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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第12章 リームス
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セイレーン号

「ノックス様!」



 遠くから一部始終を見守っていたノエルとアインがノックスの元へ駆け寄ってきた。



「見ていたのか。」


「罠だと分かっている所へ、いくらノックス様と言えどもお一人で行かせる訳にもいきません。」


「にしても、あっさりとどっか行っちゃったッスね。」


「奴らの目的は果たした、という事だろう。」


「…何かされたのでしょうか?」


「その事は今はいい。とにかく…」



 会話を遮ったノックスは、クーロによって無惨に殺された遺体へと歩み寄り、念の為に『残存思念解読』を試みた。



 が、油断していたとは言え背後から一瞬のうちに殺されたようで、特に何かが分かったという訳でもなかった。




 その後、すぐさま王宮へと足を運び、事情を説明した。




 ガンベルが王へと取次ぎ、ノックスたちはその足で謁見室へと招かれた。



「此度の件に関しても、またもや貴殿らの活躍、誠に感謝している。……ありがとう……」



 国王が謝辞を述べると深々と頭を下げ、国王に続いて各部隊長、近衛兵全員が一斉に頭を下げた。



「犯人らを追跡できたのはノアのおかげです。」


「ミャウ!」


「なんと、その猫…?…であるか…?…とても優秀な猫のようであるな。面倒をかけるが、仔細を説明してはくれまいか?」



 ノックスの口から今回の誘拐事件の顛末を説明した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「…やはり教会の連中が絡んでおったのか…」


「陛下!!このまま黙ってるわけにはいきません!!」


「そうネ!目にもの見せてくれル!!」


「2人とも、そう息巻くな。結果的にそのリームスとやらは金を奪い取るわけでもなく帰ったのであろう?」


「ノックス殿に恐れを成して帰った、という事でしょうか?」



 ガンベルがノックスに問いただす。



「まだハッキリとは言えないが、奴らの目的は俺と会うためだった可能性が高い。リームスと初めて対面した時、奴の魔力がまとわりついてくるような感覚に陥った。断言はできんが、おそらく『鑑定』か何かかと。」


「なに!?か、『鑑定』…!!?」



 謁見室にどよめきが走る。



「そ、それでは、ノックス殿のステータスなどが教会の手に渡った、ということでしょうか…?」


「だろうな。」


「ハッ!!いくらノックスさんのステータスを覗き見ようが、桁違いの強さが改めて分かる程度じゃねぇか!」


「…確かニ……見られて困るようなことは無いネ。」


「…だけど、大軍で攻めてきたりしたらいくらノックスさんといえども…」


「んなもん俺たちだって強くなってるってんだ!!」


「そうネ!!いくら雑兵が来ようとも蹴散らしてくれル!!」


「鎮まれ!!陛下の御前であるぞ!!」



 皆が騒然としている中、ガンベルが声を張り上げた。



「特に心配する必要は無い。奴らには、今後、アステル島で拠点を作る、と伝えてある。」



 静まり返った室内にノックスの声が静かに響き渡る。


 が、ノックスの口から出た『アステル島』という言葉に、衛兵たちから動揺の声がひそひそと聞こえる。



「…火龍の住む島…か。」



 国王が難しい顔をしながらも呟いた。



「火龍に勝つ算段があるのか?」



 国王からの問いかけにノックスは真っ直ぐ見つめ返した。



「当然です。無ければわざわざそんな場所にはいきません。アステル島であれば、色々と地の利があるかと。それに、今はあそこはどこの国の領でもありません。」


「教会の連中がノックス殿の話を罠だと思う可能性は?」


「それはないでしょう。奴らは俺のステータスを見た。ということは、アステル島に行くという俺の発言は、奴らは信じるしかありません。」


「なぜそう言い切れるのだ?」


「ひけらかすつもりはありませんが、俺のレベルは2000を超えています。それに…」



 ノックスは少し迷いつつも、意を決した。



「…それに、俺は既に、地龍を倒していますから。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 誘拐事件がひと段落着き、いよいよ船の完成が間近となっていた。



 船を改めて見やると、日本で見た事のある帆船模型である。


 生前そういう帆船をテレビ等で見たことはあるものの実物は初めてである。



 全長約50メートル。マストが3本突き出しており、帆が纏められている。


 船首より船尾のほうが高く造られており、前世では所謂『ガレオン船』と呼ばれていた類の船である。



「…え?……こんな大きいのか……?」



 せいぜい20メートルほどのヨットを想定していたノックスは、あまりに巨大で見事な船に思わず息を呑んだ。



 想像以上の船に竦んでいたところへ、職人と思しきドワーフ族がノックスへと声をかけた。



「おう!!アンタがノックスさんか!!俺ァここの責任者のバーラントだ!!よろしくなぁ!!」


「…どうも、ノックスだ。しかし……ここまで立派な船とは……」


「ウチの職人どもが恩人のためだって張り切ってなあ!!ノックスさんが乗る船とだけあって細部までこだわって造っとる!!中を案内しよう!!」



 バーラントは豪快に笑いながらノックス達を船の中に案内した。



「ここァ船室だ!ノエルさんやアインさんらそれぞれ個室を作っておる!」


「ええ!個室ッスか!!スッゲー!!」


「他にも一応空き部屋は拵えとる!その辺はノックスさんらでテキトーに振り分けてくれ!!」


「わざわざ我々のための部屋を紹介したということはノックス様のお部屋も?」


「当然!!ノックスさんの部屋はこっちだ!!」



 バーラントが奥にある一際豪華な扉を開けた。



「ここがノックスさんの部屋だ!!」



 ノックス専用部屋はかなり広く、天井にはシャンデリアまでぶら下がっている。


 窓にはカーテンが掛けられ、そこから外の景色を一望することもできる。


 テーブルも椅子も豪華であり、細部にわたってディテールが施されていた。


 さらには床にはフカフカの絨毯まで敷かれている。



「…ス……スッゲー……めちゃくちゃ豪華ッス……」


「がははははは!!!!こんくらい当然さ!!」



 あまりの豪華さに多少の申し訳なさを感じるほどであった。



 その後、他の部屋を見て回る。



 階下にはダイニングやキッチン、風呂場まで用意されていた。



 他には海図室や作戦会議室など、様々な部屋を紹介される。



「甲板の下は?」


「あそこは水夫らの寝床だ!」


「水夫…ということはこの船を操縦してくれる者たちがいる、ということか?」


「がっはははは!!!!当たり前ぇよ!!さすがのノックスさんらでも、この船を操縦するとなると人手が足りねえだろう!!」


「それは良かった……てっきり操縦は自分たちでやれと言われるのかと。」


「いざとなりゃあノックスさんの魔法でどうとでもなるかもしれねぇがな!!船員も航海士も若ぇ奴らだが気合いは入っとる!!安心してくれ!!」


「分かった。助かる。」


「あとはこの船の名前だな!!ノックスさん、名付けてやっとくれ!!」


「え?…な、名前……か………」



 ノックスは暫くアゴに手を添え、船を眺めつつ考えた。



 そして




「よし。船の名前は『セイレーン号』だ。」

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