!!!」
「痛っっ!!……てめぇこのクソガキがぁぁっ!!!!」
「ぎゃははははは!!ノース、油断してっからだぜ?ぎゃははははははは!!!!」
「ごふっ……」
「魔族に『悪魔の口』たぁお似合いじゃねぇか。じゃあなクソガキ。」
(…ち…ちくしょう………パパ…ママ…………ルナ……………)
この日、一方的な悪意によってとある家族は無惨にも殺され、あるいは売り飛ばされた。
ノックスと呼ばれていた少年は、『悪魔の口』と呼ばれる大地の裂け目に投げ捨てられ、その短き生涯を終えた。