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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第15章 一時帰国(ウィンディア編)
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預かり

 その後、ノックスらは再度謁見室へと戻り、国王らと交渉する。



 それは、マイナらの身を自分たちに預けて欲しい、ということだ。


 このままでは先の防衛戦の戦犯者としてカイロスらと共に処刑されるからである。


 カイロスの処遇についてはそのままウィンディアへ任せる。



 という提案だ。



 が、メローネやシリュウはその提案に憤慨し、変わらず処刑をと所望した。



「国民らが納得しないネ!!それに、あたしの同志たちを何人も殺されちまったんダ!!」


「いくらノックスさんの頼みとはいえ、そればっかりは聞けねぇ!!アイツらにゃあこの世の地獄を見せてやらねぇとよぉ!!」


「ふむ……いくらノックス殿の頼みと言えど、この2人の言うように国民は納得せんだろう。

 ガンベルから聞いていたが、あのマイナという女に教会を探るよう命令していたそうだが、その情報が欲しいという貴殿の理由は、我々とは一切関係が無いのも分かっておるだろう?」


「重々承知しております。

 …ですが、彼らもまた、教会の被害者です。それでも責任を取らせたいというのならば、1つ提案があります。」


「……申してみよ。」


「先も申したように、あくまでも彼らの身は『預かり』です。

 俺の命令で彼らにはスパイをするよう命じましたが、彼らとて、この国で捕まれば自身にどのような処罰が下されるか理解しています。

 それでも尚、彼らは捕まりました。身を潜めることもなく。」


「確かにな。だが、それは単に仲間のケガのせいではないのか?」


「そうかもしれません。ですが、彼らはわざわざ捕まった。仕方がなかったとはいえ、自分たちの身の安全より、俺との約束を果たしてくれました。

 それは、信用に足るのではないでしょうか?

 なので、こちらからは、彼らの身を6ヶ月間、我々に預けてください。

 その間、彼らが俺たちのため、しいては、ウィンディアのため身を粉にするのであれば、是非とも温情を掛けていただきたい。」


「……もしも、そうならなかった場合は?」


「そうであれば彼らの身はウィンディアへと返します。この俺が監視し、責任を持って必ず連れ戻します。」


「………………」



 国王は険しい表情を浮かべたまま黙考した。



「人間というのは本当に難しい生き物じゃのう。」


「…ベリアル…今は静かにしていろ。」


「そうは言われてものう。ワシには人間の規則なぞ知らんが、戦いに敗れた者が仇だなんだと言うことほど愚かなことは無いぞ?」


「な、なんだと!!?」


「聞き捨てならないネ!!いくら火龍といえド!!」


「その通りではないか。負けて騒ぐのなら、負けなければよいだけじゃ。あのマイナという女に殺られたのは、お主らが弱いからじゃ。」


「ぐっ…!!」


「言わせておけバ…!!」


「静粛に!!!!陛下の御前だぞ!!!!」


「それに、あの女らを降したのはノックスらであろう?ならば、そやつらの身の処遇はノックスが決めて良いじゃろう?人間は何事も難しくしすぎよのう。」


「ベリアル、その辺でいい。静かにしろ。」


「む……分かった……仕方ないのう。」



 ベリアルのせいで謁見室が騒がしくなったものの、皆落ち着きを取り戻した。



 当のシリュウやメローネは痛い所を付かれ、苦虫を噛み潰したような表情をしていたのだが。



 騒ぎがひと段落した後、国王が重い口を開いた。



「…確かに、ベリアル殿の言う事にも一理ある。ノックス殿のおかげで我が衛兵らも強くなったとは言え、それでもまだまだだ。

 それに、リームスらを退けられたのもノックス殿らの功績なのは他ならん。」



 国王はそこで一旦区切り、大きく深呼吸して続けた。



「よかろう。ノックス殿の提案、受けさせてもらおう。

 期限は6ヶ月。それまでの間に彼らが我々に有用であることを証明せよ。」


「へ、陛下!!」


「ベリアル殿の言う通りではないか。この弱肉強食の世界では、勝者こそが正義である。

 むしろ、それを前提に提案を持ちかけてこなかったノックス殿の、この国への配慮。誠に感謝する。」


「ありがとうございます。」


「契約書を持て!」



 その後、契約書が作成された。



 上等な羊皮紙に書かれた内容は、


『マイナ以下、ハイゼル、ヨハンナ、ホーク、キリト、セトの身はノックス氏の預かりとする。


 期限は6ヶ月。


 その間に上記6名がウィンディア王国、及び、ノックス氏に貢献し、教会からの離反者であり、有力な協力者であることを証明せよ。』



 という内容であった。



 契約書を一読したノックスは文面に足りない文言があることに疑問を持つ。



 それは、『この期間中に上記を達成出来なければ、その6名はただちにウィンディアへと身柄を引渡すべし』という文言だ。



 ノックスがシアン国王へと怪訝な表情を浮かべて見つめたが、国王はただ静かに頷いた。



 ノックスと国王両名が拇印を押し、正式に契約として結ばれた。




 その後改めて地下牢へと降り、マイナたち6名を釈放する。



 その光景を目の前で見ていたカイロスは呆然と眺めていたが、その後激しく異議を申し立ててきた。


「そ、その女が許されて、なんであたしだけ許されないのよ!!その女だって、たくさん殺したじゃない!!」


「貴様!黙れ!!」


「ちょっとアンタ!!なんでアンタだけが助かろうとしてるのよ!!あたしだって釈放しなさいよ!!」


「貴様…!!」


「カイロス、悪いわね。でも、私はあなたと違って目的があるのよ。」


「…も、目…的……?」


「そういう訳だから。」


「ち、ちょっと…!!」



 マイナはそれ以上、カイロスに目もくれずに地下牢を後にした。




 その後、マイナたちに国王とのやり取りについて説明する。



「…そう……6ヶ月で、ね…」


「それ以上の譲歩も出来んし、今のところするつもりも無い。お前たちがウィンディアにとって有用な事を証明するしかない。」


「……あら、あなたにとっての有用性は?」


「ルナの捜索についてかなり役立ってくれたようだからな。ただし、嘘なら容赦しないが。」


「それは信用して。」


「なら良い。改めて自己紹介だ。俺がノックス。」


「ワシは火龍のベリアルじゃ!」


「「「「「「……え?」」」」」」


「本当だ。今は俺たちと行動を共にしている。」



 今までと同様に『火龍』という言葉に皆が動揺したが、落ち着いた所で全員の自己紹介を終えた。

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