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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第13章 アステル島
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克服


「ぎぇえええええ!!!!」



 鬱蒼と生い茂る森の中で、アインの悲鳴がこだました。



 その森の中をスイスイと駆けたノアが、木から足を滑らせて頭から真っ逆さまに落下するアインを空中で捕まえ、事なきを得た。



「…た……たしゅかった……ノアぢゃぁぁん!!ありがとぉぉぉ………!!!!」


「ア…アイン…!!無事か…!?」


「ノエルぅぅ…ノアちゃんがたしゅげてくれだから無事ッスぅぅ…」


「泣くな、みっともない!!」


「だ…だってぇぇぇ……」



 あれから夜が明け、早速ノエルとアイン、ノアはノックスから課されている『地面に足をつけない』様に移動していた。


 木登りなど不得意なアインは時間をかけ登るが、そこからさらに違う木へのジャンプするのに萎縮してしまい、戦々恐々としながらジャンプしていた。


 移動にアインが完全に足を引っ張ってしまい、かなりの時間をかけ移動する事となってしまっていた。



「しっかりしろアイン!移動にこれだけ時間を掛けては話にならん!!もし今モンスターに襲われたらどうするつもりだ!!」


「そ、そんなこと言ったって怖いもんは怖いんッスー!!ノエルの意地悪!!意地悪ノエル!!」


「なんだと…!!」


「喧嘩はよせ。こんな所で言い合っても仕方ないだろう。」


「…し、失礼しました!」


「だ、だってノエルがー!!」


「アイン。地上でやる動きをそのまま樹上でやるんだと切り替えろ。簡単には切り替えられんだろうが、落ちたとてノアや俺がいる。」


「…そ…そうは言ったって……」


「お前は俺たちの事が信じられないか?」


「…信じてるッス……」


「ならば俺たちを信じ、落下することなど恐れるな。

 樹上を地上と同じと考え、どこまでならジャンプで届くか、どの木を足場にして次の木へと移るか。

 頭の中でイメージし、脳を支配しろ。」


「…脳を……支配……」


「俺はお前ならできると信じている。」


「ノ…ノックス様が…俺を…?」


「アインだけじゃなくノエルもノアもだ。

 出来ないことを出来ないまま放置する事など誰にでもできる。

 だが、出来ない事を克服できるのは、誰にでもできることじゃない。」


「………………」



 アインはスッと立ち上がって、近くにあった木へとよじ登り始めた。



 途中ずり落ちつつも、何とか枝の上に立ったアインは、震える足を押さえながら目を瞑り、集中する。



 やがて足の震えが収まり、しばらくして目を開ける。



「…ノックス様が…こんな俺の事を信じてくれてるなんて言われて…足踏みなんかしてらんないッス…!」



 アインは脳でシミュレーションした動きを反芻しつつ、決意をして飛び移った。



「アイン…!!」


「ミャウ!」


 その光景を下から見ていたノエルは安堵し、ノックスも薄らと笑みを零した。



「ほらみんな!!早く行くッスよー!!」



 樹上のアインは恐怖を克服したのか、みんなに笑顔で手を振っていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 森の中に入って3日もすると、ノエルとアインの動きは格段に良くなっていた。



 まだノアを捕まえることはできていないものの、通常戦闘時でも最初の頃に比べて雲泥の差である。


 ノアもまた、森の中での戦闘や、ノエルとアインからの追いかけっこにより森の中での動きに鋭さが増し、洗練され、もはや誰にも捕まえられない程にまで成長していた。


 それどころか、単に逃げ回るだけでなく、時折ノエルやアインの背中に自ら乗っ掛かりに行ったりと煽りまで欠かさない。



「…さすがにこれ、ノアちゃん捕まえんの無理すぎじゃないッスか…?」


「ノックス様…申し訳ありません…ご期待に添えず……」


「…いや、こればかりは俺の認識が甘かった、と言わざるを得ん。あの本にあった通り、伊達に『夜の狩人』などと呼ばれてないな。」



 ノアはノックスらと行動を共にしているからなのか、非常に賢く、言葉を理解するだけでなく戦闘や動き、果てはスキルの使い分けまで実に洗練されていた。



「ミャウゥゥ!!!!」



 とても誇らしげにノアは鳴いていた。



「これ、ノックス様でもさすがに捕まえられないんじゃないッスか?」


「ミャウ!!」



 受けて立つと言わんばかりにノアが鳴いた。



「ほう?ではやってみようか。」



 その言葉を皮切りに、突如としてノアとノックスによる追いかけっこが始まった。



 ノアは隠密スキルで気配を殺し、それでいて森の中を縦横無尽に凄まじい速度で駆け回る。


 素人目には木々がざわざわと揺れている様にしか見えない程である。



「ではいくぞ。」



 刹那、ノックスの姿が消えたかと思うと辺りの枝がゆらゆらと揺れる。


 ノアをも凌ぐとんでもない速度で木々を伝う。



 そして、

「フギャ!!」

 という声がしたかと思うと、すでにノアはノックスの手により首根っこを捕まれ、借りてきた猫のように静かになっていた。



「ふぅ…かなり速いなノア。これではさすがにノエルやアインでは捕まえられん。」


「……ミャウ………」


「……な、なあノエル……今のノックス様の動き……見えたッスか?」


「……全く見えなかった……」


「さすがにノアを捕まえるのは不可能だとしよう。それより、お前らに朗報だ。」


「…え?朗報?」


「なんでしょうか?」


「このまましばらく行くと森を抜け、開けた場所に出る。

 そこから元エトワール王国と思しき街が見えていたぞ。」

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