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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第13章 アステル島
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地龍と黒龍

 一行は早速船に乗り込み、ロンメア王国へと向けて出港した。



 初めて乗り込む船にベリアルは当初こそテンションが高かったものの、ものの数分であまりにゆっくりな速度にやや飽きていた。



「風を受けて進むのならば、ワシが風魔術をぶち当ててやろうかのう?」


「ベ、ベリアル様…どうか気をお沈めくださいぃ…!」


「どうか…!どうか…!!」


「ガハハハハ!!何を怯えておるのじゃ!!ワシとて力加減は分かっておるわい!!」


「ベリアル。あまり皆を怖がらせるなよ。それと、お前らも必要以上にベリアルを怖がる必要は無い。」


「そ、そうは言いましてもキャプテン……」


「何か問題を起こしたのなら俺に報告しろ。」


「怖がらせてなどおらん!心配せんでも大人しくしておるわい。」


「…は…はいぃ……」


「それにしてもこんなチンタラと進むのならワシの背に乗せてそのロンメアまで飛べばええじゃろ。」


「……言っただろう。人前で無闇に龍形態になるなと。」


「むう。退屈じゃのう。」


「戦いたいのならいつでも相手になってやるぞ。」


「そうは言っておらぬ!!戦うにしても、お主とだけは絶対嫌じゃ!!地龍のジジイもバケモンじゃったか、お主はそれよりも更にバケモンじゃ!!」


「…そういえば気になっていたんだが……いや、場所を変えよう。」




 ノックスはベリアルを連れ、船内にある自室へと招き入れた。


 ベリアルを椅子に座らせ、そして、紅茶を煎れた。



「む?なんじゃこれは?」


「紅茶と言う飲み物だ。飲んでみろ。」


「ほう?どれどれ……」



 促されたベリアルが紅茶を啜る。



「ぬぁ!?な、なんじゃこれ!!?苦いぞ!!」


「…そうか?ならば砂糖とミルクを入れてみろ。」



 机に置いてある容器から角砂糖を1つ紅茶の中へ投入し、ミルクを入れ、スプーンでかき混ぜ、そして再度啜った。



「……ほう……これは美味いぞ!!」


「気に入って貰えて良かった。」


「ガハハハハ!!紅茶か!!気に入ったぞ!!砂糖とやらを入れねば飲めた物ではないがのう!!」


「それは紅茶は紅茶でもミルクティーというやつだ。」


「ほう……みるくてぃー…か。気に入ったぞ!!」



 さらにベリアルは机に並べていたお茶菓子に手を付け、「美味い美味い」と感激しながら完食していた。



「…それで、ただワシにミルクティーやら菓子をくれるために招いた訳ではなかろう。ワシに何の用じゃ?」


「お前は地龍とは知り合いのような口振りだったが、そうなのか?」


「なんじゃ、そんなことか。当然知っておる。」


「他の八龍は?」


「ワシが知っておるのは、黒龍のクソジジイ、金龍の頑固ジジイ、あとは……水龍じゃ。」



 ベリアルはやや言葉を濁した様な言い方をしていた。



「俺は言わば、地龍の仇とも取れるはずだ。」


「…くだらぬ。一対一で戦いを挑み、地龍が継承まで行った相手に、仇も何もないわい。

 地龍は口数が少ない偏屈じゃったが、強さだけは誰もが認めておったわ。」


「それなら安心した。そういえば昔に、地龍が黒龍を叩きのめした、と伝えられているが、本当なのか?」


「本当じゃ。と言っても、その頃ワシはまだ生まれておらんがのう。」



 ベリアルの口からその詳細が語られた。



「ワシが聞いた話じゃと、黒龍と地龍は昔から仲が悪かったんじゃ。

 地龍は強い者と戦うことを好んだが、黒龍は弱い者と戦うのが好きじゃった。

 黒龍は龍族の若者を踏みつけ、時には再起不能にまですることもあったようじゃの。

 特に、他の種族に対しては容赦せんかった。

 黒龍は他の種族の者を虐殺しては、面白半分で暗黒魔術で生き返らせ、そいつらを同じ種族と同士討ちさせたりもしておった。


 そんな事を繰り返したせいで、黒龍の通り道には死者が溢れかえったそうじゃ。


 他の種族はおろか、同じ龍族でさえ黒龍を止められんかった。



 そんな折、黒龍は1つの禁忌を犯したんじゃ。」


「…禁忌?」


「龍族には鉄の掟があってのう。それは、『龍族は、いついかなる時も、同族を殺してはならぬ』という掟じゃ。

 今までは再起不能にすることはあっても決して命まで奪うことはしなかった黒龍じゃが、その掟を破ってしもうたのじゃ。」


「同族を…か。」


「それで地龍が怒り、黒龍を再起不能なまでに叩きのめしたのじゃ。」


「なぜ殺さなかったんだ?」


「前にも言うたが、八龍はその力を持ったまま死ぬと世界を混沌に陥れてしまう。

 火龍のワシが死ねば至る所の火山が噴火し、大地は火で覆われる。地龍ならば大地が崩壊する。それが黒龍ならば、大地が死者で埋め尽くされる。

 あの時もしワシにトドメを刺していたなら、今頃大地は炎に巻かれ、世界中に混沌を齎しておったじゃろうのう。」


「……八龍の力とは随分と厄介な力だな。」


「八龍の力は悠久の時を与えるが、不死ではない。黒龍は地龍によって大ケガを負わされ、そのなりを潜めたという風に聞かせられておる。」


「…1つ疑問だが、八龍の力を2つ所持する事は可能なのか?」


「どうじゃろうの?今までやった事のある者などいやしなかったが、おそらく、八龍の力を2つ所有するとなると、その器である肉体が耐えられんのじゃないかのう?

 地龍がそうしなかったのも、おそらくはそういう理由じゃろう。」


「…なるほど………」



 ノックスはベリアルから聞いた話を頭で反芻しながら考え込む。



 仮にベリアルの話が全て真実だとするなら、おかしな点があるのだ。




「何をそんな難しい顔をしとるのじゃ!そんな顔しとらんで、このミルクティーとやらと菓子のおかわりをくれ!」


「おかわりは無い。」


「な、なんじゃと…!」


「そう何度も食べられると在庫があっという間に無くなるのでな。

 そう言えばさっき妙に歯切れが悪かったが、水龍とも知り合いだそうだな。」


「……べ……別に歯切れが悪い言い方をしたつもりはないがのう……安心せい。水龍はこの辺りには住んでおらぬわ。」


「それは知っている。水龍とは何か因縁でもあるのか?」


「…い…いや……」


「安心しろ。これは尋問では無い。言いたくないのならば強要はしない。」


「…い…いや、言いたくない訳ではないのじゃがのう………一つだけ忠告じゃ。」


「ん?なんだ?」


「…水龍にだけは絶対に会わんようにの……」


「…なぜだ…?」


「なぜでもじゃ!!絶対に会わんようにせい!!」


「……別に用がなければコチラからわざわざ会いに行くことなどしないが。」


「…それなら構わぬ。くれぐれも注意するようにのう…」

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