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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第13章 アステル島
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アステル島上陸

 ロンメアやウィンディア王国を有するストール大陸から海を隔て、大陸より北東に位置する場所にアステル島が存在する。



 かつて、そこはエトワール王国が栄えていた場所だが、火龍の逆鱗に触れた事で滅びた場所である。



 航海を無事終えたノックス一行は船を浜辺に着け、ノックスはドレッドらに船を任せ、早速上陸して旧エトワール王国へと向けて出発した。




「…なんか、思ってたのと違って…なんというか…普通というかなんというか…」


「どんな想像をしていたんだ?」


「いやぁ、火龍が生息するんだから、なんかこう、燃え盛る島?的な感じかなあって思ってたッス。」


「ずっと燃え続けさせる事など魔力がいくらあっても足りんだろう。」


「いやまあ、そう言っちゃそうなんッスけど…」



 アインの言う様に、辺りは木々で生い茂り、そこかしこから虫の声やらモンスターの鳴き声が聞こえてくるジャングルであった。



 ノエルとアインの会話を他所に、ノックスは魔力感知を最大にし、火龍の居場所を探ってみたものの、とりわけ巨大な気配は感じられなかった。


 だが、代わりに別の気配が自分たちの元へと近づいてくるのが確認できる。



「どうやらお出迎えが来たようだな。」


「…へ?お出迎え…?」


「……!!敵だアイン!!」



 一行の前に現れたのは体長2メートル、二足歩行の大きなトカゲであり、さながら恐竜のような見た目であった。


 が、恐竜と大きく異なっているのは、頭部から突き出た角が発光していた。



「な、なんッスか、このモンスターは!?」



『クルルルルル……』


『ギャギャギャギャ!!』


『…コココココ……』



「…会話している……?」


「すでに囲まれたようだぞ。」



 このモンスターはエレメンタルリザードと呼ばれる個体であり、ストール大陸では()()()()()()()にしか生息しない獰猛な肉食モンスターである。



「フーーーーッ!!!!」


「アイン!!」


「分かってるッスよ!!」



 アインは無詠唱でE・(エレメンタル)リザードらに雷魔術を浴びせた。


 だがモンスターらはすぐさまそれを感知し、散開して雷を避けた。



 E・リザードは素早く動き回りつつ木々の合間からこちらの動向を伺い、一行の周辺をグルグルと駆け回る。



「手伝ってやろうか?」


「それには及びません!!これしきの相手、我らの手で!!」


「俺らだってやる時はやるッス!!」


「フーーーーッ!!!!」


「ならば結構。」



 ノックスはそう言うと自身の周辺に魔障壁を展開し、地魔術で机と椅子を作成し、優雅にティータイムとした。



 その間もアインが雷魔術を行使するも、虚しく躱される一方であった。



「くそっ!!木が邪魔すぎるッスよ!!」


「無闇に魔法を撃ったとて当たらん!!」



 やがてE・リザードから反撃が始まった。



 E・リザードは駆け回りながらも仲間とコミュニケーションを取り、巧みに地の利を最大限に活かしながら代わる代わる2人に攻撃を与える。


 攻撃をしたら離れ、また攻撃したら離れるといった一撃離脱戦法である。


 地の利を活かしたE・リザードの連携攻撃に2人は完全に翻弄され、チクチクとダメージを受けていた。



「なんとか奴らの足を止めないと…!!」


「アイン!奴らは俺たちを中心に時計回りで攻撃している!!」


「それがなんなんッスか!!」


「だからお前は反時計回りに旋風を放て!!」


「え!?旋風!!?…そ、そうか!!!!」



 ノエルの指示のもと、アインは魔力を練り上げ反時計回りに旋風を放った。


 突如として向かい風に煽られたE・リザードらは急激に失速する。


 その隙を逃すまいとノエルが駆け寄り、1匹のE・リザードの首を一瞬のうちに刎ね除けた。



「ぃよっしゃあああ!!!!ノエルナイスッス!!!!」


「油断するなアイン!!このまま一気に行くぞ!!!!」


「モチのロンッスよ!!!!」



 アインはすぐさま2発目の旋風を放った。



 が、E・リザードは駆け回るのをすでに辞め、両腕で木をガッシリと掴み、体勢を低く構えていた。



 アインの旋風に耐えながら、発光していた角をさらに光らせたかと思うと、口から雷や氷柱を吐き、大地からトゲを突出させた。



「「!!!!」」



 ノエルとアインの元へ魔法が次々に撃ち込まれる。



 咄嗟に魔障壁を展開したものの、いくらか攻撃を貰ってしまった。



 次々に撃ち込まれる魔法により魔障壁にヒビが入る。



「…こ!このままじゃ…!!」


「…くっ!!」



 その時であった。



 今まで気配を殺していたノアが、E・リザードの死角から喉元へ噛みつき、一瞬にして首の骨を砕いて絶命させた。



 他のE・リザードは仲間が殺された事に気づいていない。



 必死にE・リザードの猛攻に耐えていたノエルとアインだが、攻撃の手が緩んでいることにようやく気づく。



「…アイン!!ノアだ!!ノアがやってくれている!!」


「…ノアちゃんが……!!……それなら俺らも負けてらんないッスね!!」


「俺は2時の方角へ行く!お前は8時へ!!」


「了解ッス!!…魔障壁、切るッスよ!!」



 その声と共に魔障壁を解除し、それぞれが指定の方角にいるE・リザードへ魔法を掻い潜りつつ駆け寄った。



 その時にようやくE・リザードは自分の仲間がノアにより殺されていたことに気づいたのだが、時すでに遅し。


 音もなく頭上から首元に噛みつき、そのまま首の骨をへし折る。


 ノアに注意を逸らすとノエルにより双剣で首を断ち斬られ、またある者はアインからナイフを突き刺され、体内から魔法を放たれ殺されていく。



 当初10数匹いたE・リザードはあっという間に数を減らし、残り3匹となったところで自身の敗北を悟り、慌ててその場から逃げ出した。



「……ハァ……ハァ…………な、なんとか……か……勝てた……ッス……」


「…フゥ……強くなったと思っていたが……まだまだだな……ノアがいなければあのまま……」


「ミャウ!!」


「ノアちゃん、助かったッス……ありがとッス…!」


「あぁ…助かったぞノア。」



 2人から感謝されたノアはどこか誇らしげであった。



 魔障壁を解除し、ティータイムを終えたノックスがノエルとアインに回復を施す。



「2人とも、自分の反省点は弁えているな?お前たちの言うように、ノアがいなければ全滅していたぞ。

 平地での戦闘に慣れすぎて、足場や見通しの悪い場所での戦闘にも注力しなければならん。」


「仰る通りです……面目もございません。」


「…申し訳ないッス……にしても、あのモンスター、魔法も使うんッスね……」


「ノエルが買ったモンスター図鑑には載っていなかったのか?」


「何十回と目を通しておりますが、あのようなモンスターに関する記載はありませんでした…」


「ん?そうなのか?」


「はい。」


「ノックス様は見た事あるんッスか…?」


「ああ。『悪魔の口』に生息していたな。懐かしい。」


「…あ…『悪魔の口』に生息していたのですね…」


「血の臭いを嗅ぎつけて他のモンスターが来る前に、さっさと素材を頂いて先へ急ぐぞ。」


「畏まりました。」


「了解ッス。」

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