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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第12章 リームス
147/322

大時化

 ウィンディア王国を出て7日が経過した。



 初日、ルミナの乗船により一悶着あったものの、

『船上では未知の調合を禁止する』

『他の船員に迷惑をかけない』

『ちゃんと後片付けをする』

『船の仕事を手伝う』

『ノックスの寝室に忍び込まない』

という5つの決まり事を結ばされ、かなり大人しくなっていた。



 5つ目の『ノックスの寝室に忍び込まない』というのは、初日の夜、部屋へ戻ったノックスのベッドの中でルミナがスヤスヤと寝ており、それを知ったノエルが激怒し、こってりと説教を食らわせた挙句に取り付けられた。



 一番の下っ端扱いとしてこき使われることに不平不満を漏らしていたが、ノエルの「嫌なら下りろ」の冷酷な一言で諌められ、泣きべそをかいていた。




 そうして今に至る。


 が、状況はあまり芳しくはなかった。



 と言うのも、今まで穏やかな船旅だったのが一転、天候は荒れに荒れ、滝の様な雨と横殴りの風で波が大きくうねり、その中を船が揉まれていた。



「野郎どもォ!!こらえろよ!!船から落ちちまったら助かんねぇぞ!!!!」



 ドレッドから怒号が飛ぶ。



 船員は甲板だけでなくデッキの下でも慌ただしく、全員びしょ濡れになりながらも帆を動かしたり、船の補強や海水を排除したりとひっきりなしに働いていた。



「まるで映画のようだな…」



 舵を固定させながらノックスが呟く。



 その傍らにはノエル、アイン、ノアがぐったりとしている。



 どうやらこの嵐による揺れのせいで船酔いを起こし、立つことすらままならない状態である。



「……ノ……ノッグズざまぁ……よく……平気ッスね……」


「…も……申し訳……ありません………」


「……ミャ……グゥ………」


「俺も船は初めてだが……耐性スキルの影響か…?」


「…解毒魔法じでぐらざいッスぅぅ……ウップ!!」


「これでもし何かしらの耐性スキルが上がるなら好都合だろう。悪いがそのまま耐えるんだな。」


「…ぞ……ぞんなぁぁぁ…………」



 そこへ、ルミナが外の空気を吸うためか、這いずりながら現れた。


「……ぢ……ぢぬぅぅぅぅ………」




 外の空気、とは言え、高波により船上は時折洗い流され、飲みたくもない海水をたらふく飲まされることとなっており、その度に嗚咽していたが。



「……こ……こんなことも……あろうかと………オエッ……!」



 打ち寄せられたルミナがぶつぶつ呟いたかと思うと、カバンから何かを取り出して口の中に入れ飲み込んだ。



 するとみるみる顔色が戻り、ムクっと起き上がった。



「わーっはっはっは!!こんな事もあろうかと、即効性の薬を前もって作っておいたのだー!!」


「…ほう?酔い止めの薬か。それならなぜ前もって飲んでおかなかったんだ?」


「このあたしの凄さを見せつけてやるためなのだー!!」


「…えー……俺にもその薬……ほじいッス……」


「ふふん。あげてもいいけどさ、5ヶ条の1つを無しにしてくれればあげてもいいけどー?ふっふーん。」


「…それだけは…まかり…ならん…!」


「…えぇぇ…ノエルぅ……いいじゃないッスかぁぁ……」


「例えばー、調合オッケー!とか?それか、船仕事無しー!とか?…もしくは…ぐふふ…ノックス様と添い寝オッケー!とか?…ぐふふ…」


「…全て却下だ。」


「んな!なんでぇ!!」


「おうルミナぁ!てめぇ元気になったんならさっさと仕事に戻りやがれ!!」


「んげ!?ド、ドレッド……こ、これには訳が……ぎにゃぁぁああああ!!!!」



 ドレッドがルミナの耳を引っ張って連れて行った。



 嵐を抜けた頃にはノエルもアインもノアも、そしてルミナまでもがボロ雑巾のようになっていた。



 さすがの船員たちも疲れ果てていたが、高波のせいで水浸しとなった船内の排水作業に追われていた。




「無事に乗り切ったようだな。」


「あれぐらいの嵐程度なら訳ねぇなぁ。嵐よりも凪になっちまったほうが大変だなぁ。」


「その時は俺が風魔術を行使するさ。」


「へへっ、そりゃありがてぇ。」


「はいはい!みなさん!休んでる暇はありませんよ!!」



 ひと段落ついていた船員たちに向けて、突如ミューレンが手をパンパンと叩いて注目を集めた。



「あともう一息でアステル島が見えてきます。皆さんも知っての通り、あの辺は小島が多く危険な海域です。羽を乾かしたらラルスとヒンドリーはより注意深く空偵察を!」


「「了解!!」」


 ラルスとヒンドリーとは鳥人族の2人である。



「もう着くのか?」


「今の座標からするとそろそろですね。」


「あの辺は小島の影響で海流を掴むのが難しい場所になってくるのう。ま、キャプテンはドーンと構えててくれや。」


「…いよいよ…か。」



 ノックスはまだ見えぬアステル島のほうを見やりつつ、来たるべき戦いに向けて決意を漲らせていた。

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