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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第17章 救出作戦
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本領発揮

 レナントに引き続き現れたのは、『ライラ』という女と『ワイルズ』という男であり、2人ともレナントと同様に称号を持っていた。


 ライラの称号は【賢者】。攻撃魔術を格段に強化する称号である。


 もう一方のワイルズは【竜騎士】。槍での戦闘術に長け、跳躍力や空中戦のスキルを格段に強化する称号である。



 ノースを含めた4人の称号持ちを相手にしながら、アニムスをも相手取る。


 ルナが再度衛兵たちに捕らえられ、ヨハンナが再度透明化して様子を窺う。



 研ぎ澄まされた4人の連携力によりノックスは劣勢に追い込まれる。



 時折アニムスが腕を叩きつけては、ノックスの魂を捕食しにかかる。



 そもそも、ルナが人質に囚われている以上、ノックスにとって不利な状況を強いられている。



 戦闘によりノックスの身体にダメージが蓄積され、動きに衰えが見え始め、4人はノックスを仕留めにかかった。




 だが、見るからに疲れ切ったノックスのことをノースらは仕留め切れない。



 アニムスからの攻撃も、かなりギリギリではあるものの、確実に避けている。



 ルナが人質となっている以上、ノックスから反撃が飛んでこないのはまだしも、なぜかノックスを仕留め切れない。




「……ようやっと現れたか。」



 その時、ノックスがうすら笑みを浮かべた。




 ノースを含め、ベスティロとてこの時、まだ分かっていなかった。



 なぜノックスがルナがいないと知りながらも敵の懐に飛び込んできたのか。



 なぜノックスがわざわざ『隠密』スキルを0にしたのか。



 彼らは知る由もなかった。



 『自分たちが、ノックスの手のひらで踊らされている』



 ということに。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 時はウィンディアにてマイナらを引き取った後にまで遡る。


 あの時からすでにこの計画は動いていた。


 作戦を練るにあたり、教会の動きを予想する。



「当然、ムエルテ島は最大警戒されておるだろう。マイナ殿らの離反が露見した以上、必ずムエルテ島に救出しにくると見てのう。

 それに、ノックス様のステータスも教会に知られておる。

 それを見た者の中には、ノックス様とルナ様の関係性に気付く者がおるやもしれん。」


「ノースならば俺との関係性を思い出すかもしれん。思い出せなければそれはそれで構わないが。」


「ならば『気付く』前提で策を練るとしよう。」



 その後綿密な打ち合わせが行われた。



 教会側は、ノックスを討ち取るなら本国のほうがやりやすいと判断する可能性が高い。


 なぜなら本国ならばムエルテ島よりも警戒しやすく、また、罠も張りやすい。


 いざとなれば人員の補充もすぐに効く。


 対してムエルテ島でとなると、送り込める人員にも限界が生じる。


 教会側は当然、ルナが奴隷とされているベスティロの邸宅を警戒する。


 身の安全のために、ベスティロはルナと共に別の場所へと身を移しているだろう。


 ノックスが本国へと乗り込んでくることを予想して罠を張る。


 ベスティロの邸宅にノックスをおびき寄せ、何らかの方法により捕獲、あるいは抹殺する。


 おそらくそこにはノースがいるだろう。なぜならノースはノックスの両親の仇でもある。


 自身をエサにすれば、ノックスが確実にそれに引っかかる。


 抹殺が難しければ、ルナを人質にし、動けなくしたノックスを葬るという手段を取ってくるだろう。



 ここまでがこちらで想定される教会の動きであった。


 当然、ムエルテ島にノースがルナを引き連れてやって来ることも想定した。



「向こうが罠を仕掛けてくるのは当然だ。

 ……が、それならばコチラも罠を仕掛けてやればよい。」



 ノックスが『罠』について説明する。


 まず、ムエルテ島にてノースやルナを確認出来た場合。


 まずなんとしても、ルナの首にある隷属の首輪さえなんとかすればよい。


 救出作戦にノエルたちが派手に暴れ回り、陸からはノックスが、そして、海から静かにスケルトンらが侵入する。


 ルナが確認できれば、ノックスがノースと対峙。


 その隙にスケルトンらがルナを救出する。



 が、これはあまり想定しづらい。


 理由はやはり、ノックスを罠に嵌めるなら本国でやるほうが良いからだ。



 そして、ここからが『罠』の作戦である。



 本国への侵入はノックスとヨハンナの2人で先行して侵入する。


 ヨハンナの『透明』は、特に潜入などの場合は大いに役に立つからだ。


 続いて、スケルトン4体はムエルテ島を出て海中から本国へと向かう。


 本島に到着したら、スケルトンは二手に分かれて行動する。


 騎士と格闘は魔術スケルトンの魔術で地中を掘って進み、弓は陸から隠密しながら侵入する。



 ノックスはベスティロの邸宅にルナは居ないだろうが、構わずにそこへと攻撃を仕掛ける。


 ルナの救出のために、わざと隠密して邸宅へと侵入した風を装って。


 その後、敢えて見つかる。



 ヨハンナはルナを見つけ次第、『透明』で救出する。


 そこで救出できればいいが、隷属の首輪がある以上不可能である。


 ヨハンナの目的は、『隷属の首輪を発動させる装置をベスティロがどこに隠し持っているか』を特定させるためである。



 スケルトンらに場所を伝えるためにノックスの『隠密』スキルを0にする。


 これにより、その凄まじい気配でノックスの居場所を伝え、作戦開始の合図であると同時に、その莫大な魔力の気配によってスケルトンらの気配を包み隠し、教会側にスケルトンが潜んでいることを察知させないためである。


 弓はノックスの障害となりうる人員を暗殺。


 その後、ルナを捕らえている衛兵を始末する。



 隷属の首輪を無力化させるために、まずはベスティロの動きを封じなげればならない。


 そこで、地中から来ているスケルトンの出番。


 地中から姿を現し、ベスティロを無力化させる。



 ここで言う『罠』とは、ノックスはルナを人質にされ、ろくに身動きも取れずに窮地に追いやられている、ということを装う。ということである。



 つまりは、自分が囮となるのだ。



 いかにも、『こちらにはもう打てる手がない』と錯覚させなければ意味が無い。



「自分を囮に使う戦法はアイン。お前の戦い方から参考にした。」


「…へっ!?お、俺ッスか!?」


「あぁ。」


「つまりは、ノックスが窮地に追いやられているという『演技』をするわけか。ガハハ!そりゃあ面白そうじゃのう!」


「…しかし、そう簡単にいくのでしょうか…?」


「演技力が試されるな。それに…」



 ノックスは『罠』の張り方について自身の体験を交えて話す。



「自然界にいるモンスターは、簡単な罠であればすぐ見破ってしまう。だからこそ罠は上手く隠し、人の手が加えられた痕跡を消さなければならない。

 さらに、罠を効果的に使うためには、相手が『トドメを刺しに来たタイミング』であるのが重要だ。

 それはつまり、相手に『コチラからの脅威は無い』と判断させる。」


「……なるほど……だからこそ、窮地に追いやられる風を装う、というわけですか。コチラの策を見破られないために。」


「『慢心』は『隙』。『取った』と思った瞬間、人だけでなくモンスターですらも心に油断が生じる。」


「…なるほど……さすがはノックス様……!!」


「ワシの出番は?」


「ベリアルはムエルテ島での救出作戦が完了後、そこで龍形態となり派手に暴れろ。

 ただし、島から脱出しようとしている守備隊は放置。」


「ん?放置してよいのか?」


「教会側に、『ムエルテ島で暴れている火龍は陽動、というのが魔族どもの作戦』と誤解させる。」


「なるほど!!ここにも罠を張るって事ッスね!!」


「ま、ワシからすれば久々に暴れられるんじゃ!!ド派手に暴れてやるかのう!!ガハハハハハ!!」


「ともかく、俺が『このまま行く』と言えば、そのまま作戦を続行。俺とヨハンナが先行してサントアルバ教国へと向かう。いいな?」


「「「「「了解!!」」」」」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 以上が、ノックスらが練ったであった。


 ベリアルはこの時、ノックスが言った『敵の罠に嵌った演技』について自分もどこかで試してみたい、と内心考えていたのだが。



 そんなことなどつゆ知らず、ノースらはまんまとノックスが立てた『罠』に嵌り、そして、『罠』に掛かっている事にすら気づかない。



 そして、アニムスが突如として苦しみ始め、巨体から生えている何本もの腕を振り乱し始め、ノックスの張った『罠』の本領が発揮された。

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