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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第13章 アステル島
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砂粒縛

 火龍は魔力を練り上げ、炎をノックスに浴びせかけた。


 その火力は凄まじく、かつて地龍が放った火魔術とは比べ物にならないほど高温であり、レンガはおろか大地までもを一瞬にしてどろどろに溶かした。



 ノックスはすでに地を蹴り躱し、火元である火龍の首めがけて駆け寄る。


 一瞬にして間合いを詰めたノックスが刀を振り下ろすも、火龍はすぐさま身を翻して斬撃を躱した。


 そしてそのまま翼をばたつかせ、上空へと舞い上がった。



『ガハハハハハハ!!!!飛べぬ貴様はそこで大人しく焼かれているがいい!!!!』



 火龍はノックスの頭上を旋回しつつ炎を浴びせ続けた。


 その炎により大地は至る所がマグマと化して煮えたぎる。


 ノックスは地魔術を行使し足場を作りながら火龍の炎を避けていく。


 ノックスが作った足場さえもやがてマグマに飲み込まれるが、火龍の攻撃が休まることは無く、その度に何度も足場を精製する。


 これでは埒が明かないと考えたノックスは火龍を地面に引きずり下ろすべく魔力を練り上げた。



「落ちろ!!」



 ノックスから放たれた重力魔法は的確に火龍を捉え、急激に発生した超重力により火龍は忽ち大地へと落下した。



『ガアァッ!!!!…小癪な……!!』



 落下した火龍目掛け足場を作り、一瞬で駆け寄ったノックスから斬撃が放たれた。


 火龍は重力魔法を相殺しつつなんとか体を起こしたものの、ノックスの斬撃により片方の翼が断ち斬られた。



「……ふむ……素晴らしい斬れ味だ……」



 ノックスはジェルゾにより鍛錬し直された刀の斬れ味に惚れ惚れしていた。



『…やってくれたな……貴様……』


「ふっ。その翼ではもう飛べまい。」


『このワシを本気にさせるとは……貴様はもう、骨すらも残さん!!!!』



 そう言い放つと火龍は魔力を溜め、頭から突き出ている角が真紅の妖しい光を放った。



『食らうがいい!!!!滅氣怒火炎(メギドフレイム)!!!!』



 魔力を一気に解放した火龍を中心に何本もの光が現れた。


 光は高熱を帯び、レーザーの如く大地すらまでをもバターのように焼き切っていく。


 一筋のレーザーが高速で逃げるノックスを正確に追尾しつつ、他のレーザーはノックスを取り囲むように包囲し、収束する。



『逃がさん!!!!』



 包囲させ収束させたレーザーを、一気にノックスに向け浴びせた。


 全てのレーザーが一点に集中した瞬間、凄まじい高熱と共に爆炎が舞い上がった。



『ガハハハハ!!!!このワシに敵う人間などおらぬわ!!!!ガハハハハハハ!!!!』



 火龍は高らかに笑いつつ、爆炎を見守る。



『しかしながら人間にしてはあっぱれな奴じゃ!!このワシをここまで本気にさせるとはのう!!』


「ノックス様!!!!」


「…まさか……ノックス様……」


「ミャウ…!!」


『さて、次はお前たちじゃ!!このワシに刃を向けたことを後悔するがいい!!』



 火龍はノエルたちをギロリと睨んだ。



 ノエルらは額の汗を拭い、すぐさま戦闘体制に入った。



『ガハハハハ!!!!貴様らはどこまでワシを楽しませてくれるのかのう!!!!』



 火龍が今まさにノエルらに向けて攻撃を仕掛けようとしたその時だった。



「待て。まだ終わっていないぞ。」



『……なんじゃと……?』



 火龍が声がする方へと向き直る。


 すると、先程まで爆炎が上がっていたその場所に、涼しげな顔をしたノックスが平然と立っていた。



『…な…!?き…貴様…!!ワシの滅氣怒火炎(メギドフレイム)を直撃したというのに……!?』


「ノックス様!!」


「ノックス様生きでだー!!!!」


「ミャウ!!!!」


『貴様、どうやって躱したのじゃ!!!!』


「躱してなどいない。種明かしをするなら、何重にも魔障壁や氷の壁を展開したまでだ。」


『…は…?……氷や魔障壁ごときでワシの滅氣怒火炎(メギドフレイム)を……?』


「貴様の奥の手は見せてもらった。お返しとして、俺の奥義を見せてやろう。」


『ま…待て…!!』


「この技は、回避や防御することも敵わん。」


『ちょ…』


「とくと味わえ。『砂粒縛(さりゅうばく)(しぶき)』!!」



 ノックスは左手を翳した瞬間、火龍は即座に魔障壁を展開した。


 が、ノックスが翳した手からは何も発生しなかった。



『……?…な、なんじゃ驚かせおって!!ただのハッタリをかますとは、愚かな……グアァァァ!!!!』



 瞬間、火龍の体内から無数の刃が突出し、火龍は身体の内側から切り裂かれ、血飛沫が舞った。


 あまりにも唐突な出来事に、火龍はおろか、ノエルらでも目の前の光景を疑った。


 火龍を切り刻んだ刃はその後、サラサラと風に流され、砂塵の如く消え去っていった。


 身体を切り刻まれた火龍はズシンと崩れ落ちた。



『……クソ……人間如きと…侮っておったわ………このワシを凌駕するとは………』


「勝負はついた。が、まだやるか?」


『……ガハハ……ぬかしてくれるわ……ワシでは貴様には勝てん……』


「では、このアステル島は俺たちが貰い受ける、で構わんな?」


『…当然じゃ……それにしても貴様…最後の術は一体……?』


「粒子サイズの砂を対象の体内に潜り込ませ、結晶化させる術だ。」


『…なんじゃと……?……そのような術、聞いたこともないぞ……』


「地龍を倒した際の称号のおかげで地魔術が格段にレベルアップしているようでな。」


『…な、何!?…あのジジイを…倒しただと!?…それに称号だと…!?……ハハ……ガハハ……そうか、なるほど。そういう事じゃったか……』



 火龍は何かに納得したようであった。



『…貴様…名を何と言うのじゃ?』


「ノックスだ。」


『ほう…ノックスか……それで、なぜいつまでもワシにトドメを刺さぬ?』


「危害を加えるつもりが無いなら、命まで取るつもりは無い。」


『…ガハハハハ……面白い奴じゃ……あのジジイが継承したのも頷ける……』


「…お前には聞きたい事がある。」



 そう言うとノックスは火龍に回復魔術を施し、みるみる内に傷が癒え、斬られた翼が再生した。



『…なんじゃと……?』


「まだ暴れ足りないのならいつでも相手になってやるが、今度は命の保証は無い。」


『…もうよいわ。貴様相手では例え天地が逆さになろうとも勝てぬわ。それより、聞きたいこととは?…いや待て。この姿では不便じゃろう。』



 火龍はスっと立ち上がったかと思うと、続いて魔力を練り上げ光を放つ。


 火龍全体が光を放ち、やがて光が小さくなってゆく。



「ガハハハハ!!本当に死ぬかと思うたぞ!!」



 光が収まると、そこには頭から2本の角が突き出ており、赤い髪の20歳前後の若い男が現れた。

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