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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第15章 一時帰国(ウィンディア編)
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思わぬ仲介

 マイナたちの話を聞いたノックス一行は、ローシュたちにも事情を話し、マイナの弟たちを救出するべく出航準備を急ぐこととなった。



 とはいえ他の魔族たちとの蟠りが解消できた訳ではなく、中には罵声を浴びせる者もいた。



 当然そういう者も居るだろうと考えていたノックスがすぐさま間に入ろうとしたその時、思わぬ人物がマイナの前に現れた。



 シャロンだ。



 たくさんの罵声を浴びせられていたマイナらの前にシャロンが現れ、驚いたことにマイナらを庇うように両手を広げたのだ。



「シ、シャロン…!!何をやってるシャロン!!そいつらが何をしたか分かって……」


「……この人たちは悪くない……悪いのは教会…!!」


「…シャロン…?」


「この人たちだって被害者なんでしょ…?……教会にいたから全員悪だなんて……魔族だから全員滅べっていう教会とおんなじ…!!」



 思わぬ形で間に入られたが、ノックスはそれを見守っていた。


 シャロンの言葉に他の皆の表情も険しくなる。



「シャロンの言う通りだ。ワシらが教会と同じやり口で仕返ししたとてどうする?ワシらが願うのは、ワシらのような者でも安全に暮らすための権利を勝ち取るためであろう。

 この者らはワシら魔族のために教会から離反し、協力者となってくれたのだ。

 そのような彼らをこれ以上貶めるのならば、このワシが許さぬぞ。」



 穏やかな声ではあるものの、やや語尾を強くしてローシュは皆を宥めた。


 その言葉で皆口を噤み、申し訳なさそうな表情を浮かべた。



「……す……すまなかった……俺たち、色々と……その……」


「構わないわ……私たち教会員があなた方にしたことを考えれば、すぐに許して欲しいなんて口が裂けても言えない。

 だから、あなたたちに信用してもらえるよう、精一杯頑張るわ。」



 シャロンの介入のおかげもあってか、蟠りは多少和らいだようであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、急ピッチで出航準備を終わらせた。


 魔族との蟠りがある程度和らいだとは言え、ウィンディア国民の中にはマイナらを許せない者が数多くいたためだ。



 マイナらには国民との衝突を避けるべく外出を控えざるを得なかった。




「ノックスさん……俺はまだあの女らを許した訳じゃねえ。」


「右に同じネ。」



 王城へと訓練のためにやってきたノックスの元へシリュウとメローネが話しかけてきた。



「別に許してやれとは言わん。が、俺がお前たちの無礼を許してやらなければ、この国が今どうなっていたかは分かっているだろう?」


「そ、それはそうだが…でも…!」


「それとこれとは関係ガ…!!」


「関係ない訳ないだろう。どこかで相手を許してやらなければ、一生啀み合う。

 お前たちとて、それは1番分かっているだろう。」


「「………………」」



 ノックスの言葉にシリュウとメローネは口を噤んだ。



 ノックスの言う通り、彼らがその事を一番理解しているはずなのだ。



「だぁぁーー!!……分かったよ……あんたの言う通りだ。」


「………分かってたつもりだったのニ……」


「構わん。それにマイナらは6ヶ月の預かりだ。

 その後シアン国王がどういう裁量を下すかだが。」


「……その事だが、あんたに頼みがある!!」


「……突然どうした?」


「あんたらはこれからあの女の弟らを助けに行くんだろ!?

 それに、俺らを連れて行ってくれ!!」


「俺“ら”?」


「アタシもネ!!足でまといかもしれないけド。」


「……なぜ急に?」


「あの女たちを監視するためにゃあ直接見た方が早ぇだろ。

 ……それに俺たちはまだこの国の外を知らねえ。」


「この国でお前たちの立場もあるだろう?」


「それならアタシらが陛下に話を付けるヨ!!」


「頼む!!俺たちが足でまといだってんなら即見放してくれたって構わねぇ!!」


「アタシからもお願いするヨ!!」


「……分かった。人手は多いに越したことはない。来るのはお前たち2人か?」


「そうだ。」


「いいだろう。マイナたちの働きぶりを見てもらうにはお前たちが直接見るほうが手っ取り早い。」


「恩に着る!!」


「ありがとうネ!!しっかり働くヨ!!」



 シリュウとメローネはすぐさま国王にその旨を話すべく、謁見室へと駆けていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 訓練を終えたノックスは、部屋で一人、マイナから手渡された本を手に読み始めた。



 マイナが言っていた通り、現教皇や枢機卿、司教だけに限らず、12使徒についての情報も書かれていた。



『私の調査で判明した事実をここに書き記す』


 という文で始まり、ページをめくると、現在の12使徒に関する情報が書き連ねられていた。



 12使徒それぞれの【称号】に『固有魔法』。それらの効果の情報までビッシリと書かれている。



━━━━━━━━━━━━━━━



ジオード【錬金術師】固有魔法『硬化』

 【錬金術師】…様々な武具をすぐさま精錬させる。

 『硬化』…武具などの硬度を高める。



ロザリオ【魔剣士】固有魔法『吸収』

 【魔剣士】…魔法と剣術を組み合わせる戦闘を得意とする。

 『吸収』…あらゆる魔術を吸収する。



ズーグ【賢者】固有魔法『拡大』

 【賢者】…攻撃魔術の威力を上げる。

 『拡大』…無生物の大きさを変化させる。自身が放った魔法にも効果あり。



ロウ【拳闘士】固有魔法『強化』

 【拳闘士】…格闘術を大幅に上昇させる

 『強化』…力・すばやさ・スタミナに加え、あらゆる耐性を底上げする



ノース【勇者】固有魔法

 【勇者】…すべてのステータス値が上昇する。自身の仲間のステータスにも影響する

 『刻印』…戦闘中に見た者をマーキングし、即座に位置を特定する。刻印された者は透明化でさえ発見することが可能。



ゲラート【道化師】固有魔法『幸運』

 【道化師】…転移魔術のスキルが上昇する。

 『幸運』…自身の運を上昇させる。



リームス【導師】固有魔法『鑑定』

 【導師】…サポート魔術を上昇させる。

 『鑑定』…対象のステータスを確認できる。



フレイ【薬師】固有魔法『促成』

 【薬師】…あらゆる効果をもたらす薬を調合する。薬効成分のみを抽出し、効果の増大をもたらすことも可能。

 『促成』…様々な植物をすぐさま成長させることができる。



スカーレット【調教師】固有魔法『捕縛』

 【調教師】…あらゆる生物を自身の下僕にさせる。

 『捕縛』…対象の動きを封じる。



デュバル【呪術師】固有魔法『遠視』

 【呪術師】…呪術に関連する魔術が上昇。他の呪術と異なり、発動範囲が極大化する。

 『遠視』…遠くにいるものを的確に目視できる。



ハデス【処刑人】固有魔法 不明

 【執行人】…不明。



ヨミ【人形師】固有魔法 不明

 【人形師】…自由自在に人形を操る。



━━━━━━━━━━━━━━━



 『ノース』の項目を見た時、ノックスは心臓が締め付けられるような痛みとともに、あの記憶が呼び起こされた。



「………俺自身の怒りか………それともこの体に刻まれた怒りか………

 ……安心しろ………もし奴が俺の前に立ち塞がるならば、奴にはこの世の地獄を味あわせてやるさ………」



 ノックスはそう自分に言い聞かせると、徐々に胸の痛みが和らいだ。



「……それにしても……かなりありがたい情報だな……

 確かジェラートだったか。直接会って礼を言わねばな。

 それと、やはりあのリームスは『鑑定』持ちか。今頃俺がハーフデビルであることやレベルなどの情報は共有されているだろうな。」



 その情報がノースの耳にも入るであろう。


 となれば、ノースがノックスとルナの関係性にも気がつく可能性は高い。


 それに気づけば、当然ルナを人質にされる可能性も大いにありうる。



 果たしてノースが13年前の事を覚えているかどうかだが、最悪を想定し、マイナの弟たちの救出に加え、ルナの救出についてもいよいよ本腰をあげねばならない。




 その後もパラパラとページをめくり、内容を読み進めていくも、あまりにも膨大なページ数と余りある情報量に目が疲れたノックスは、本をパタンと閉じ、明日から本格的に始まる救出作戦に向けて、就寝した。

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