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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第14章 一時帰国(ロンメア編)
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深酒

 この日のノックスは皆を連れてウルカ村へと訪れていた。



 この国に初めて訪れる際、色々と世話になったナバルたちと会うためである。



 村に到着すると、そこにはすでにナバルが出迎えており、ドラン、ホランド、フェリスがいた。



「ノックス様ーー!!」


「ノックス殿!お久しぶりです!」


「こちらこそ。ナバル殿らもお変わりはないようだ。」


「お陰様です。詳細はすでに聞いておりますが…全くもって驚きですな…」


「さすがノックス殿だ。種族の垣根を越え、火龍すらも仲間に引き入れてしまうとは。」


「一番弟子としても鼻が高いですぅー!」


「さあさあ!立ち話もなんですから、さっそくうちの宿に来てください!お袋も張り切ってますよ!」



 急遽催された送別会ではあるものの、ドランの母はたくさんの料理を並べて歓迎してくれていた。



 見ると、見慣れない従業員もおり、その事についてドランに確認すると、

「ノックスさんの例のアレのおかげで、色々と余裕ができたんですよ!」

 との事だった。


 聞くや否や、

「まさか……あれから順調に開発を……!?」

 と食い気味に聞くノックス。


「楽しみにしててください!後で持ってきます!」




 皆が席に着き、ドランが例のアレを皆のグラスに注ぐ。


 初見の者は皆、その黄金色に輝くビールに興味津々のようである。



 前に試飲させてもらったとはいえ、ノックスも思わず生唾をゴクリと飲み込んだ。



「それでは、ノックス殿たちの今後を祝して、乾杯!!」



 ナバルが威勢よく乾杯の音頭を取り、皆がゴクゴクとビールを煽った。



「プハーーーーッ!!前に飲んだ時より断然美味いッスーー!!」


「ぐおっ!?なんじゃこれは!!?めちゃくちゃ苦いではないか!!」


「今回はホップを多めにしましたからね。それにストレンジさんとこの麦の品質も良くって。」


「…こんな冷たいビールなど初めて飲みました……」


「私もだ……知っているビールとは違って甘い香りは無いが、この喉越しがクセになる……」


「俺もこのビールを知ってからは、前のビールが飲めなくなってしまったな……」


「皆さんありがとうございます!ノックスさんはどうですか?味のほうは?」


「……………」


「…ノックスさん…?」


「………ドラン殿………ここまで素晴らしいビールに仕上げてくれて………本当にありがとう……ありがとう……!!」


「うぇぇ!?ノ、ノックスさん!?」



 ノックスは感激のあまりドランを抱擁し、涙を流して感謝した。




「アステル島の開拓が軌道に乗り、そのまま建国となる場合は、是が非でもこのビールは欲しい。」


「もちろんです!このビールはノックスさんの発想ありきで完成した物ですから!!そん時は飛びっきりの格安価格で取引させてもらいます!!

 なんなら、俺が派遣して製法を教えますよ!!」


「大歓迎する!いいな皆。その時は国賓としてだ!!」


「ちょっ!大袈裟ですって!!」


「ハッハッハッ!凄いじゃないかドラン!!そこまでノックス殿の舌を唸らせたこのビール。それを作りあげたのはお前の努力の賜物だ!!」


「その時は私も同行しましょう。ノックス殿の作る国がどのような国なのか、少々興味もありますし。」


「あたしはそのままノックス様んとこに移住しまーす!!」


「だ、ダメですよ、フェリスさん!!」


「うーむ……ワシには分からんが……そんなに苦いのが好きなのかお主らは……?」


「ベリアルは酒は飲んだことはないのか?」


「飲んだことくらいはあるが……こんなに苦いのは初めてじゃ……」




 実に賑やかな送別会となった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 送別会がお開きとはなったものの、飲み足りない者はまだ飲んでいた。



 ナタリアとモズに至っては、ビールの飲み比べをしてどちらがノックスの妻となるか勝負をしている。


 アインとフェリスは酔いつぶれて床で寝ていたが、アインはノエルが、フェリスはホランドに引き摺られながら自室へと戻った。



 ベリアルは酒の抵抗力があまりないのか、ビール1杯で出来上がってしまい、晩飯をたらふく食べた後は早々に部屋で寝入ってしまった。



 ノックスはリドルとナバルの3人で深酒していた。



「それにしてもリドル……お前はよくあの2人を取りまとめてくれたな……」


「苦労はしました……まあ、慣れたものですけど。ノックス様こそ、アインには手を焼かれたのでは?」


「あいつはやる時はやる奴だ。」


「口では色々と文句の多い奴ですけどね……ノエルはどうだったんです?アインとは真逆で頭の硬い奴だったでしょう。」


「確かにな……だが、俺はいずれ、ノエルに背中を託したいと思っている。」


「……その言葉、きっとノエルが聞けばさぞ喜ぶでしょう。」


「その時、あいつは色々と無茶をするだろうな。だからその時はリドル、お前がノエルを陰で支えてやってくれ。ナタリアとモズを取りまとめたお前にしかこんな事は頼めん。俺が言えば、あいつは気負うだけだ。」


「……そのお言葉、ありがたく頂戴致します……!お任せ下さい!」


「苦労をかけてすまんな。」


「何をおっしゃいますか。信頼して頂き、光栄の極みですよ。」


「…失礼。話は変わりますが、ノックス殿はあの御二方どちらかと添い遂げるおつもりで?あちらでは白熱しておりますが。」


「あ、それ俺も気になりますね。どうなんですノックス様?」


「……あの2人には悪いが添い遂げるつもりは無い。」


「……なんか、改めてそう聞くと……あの2人が今も張り合っているのは……虚しくなりますね……」


「では、どなたか心に決めた御方でも?」


「……そうだな……2人に相談だが………」


「ほう?相談ですかな?」


「なんでしょう?」


「心に決めた人が、どうしても祖国を離れられないと言われた場合…その…どうすればいい?」


「ふむ……ノックス殿としては付いて来て欲しい、と?」


「…まあ、そうだな…」


「…ふむ……私ならば、相手の気持ちを尊重すべきかと。理由があって祖国を離れられないのであれば、それを取り払ってやればよいのではないでしょうか?」


「俺も同感です。愛があれば、と言う人もいるでしょうが、お互い後ろめたい気持ちのままでいるよりは、スッキリとされたほうが良いかと思われます。」


「そう…だな……」


「差し支え無ければ教えて頂きたいのですが、なぜその御方は祖国を離れられないと?」


「……祖国には、守りたい人たちが大勢いるから、だそうだ。」


「…そんな大義を掲げるなんて、普通は無理じゃないですかね…?一人の人間がたくさんの命を守るなど……まあ、ノックス様なら可能でしょうが。」


「…俺にだって無理な事もあるさ。」


「…………」



 黙って考えていたナバルがハッとする。



「……まさか……その御方というのは……」


「……あぁ……ザリーナ殿だ……」


「えぇ!!?ザ、ザリーナ殿!!?」


「……声が大きいぞリドル……」


「す、すいません…!しかし、その…少々ビックリしまして……ザリーナ殿と言えば、俺が感じた印象は、ノックス様にやたらと挑戦して、てっきり敵対視しているのかと……」


「…リドル殿、それは誤解です。

 ザリーナ統括は若くして、それも史上初の女性統括にまで登り詰めた御方だ。

 普段無愛想であまり話す方ではないが、ノックス殿に対する態度は好感からくるものです。」


「…そ…そうなんですか……ですが、なぜノックス様はそのザリーナ殿に惹かれたので?確かに見た目は息を飲むほど美しい御方ですが…」


「……俺の実力を知り、素性を知り、それでも真正面から何度も立ち向かってくる。

 俺も最初は嫌われているのかと勘違いしていたが、彼女が自分の気持ちを素直に口に出せないのだと理解したんだ。

 それに気付くと、俺の中でどんどんと彼女の存在が大きくなってな……」


「…それで気がつけば恋に落ちた、という訳ですな。」


「…正直、恋愛などすることも無いと考えていたのだがな。」


「…なるほど……ザリーナ統括なればこそ、先のような大義のために祖国を離れられない、というわけですな。

 立場もあり、部下もおり、家族もいる。」


「そういう事だ。」


「うーむ……そうなると、アステル島での拠点作りは諦め、ロンメアに定住するか、もしくは、ザリーナ殿が任せていられる後任を育てるしか…」


「拠点作りは諦めない。

 今後教会との戦争は避けられんだろうし、このロンメアを巻き込みたくは無い。

 それに、俺の私情1つで変更して良い事でも無かろう。

 生き別れの妹も見つけねばならんしな。」


「……ならば、答えは簡単でしょう。」


「……?」


「一刻も早く、アステル島で拠点を完成させ、その時に改めてザリーナ統括を迎えに来てください。」


「…だがそれでは…」


「今こそ、ノックス殿への恩を返す時です。ザリーナ殿が不安視するこの国の安寧。それは必ずや、我らが払拭してみせましょう!!」


「恩など……それほど大した事など……」


「いいえ!!命の恩は、何ものにも変え難い物なのです。そんなノックス殿に返せる恩返しとは何なのか……

 それが、ザリーナ統括が安心してこの国を出られるようにするという事ならば、我らとて努力を惜しむつもりはありません。」


「ですね、ナバル殿。俺たちも、一刻も早くアステル島での拠点作りを完了させ、迎え入れる準備を致す所存です。」


「……2人とも……ありがとう……

 少しスッキリしたよ。」


「ハッハッハッ!構いません!!」


「それになんか安心しましたよ。」


「ん?何がだ?」


「ノックス様ほど強い方でも、人並みに悩み事があり、そしてそれを俺たちにこうやって打ち明けてくれたことにですよ。」


「当然だ……強いと言えど、それは戦闘においてのみの話だからな……」


「…ノックス様、まだこちらにいらしたのですね。」



 ちょうどその時、ノエルが下へと降りてきた。


 飲み比べをしていた2人は両者共に机に突っ伏しており、女将により自室へと運ばれていた。



「ノエルか。お前もまだ飲めるだろう?」


「そうだノエル!お前も飲め!」


「まだ飲めるには飲めますが…分かりました。お付き合いさせていただきます。」


「今日は盛大に飲み明かしましょう!!」

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