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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
閑話
150/322

潜入調査3

 階段を降りた先には貧民街には似つかわしくない堅牢な地下室が現れた。



 部屋の真ん中には机が置かれ、資料が散乱している。


 壁には書物が所狭しと並べられ、コルクボードには名前の札がいくつか貼られ、赤い糸が蜘蛛の巣の様にそれらをピンで繋いでいた。



「…こ、これは…!?」



 6人が地下室の異様な光景を見て気圧されていた時、男はボロ布の外套を脱いだ。



「…お前らが探してるジェラート・ジェファーソンは、俺だ…」


「……やはりそうよね。」



 外套を脱いだことで顔が顕になったが、頬が痩け、目が落窪んでいた。


 が、その目は人生を諦めた男の目ではなく、確固たる決意を滾らせているかのような目であった。



「まあ、お前らも俺だと知っていて来たんだろうしな…」


「この地下室は…!?それになんで貧民街に…!?」


「まあ慌てるな……そうだな。お前らは『予言』についてどこまで知っている…?」


「…なぜそんなことを知りたいの…?」


「教えるつもりがないなら、俺も教えないだけだ。」



 予想外の質問にマイナは他の5人の顔を見やる。



「分かったわ……でも、詳しくは知らないの。」


「知っている限りで構わん。」



 マイナはふうと一息ついた後、『予言』について語り始めた。



「私たちに聞かせられているのは、『いずれ魔王が現れ、人々を恐怖に陥れる。魔王は暴虐の限りを尽くし、人々の文明は消え、残された人々もやがては魔王により滅ぼされるであろう』と。」


「…それだけか…?」


「えぇ。そのはずよ。」


「ああ。俺もそう聞いている。」


 他の5人も同じよう首を縦に振った。



「……ククク……やはりそうか……」



 ジェラートは厭らしい笑みを浮かべた。



「…まぁいいだろう…あの日の事を話してやる…」



 ジェラートはゆっくりとした口調で13年前の暗殺事件の出来事を話し始めた。



「あの日、親父が奴隷市場に行く少し前だ。

 親父は誰かの使いで、5月22日に人族と魔族のハーフのガキが市場に並ぶと聞きつけたんだ。

 俺はその日、急遽とある会食に呼ばれた。まあ、貴族の嗜みってやつだ。

 親父はそのハーフデビルのガキが奴隷市場に並ぶと聞いて、必ず落札すると息巻いてやがったよ。」


「…確か、8千7百万ダリルよね…なぜそこまで?」


「……お前らもあの帳簿を見たんだな……まぁいい。

 親父は教会の中で最後の穏健派だった。年端もいかねぇハーフデビルがとんでもない奴に買われないよう、自分とこで保護しようって考えたんだろうよ。」


「…保護……!?」


「…話を進める。

 その日俺はさっきも言ったように会食に呼ばれてた。そこで会った若くて美人な女が擦り寄ってきてな。俺も気分が良くなってつい飲みすぎちまった。

 うろ覚えだが、宿を取ってその女と入ったんだ。

 起きた頃には昼前で、女の姿もそこには無かったよ。」


「…ということは、その時点ですでに…」


「ああ。親父らが殺されたと知ったのはその後だ。

 家に入ったら親父にお袋、メイドらまで殺されてたよ。

 宝石類までごっそりと盗られてな。」


「…『ルナ』は?」


「そこにはいなかった。そん時はそんなハーフデビルの事なんて頭に無かったけどなぁ。

 …そこから俺の転落人生の始まりって訳だ。」


「…暗殺に関わった、と嫌疑を?」


「その通りだ。いくら弁明しようが聞き入れちゃくれなかったさ。さすがに投獄までされなかったけどな。

 そん時にハーフデビルの事を思い出したんだ。奴隷として買ってんのにそいつだけがいねぇ事にもな。普通ならそこを疑うはずだよな。」


「…問いたださなかったの?」


「まさか。当然問いただしたさ。ハーフデビルが親父らをぶっ殺したんじゃねえのか、ってな。けど衛兵らは頑なにそれを認めなかった。『奴隷の仕業じゃない』ってな。」


「…なぜ…?」


「それを俺に聞かれても、だな。

 俺はその後、他の貴族の連中から白い目で見られたよ。財産も『殺人容疑が晴れない内に渡す訳にはいかない』ってことで、家と共に半強制的に没収。

 貴族どもが暮らす場所に俺の居場所はなかった。」


「…ひどい……」


「そっから俺は自分の財産でこの家を購入し、調査してたんだよ。

 …もう…13年もかかっちまってるけどなあ…」


「それで1人で調査を……上で持ってたスクロールはいざと言う時の為なのね。」


「あぁ。お前らが信用ならなかった。いざと言う時はあのスクロールで支柱を爆破して生き埋めにしてやろうとしてたんだよ。

 今にも崩れ掛けの家に押し入ったお前らが、無惨に生き埋め。自業自得だって処理されるだけだ………ククク………」


「…信用したからこそ私たちをここに招き入れたのよね?」


「あぁ。まだ命を賭けるほどの事は聞いていない。」


「慌てるな。こっからは、俺の調査で分かった事を説明していく。」



 ジェラートは歩を進め、コルクボードの前で足を止めた。



「結論から言おう。この暗殺事件に関わっていたのは、現枢機卿の『ベスティロ』だ。

 親父と入れ替わるように枢機卿の座に就いた野郎だ。

 それだけじゃない。

 その裏には、教皇、アズラエルも関与している。」

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