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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第16章 ムエルテ島
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リコリス・グランデ

 マイナたちはノエルらを尻目に階下へと進む。


 階段を降りた先には大きな扉が現れ、数人がかりで開け放つ。



 そこには階上では見られなかった守備隊が複数人おり、さらには衰弱病の患者が多数伏せっていた。



 守備隊はマイナらを確認するや、すぐさま攻撃を見舞う。



 ハイゼルが固有魔法『分身』を使用し、すぐさま守備隊の掃討にかかった。



「さっさと守備隊を蹴散らして保護するぞ!!」


「「「「了解!!」」」」



 地下にある収容所は惨憺たるもので、全員が痩せ細り、目も虚ろ。

 服装などは囚人服のように全員が同じ服を着ており、背中には番号札が書かれている。

 急遽ここへと押し込められたのか、各部屋は人で溢れかえり、所狭しと床には患者が倒れており、見るからに収容人数を大幅に超えていた。


 衰弱病により全員覇気を感じられず、疲れきった表情で、声を出す気力も無いのか、マイナたちと守備隊の戦闘を無気力に眺めているという異様な光景であった。



 マイナらは守備隊を相手取りながらも家族の名を呼び続ける。


 モズは堪らず倒れていた患者に治癒を施すも、全くもって改善される気配がなかった。



「あらあら、ようやっと来たのねぇん♪裏切り者さんたちが♪」



 館内に突如響いた声に驚いて見やると、そこには白衣を身にまとった女が居た。



「…リコリス・グランデ……!!」


「おや、私の名前を知っているなんて光栄ねぇん♪ま、それも当然と言えば当然だけどもねん♪」



 嫌に高い声でリコリスが話す。



「貴女がこの衰弱病の原因だって事もね…!!」


「あらあら、どこからそんな情報が漏れちゃったのかしらねぇん……ま、ここであなた達が死ねばどうでもいい事だけどねん♪」


「弟たちはどこ!!?」


「ここにはいないわよん♪あなた達が来ると分かってたから、私の特別室へと招待したのよん♪」



 そう言うとリコリスはくるりと背を向け、背後にあったエレベーターへと乗り込んだ。



「良かったらあなた達も来てねん♪ずっとここに居て退屈だったし、少しは楽しませて頂戴ねぇん♪」



 リコリスは装置に魔力を注ぐと、エレベーターはそのまま上へと登っていった。



 マイナらは急いでエレベーターの元へと駆け寄り、装置に魔力を注いでエレベーターを呼び出した。



「マイナ、落ち着け!罠だぞ!!」


「それでも構わないわ!!行かない訳にはいかないでしょう!?」


「分かっている!!だがお前一人で先走るな!!」



 ハイゼルは声を荒らげつつもマイナを窘めた。



「……そうね……ごめんなさい……ここの患者を見てどうしても……」


「…気持ちは分かるぜマイナ…許さねぇ…!!」


「……こんな事……絶対やめさせましょう…!

 …こんなの……酷すぎる……」



 モズはあまりの光景に涙を浮かべていた。



「……ありがとう……それじゃみんな……行くわよ…!」



 気持ちを落ち着けた所で、エレベーターへと乗り込み、先に待つリコリスの元へと登っていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「うふふ…これでもうアナタは私の下僕。」


「ハッ!!レベル2000越えだとか『魔王』だとか、大した事ねぇじゃねぇか!!」



 スカーレットの固有魔法『捕縛』で体の自由を奪われ、そこへさらに【調教師】の鞭を浴び、ベリアルをスカーレットの下僕にさせた。



「…さぁて……どうやっていたぶって殺してやろうか……ただ殴り殺すだけじゃあ物足りねぇなぁ!!」


「ロウ、ちょっと待ちなさい。」


「あぁ?」


「コイツの配下もここに来てるのよ。どうせなら、このノックス自身の手で仲間を殺させましょう。」


「ハハッ!!相変わらずえげつねぇなぁ!!」


「それに『魔王』が私の下僕になったんだから。私の下僕としてちゃあんと可愛がってあげないとねぇ…うふふ……」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ファウストらと戦闘を繰り広げていたノエルたち。


 鍛え上げた連携により善戦していたものの、ファウストらのレベル差により徐々に差が開いていった。



「ん〜、なかなか良く頑張ったけどねぇぇ。そろそろお終いにしようかぁ。オジサン疲れちゃった。」


「……くっ……!!」


「さぁて、お開きにするよ!!」



 ジョアンが大地を蹴り疲れて動きが鈍ったナタリアへと斬り掛かる。


 ジョアンの固有魔法は『縮地』。

 これは、対象への距離を一瞬で縮める固有魔法であり、薙刀戦闘を得意とするナタリアからすれば相性は最悪でもあった。



 その間にヨークもアインと魔法の撃ち合いが行われるが、真正面からの撃ち合いではヨークに軍配が上がった。


 なんとか自身も前線で共闘をと考えるアインだったが、ヨークから的確に繰り出される魔術の手数の多さの前に、前へと出ることが許されなかった。


 というのも、ヨークの固有魔法『刻印』によるものだ。

 これは、マーキングをした相手が煙に紛れようが隠密しようが即座に位置を特定できる固有魔法であり、それによりアインを完全に捉えていたのだ。



 ファウストはノエルとノア両者を相手にしながらも、これまでのらりくらりと戦っていたスタイルと打って変わり、積極的に攻撃を仕掛ける。


 時折『透明』を使用しては完全に気配を絶っては不意を突く。


 今まで正面から戦ってきたノエルとノアからすれば、予測不能なファウストの戦闘スタイルに完全に翻弄されてしまっていた。



 ノエル、ナタリア、ノアのスタミナが尽きかけ、アインのMPも残りわずかとなり、戦況は次第に窮地へと追いやられる。



「はぁ…はぁ……あたいらを相手によく戦ったよアンタら。」


「…左様。『魔王』の配下として力を付けたようではあるが、我々には及ばなかった、ということであるな。」


「本当にねぇぇ。オジサンもかなり疲れちゃったよ。でも、これで完全にお終いだねぇぇ!!」



 『縮地』を利用したジョアンがナタリアへと斬りかかる。


 ジョアンの鎌がナタリアの首筋に掛かった刹那、激しい金属音が鳴り響く。



 ジョアンの鎌が剣で受け止められていたのだ。



 完全に首を捉えていたはずのジョアンが驚きの表情でナタリアを確認すると、そこに居たのはスケルトンであった。



「…なっ…!?ス、スケルトンがなんでここに!?」



 驚いたジョアンが距離を取りナタリアを探す。


 すると、ナタリアは先程とは別の場所に一瞬で移動していた。



 それはノエルらにも同じ事が起こっており、他のスケルトンと位置が入れ替わっていたのだ。



「いやー、危なかったねぇ。」


「遅くなってすまんな。準備に少し時間が掛かってしまった。」



 声の主を確認すると、そこには傍らに弓スケルトンを連れたリドルとホークが居た。


 2人は準備を終えた後、スケルトンらと合流してこの建物内へと入ってきたのだ。



「おいおい!!どうなってやがんのさ!!スケルトンが魔族の味方するなんて聞いた事ないよ!!?」


「…その顔はホーク、だな。奴らとスケルトンの位置を『交換』したようであるな。」


「ここに来て援軍って訳ぇぇ?しかもこのスケルトン、ちょぉいと異常だねぇぇ。気配から察するに災害級だよぉぉ?オジサンさすがにビビっちゃう。」


「…だが結局はスケルトンだ。そこの魔術師の格好をしたスケルトンも。リッチではあるまい。」



 ヨークはすぐさま浄化の魔法をファウストとジョアンの武器に施す。


 騎士、格闘、魔術師スケルトンらがノエルらと代わって3人を相手取る。



 ジョアンが『縮地』により攻撃を仕掛けようとした刹那、3人目掛けて魔術師スケルトンからとてつもない威力の火魔術が撃ち放たれる。


 ヨークがすぐさま魔障壁を展開しつつ相殺にかかるも、全く意味を為さずして3人は爆炎に飲み込まれた。



 爆炎が収まると、そこにファウストらの姿は消えていた。

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