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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第16章 ムエルテ島
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ベリアルv.sロウ&スカーレット2

「いや〜、さすがにアレはヤバすぎでしょぉぉ。オジサンさすがに死を覚悟したよ。」



 収容所の外へと出た所で、ファウストが『透明』を解除した。



 魔術師スケルトンが放った魔法が直撃する瞬間、ファウストがヨークとジョアンに触れて透明化しつつ、ジョアンの『縮地』により戦線を離脱したのだ。



「…はぁ……はぁ……もう少しで…死ぬ所だった…」


「…さすがにアレは想定外だ。リッチでもないのにあのようなスケルトンが4体もいるとは。」


「ん〜、リコリス様には悪いけど、オジサン命が惜しいからねぇぇ。大人しく撤退としますかね。」


「おいてめぇら!こんなとこで何してやがんだ!!」



 安堵していた3人の元へ、ロウが現れた。


 後ろからはベリアルを四つん這いにさせ、その上に乗るスカーレットも見て取れる。



「これはこれはロウ様、それにスカーレット様も。お疲れ様ですねぇぇ。」


「んなこたぁどうでもいい!!てめぇら逃げ出そうとしてたんじゃねえのか!!?」


「ん〜、そうは言われてもですねぇぇ、魔族も中々に手強い集団だったのと、困ったことに災害級のスケルトン4体も現れちゃったもんでねぇぇ。オジサンには荷が重すぎるかと。」


「はぁ!!?災害級のスケルトンだぁ!!?抜かしてんじゃねぇぞ!!」


「嘘なら良かったんですけどねぇぇ。」


「裏切り者の中に『飼い慣らし』持ちがいたのかしら?」


「居ないハズですけどねぇぇ。スケルトンがなぜ彼らに味方するのか…

 それはそうと、そちらはスカーレット様の新しい下僕で?」


「ふふ…そうよ。奴らの親玉、ノックスよ。」


「これからコイツを使って仲間を皆殺しにしてやろうってんだ。」


「…ほ、本当に【調教】させたのかい……さすがはスカーレット様……12使徒は伊達じゃないね…」


「で?てめぇらはのこのことトンズラかこうってのか!?」


「そうは言われましてもねぇぇ。こちらもかなり消耗しましたもんでねぇぇ。」


「放っときなさいよロウ。こっちはもう『魔王』を従えたんだし、さっさと仕事を済ませるわよ。」


「ケッ…!まあいい……」



「…誰だお主…?」



 悪態を付けるロウとのやり取りから解放され、撤退しようとした矢先に現れた別の男にヨークが気づく。


 その男は戦闘で荒れた瓦礫の上で座り込み、呑気に紅茶と茶菓子を嗜んでいた。



「なっ…!!?いつからそこに居やがった!!?」


「ずっとここに居たが?潮風に当たりながら飲む紅茶もまた一興だな。少々血の臭いが鼻につくが。」



 男からは何ら危険な気配がしない。


 いや、むしろ気配そのものが感じられない。


 それもそう、隠密スキルを最大限に引き上げているのだ。


 目視しなければそこに人がいることすら分からないほどである。



 ロウの野性的カンが『この男は危険だ』と警鐘を鳴らす。



「いやはや、こんな所で紅茶を嗜むとはねぇぇ。オタクさんはどこのどちらさんで?」


「特に名乗るほどの者でも…」


「んなもん関係ねぇ!!!!」



 男が答え終わるより前にロウが素早く殴りかかる。


 男はそれをヒラリと躱し、改めてロウたちを見下ろした。



「てんめぇぇ……偉そうに見下しやがって上等だゴラァ!!!!」


「騒がしいヤツめ。」



 ロウが再度殴りかかろうと動き出すより前に、その男はロウに一瞬で詰め寄って蹴りを浴びせた。


 一同はいきなり吹き飛ばされたロウの身に何が起こったのか理解が追いつかない。



「……なっ……!!?」


「…そいつを殺しなさい!!」



 一瞬遅れてスカーレットが四つん這いにさせていたベリアルに向けて司令を出した。


 が、ベリアルは一向に動く気配がなかった。



「それより、いつまでそうしているベリアル。」


「ガハハハハ!!少しばかり此奴に付き合っておっただけじゃ!!」



 ノックスに冷やかされ、ベリアルは下僕のフリを辞め立ち上がった。



「なっ!?あなたがノックスじゃなくて!?」


「ん?ワシは『そうだと言ったらどうする?』としか言うておらぬ。お主らがワシをノックスだと勘違いしておるのが面白くてのう!『演技』というやつを試しておったんじゃが、もう少しで吹き出す所じゃったわい!ガハハハハ!!」


「そ、そうだとしても、私の【調教】から抜け出せるハズが…!!」


「そういえばお主の鞭を貰うたときに何かしらワシに魔力干渉がされたのう。精神系に干渉する魔法のようじゃったが。」


「あ、ありえない…!!私の鞭を食らって下僕にならないなんて…!!」


「そんな事などどうでもよかろう。お主の尻に敷かれすぎると変な性癖に目覚めそうじゃ。」


「…それこそどうでもいい。」


「……それもそうじゃのう。

 …さて、お主らともう少し遊んでやりたい所じゃが、そろそろ終いにしようかの。」



 ベリアルはそう言い放ち、魔力を一気に練り上げる。


 吹き飛ばされたロウが瓦礫を押しのけよろよろと立ち上がったものの、ノックスから受けたダメージが相当重いようである。



「おいおい、こりゃあさすがにマズすぎるねぇぇ!!」


「早くあたいに捕まって!!」



 ファウストとヨークはジョアンに捕まり、『縮地』にてこの場から撤退しようとした。


 2人が捕まったことを確認したジョアンが固有魔法を発動させようとしたのだが、その場から動くことが出来ない。



「…ジョアン、早くこの場から逃げないとオジサンたち死んじゃうよぉ!?」


「ジョアン!!」


「……か……から…だが………うご……かな…」


「こぉんな時に冗談は……って……オ……オジサンも……!」


「…な……なにごと………?」


「悪いがお前達を逃がすわけにいかん。そこで大人しくしているがいい。」



 その間にベリアルは身体中に魔力を漲らせ、獲物を狩る猛獣が如き眼でスカーレットを睨みつける。


 あまりの気迫にスカーレットは腰を抜かし、口をパクパクさせていたが、声にならない。



「さらばじゃ!!!!」



 スカーレットは咄嗟に魔障壁を展開したが、圧倒的なまでの実力差と火力により魔障壁は即座に焼失し、最後の抵抗虚しくスカーレットはベリアルにより消し炭へと化せられ絶命した。



「……なっ……スカーレット……!!?」



 その一部始終を見ていたロウが最期に見た光景は、スカーレットを焼き殺したベリアルが、そのままの勢いで自身に槍を突き刺しにかかる光景であった。



 その様子を動けない体で見ていたファウストたちは、12使徒の2人があっという間に殺された光景を横目に見ながら自身の死を覚悟した。



「ガハハハハハ!!…さぁて、次はお主らの番じゃのう…!」



 ベリアルがファウストたちをギラリと睨みつける。



「待て。コイツらには用がある。お前は先に行け。」


「…そうなのか?ならそうさせてもらおうかのう。」



 ベリアルを見送った後、ノックスは地魔術で椅子を作成し、ファウストたち用にも他にも椅子を4つ拵えた。



「座れ。ただし、逃げようとしたなら殺す。」



 ファウストたちは体が急に動けるようになり、突然の事でよろめいた。



「……ん〜、逃げようとしなくても殺すんじゃないのかねぇぇ?」


「お前たち次第だ。さっさと座れ。」



 ファウストらは渋々椅子へと腰掛けた。


 が、椅子の数が1つ多い事に首を傾げる。



「貴様は『透明』持ちだな。もしも透明化して逃げようとしてもすぐに分かる。」



 ノックスがそう言い放つと、空いているハズの席からスゥーと女が現れた。



「……はぁん、なるほどねぇぇ。ヨハンナちゃんがいたのねぇぇ。」



 ファウストは一つだけ空席があった事に納得していた。



「それより、お前たちは撤退しようとしていたな。撤退して本国にでも逃げるつもりだったのか?」


「そりゃああんなスケルトンを従えてるなんて相手が悪すぎるからねぇぇ。オジサンも自分の命は惜しいってわけ。」


「このまま本国へ逃げ延びたとしても、責任を取らされ投獄されるだけではないのか?」


「………それより、オタクさんの目的を話してほしいねぇぇ。オジサンたちを生かしたのは、何か目的があってのことだよねぇぇ?」


「教会に俺たちを連れて行け。内密にな。」


「はぁ!?そ、そんなの許されるワケがないさね!!アンタを手引きしたとバレたら、アンタが許しても教会が許しちゃくれないよ!!」


「お前たちの身の安全など俺の知った事では無い。今言えるのは、貴様らの生殺与奪の権利は今は俺が握っている、ということだ。」


「……協力を拒めば、即座に殺す、というわけか…」


「…ん〜〜、選択の余地は無さげだねぇぇ。」


「ファウスト!?」


「悪い条件、と言っていられる状況でも無いからねぇぇ。『魔王』相手に撤退したって教会も少しは汲んでくれるだろうしねぇぇ。」


「…そうかもしれないけど、だからって…!」


「考えてもみなさいよジョアン?今この条件を飲まなければ死ぬんだよぉぉ?死に急ぐ若者ならいざ知らず、オジサンは自分の命が惜しいからねぇぇ。」


「………………」


「さっさと答えを出せ。」



 あまり納得できずにいたジョアンを横目にファウストが答えを出す。



「…協力するよぉ。オタクさんが教会内で何をするのかは知らないけどねぇぇ。」


「…すぐに本国へと向かうつもりなのか…?」


「すぐにではない。リコリス・グランデの死を見届けてから向かう。」

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