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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第16章 ムエルテ島
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抜魂術

 収容所の上階へとやって来たマイナたち。


 待ち構えていた守備隊が襲いかかってきたものの、マイナたちに敵う相手ではなかった。


 リコリス司教は後ろから追いかけてくるマイナたちを煽るかのように時折嫌に高い声で挑発し、奥の部屋へと入って行った。



 守備隊を斬り伏せながら、リコリス司教が入っていった扉の前までたどり着く。


 扉を開き、早速中へと侵入すると、衰弱病の患者が何名もギロチン台に押さえつけられていた。



「…コリン……?」


「…ね……姉ちゃ…ん……?」


「…ディーン!!ユーリ!!」


「……パパ……助けて……」


「…アナタ…!」



 ギロチン台に押さえられていたのはマイナたちの家族であった。



「あらあらぁ♪お早い到着ねん♪」



 嫌に高い声と共に、部屋の奥からリコリス司教が現れた。


 その後ろには、巨人族と見紛うほどに巨大な体にはち切れんばかりのゴツい筋肉の男が何人も見て取れる。


 どれも首には隷属の首輪が掛けられており、リコリス司教の奴隷であろう。



「リコリィィィス!!!!」


「あら、ダメよん♪1歩でもそこから動いたら、あんた達の家族の首が落っこちるわよん♪」



 リコリスの合図でギロチンの縄を切るべく待機している配下が見て取れた。



「…卑劣な……!!」


「何とでも言えばいいわよん♪こんなとこに来てアタシの住処を荒らしたアナタたちが悪いのよん♪」


「…リコリス司教、教えて欲しい。」


「んん?何かな〜?」


「『衰弱病』はあなたの固有魔法が原因ね?」


「んふふ!そうだよん♪良く調べたねん♪」


「…アズラエルの指示で?」


「モッチのロ〜ン!反発勢力を抑えるために、こうやって人質を取ってるって訳よん♪」


「……ふざけてやがる……」


「ま、今から死ぬアンタたちには関係無いよん♪さ、やっちゃって〜!」



 リコリスが奴隷たちに合図を送ると、奴隷たちは一斉にマイナたちに向かって走り出した。


 マイナたちはそのまま為す術なく奴隷たちに殴られ続けた。



「あっはは!すっごいでしょ〜?その奴隷たち、アタシの力作なのよん♪」



 殴られ続けるマイナを他所に、リコリスは話し続けた。



「最期に1つ良いこと教えてあげるよん♪

 アタシの固有魔法はねぇ、他人を衰弱させるだけじゃなくって〜、奪った力を他の人に与える事も出来るのよん♪

 その奴隷たちはね〜、その力で無理やり極限ギリギリまで強化させてあげたのよん♪

 んふふ!何人も強化させすぎてドッカーン!って爆発しちゃったけどねん♪」



 リコリスが楽しげに話している最中も、マイナたちは殴られ続けた。



「……ね……姉ちゃん……俺のことは……いいから……その女を……」



 一方的に殴られ続けるマイナに堪らずコリンが力を振り絞って声を出す。


 それはコリンだけではなく、他の人質たちも同様に自分たちを見捨てろと口々に声を出していた。



「あっはは〜!!なんか必死になっちゃって面白いわねん♪コイツらが簡単に見捨てられるならこんな所にまで来てないってのにねん♪」



 無抵抗に殴られ続け、必死に耐えていたマイナたちであったものの、徐々に意識が薄れ始める。



「ちょうどいいわねん♪どうせなら、あなた達の家族の首が落とされるのを眺めさせてあげるわん♪」



 リコリスの合図で奴隷たちが殴るのを辞め、マイナらを抑えて家族の前へと並ばせた。



「……コリン………」


「…姉ちゃ…ん……ごめん……ぼくの……せいで……」


「あっははは〜!!面白いわね〜ん♪絶望のまま、為す術なく首が落とされる……あっははは〜!!その時に奏でる悲鳴を想像するだけでゾクゾクするわね〜ん♪」



 リコリスは右手を掲げ、配下も続いて斧を振り上げた。



「…それじゃ……やってお終いなさ〜い!!」



 リコリスが右手を振り下ろすと、配下も続いて斧を振り下ろし、ギロチンの刃を支えていた縄が断ち切られ、ギロチンはそのまま真っ逆さまに首目掛けて落下した。



 だが、ギロチンは首を裁断することはなく、刃は全て途中で凍りついていた。



「…何事…?」


「貴様の悪趣味を止めて申し訳ないな。悪いがそいつらを殺させる訳にはいかん。」



 リコリスが驚いて目をやると、2人の男女がスゥーッと姿を現した。



「……あら……そこにいるのは裏切り者のヨハンナねん♪…なるほど…その男がノックスという訳ねん♪」



 ノックスらの後ろからはさらにスケルトンらに含め、ノエルたちもファウストらに縄をかけて来ていた。



「あらあらん♪ファウストちゃんたちもやられちゃった訳ねん♪」


「ん〜、すいませんねぇぇ。ノックスだけじゃなく、このスケルトンらの強さも別格でしてねぇ。」


「んふふ♪いいのよん♪仕方ない仕方ない♪アタシは部下の不始末にいちいち目くじらなんて立てないわよん♪」


「…本当に言葉通りならいいんですけどねぇぇ…」


「んふふっ!やだわねぇファウストちゃん♪こうやってアタシの目の前にわざわざ群がってくれたんだから、ちゃあんとお礼をしなくっちゃ♪」



 その時、突如として不穏な魔法陣が一行の足元に光を放つ。



「…な、なんだ!!?」


「これは…!?」


「……へへっ…やっぱりそうきますよねぇぇ……」



 一行はみるみるうちに力が奪われ伏せていく。


 リコリスが固有魔法『衰弱』を行使したのだ。



「アナタたちにはお礼を言わなくっちゃねん♪こうしてまた強い奴隷が作れるんだから♪」


「……ち……ちから……が………!」


「…ノ……ノックス……さま………!!」



 だが、脱力して地に伏せるノエルらとは対照的に、ノックスは平然としていた。



「なるほど……確かに力が急激に抜ける感覚があるな……」



 などと悠長に自己分析まで行っている。



「…ど……どういう事……!?それにそこのスケルトンらまで……!!」


「体感的に80%ほど弱体化されたか……スケルトンにまでこの魔法が効いているのかは疑問だが。

 それと…」


 ノックスはリコリスの奴隷に向き直る。


「貴様らはこのリコリス司教の奴隷らしいな。まだ理性とやらがあるのなら、武器を捨て降伏しろ。」



 ノックスは警告をしたが、奴隷らは聞く素振りすら見せなかった。



「…む、無駄よ!!…ほら!何をしているの!!さっさとそのノックスとスケルトンをやってお終い!!」



 リコリスはポケット入れてある聖印を取り出して魔力を注ぎ、その後奴隷たちの持つ武器に浄化魔法を付与させた。


 もはやリコリスの命令にしか耳に入っていないようである。



「ならば仕方ない。お前たち、相手をしてやれ。」



 こちらもノックスの命令でスケルトンが戦闘態勢に移行し、向かってくる奴隷らを相手取った。



「さて、リコリス司教。相手をしてやろう。」


「アタシの『衰弱』が効いていないハズがない…!!アンタがいくら強かろうとも、今のアタシでも十分……ぎゃああぁぁぁぁぁあああ!!!!」



 リコリスがまだ話している最中ではあったものの、ノックスは容赦なく左腕を斬り飛ばした。



「…おっと、衰弱している俺の攻撃など避けられると思ったのだがな。」



 リコリスが気付くと、複数いた奴隷たちも全てたったの4体のスケルトンに完膚なきまでに無力化されていた。



「こ…こんなの……聞いてない……!!」


「いくら『衰弱』させたとは言え、相手が悪すぎたな……後悔するならばあの世でやれ。」



 我を忘れてリコリスが逃げようと体を反転させたが、そこから身体が動かなかった。



「……な……なにを………からだ…が………!!」


「貴様の動きなら俺の魔法で封じてある。が、最期に貴様には俺の魔術の実験台になってもらおう。」



 ノックスはそう言いツカツカとリコリスの前へと歩み出た。



「…ちなみに、あの奴隷たちを元に戻せるのか?」


「…む…無駄…よん……アタシが死のうとも…そいつらは……」


「ならば仕方ない。」



 そして、リコリスの頭に触れ、あの時考案した『禁術』を行使させた。



「『抜魂術(ばっこんじゅつ)(おぼろ)』!!」



 ノックスの魔力がリコリス司教に干渉する。


 途端に禍々しい光を放ち、ノックスは『何か』を鷲掴みにしたかと思うと、リコリスの身体からそれを無理やり引き剥がした。



「…これが貴様の魂か…」



 引き抜かれたものはリコリスの魂であり、ノックスの手の中で阿鼻叫喚の苦しみを味わい、悲痛な叫び声をあげていた。



「消え失せろ。」



 ノックスはそのままリコリスの魂を握り潰し、魂は煙のように雲散霧消し、抜け殻となった肉体は糸が切れた操り人形の如く崩れ落ちた。

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