火急の知らせ
「しつこいようですけど、今一度確認です。今回の目的をちゃあんと理解出来てますかねぇ?」
「当然至極。」
「承知しております。」
「こ、ここ、こんな精鋭ぶぶぶ部隊に僕なんて呼んでいただだだき!あ!ありがとございますぅぅ!!」
「そう固くならずとも良いのですよ。貴方の実力についてはこの私が一番評価してますからね。」
「そそそ、それは!あああ、ありがとございますぅ!!」
「リームス様、本当によろしいのですね?危険と判断したら直ぐに撤退してもよいというのは。」
「当然ですよ。相手は仮にも12使徒でもあるズーグを屠ったほどの者ですから。そんな相手に無謀にも戦えなどと言うほど、私は愚かではありませんよ。」
「畏まりました。」
「…それでは、あとは計画通りに事を運びましょうか……ふふ……」
「唯唯諾諾。」
「了解しました。」
「が、がが、頑張りますぅ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…はぁ……はぁ……ノ…ノックス様……もうちょっと手加減して…ほしいッス……」
ノックスは王国の外でノエル、アイン、ノアの訓練をしていた。
2人と1匹の共闘はノックスにとってもいい訓練となるため、3日に1回程度の割合でこうして訓練していた。
「ふぅ。今日はここまでにするか。」
ノックスはそう呟きながら皆に回復を施す。
「ノックス様、いかがでしたでしょうか?」
回復したノエルが反省点などをノックスに確認する。
「そうだな…攻撃の繰り出しについては問題ない。仕掛けるタイミングも完璧だ。きちんと戦闘の流れを俯瞰で捉えているようだな。」
「ありがとうございます。」
「あと足りないといえば『意外性』だな。」
「『意外性』…でしょうか…?」
「ああ。お前は型に囚われすぎている節がある。それは相手に攻撃を読まれやすい。」
「な、なるほど…!!流石はノックス様です!!ありがとうございます!!」
「アインは要所要所に魔法を撃ち込むのにかなり長けてきたな。」
「あ、ありがとッス!」
「が、如何せん燃費が悪い。もう少し魔力消費を抑え、長期戦でも戦えるよう魔力の消費を絞るようにするといい。」
「ま、魔力消費を…ッスか……了解ッス。」
「ノアは今のところ特に問題ない。好きなように暴れたほうが、ノエルもアインも合わせやすいだろう。」
「ミャー!!」
「それじゃあそろそろ帰るとしようか。」
「今日は焼き肉がいいッス!!」
「アイン、それは3日前も食べただろう…」
「ノアちゃんも焼き肉のがいいよねー?」
「ミャウ!!」
「ほら!ノエルは無しでもいいんッスかー?」
「無しでいいとは言ってない!…ノックス様、いかが致しましょうか?」
「なら焼き肉にするか。」
「やったーー!!!!」
「ミャーーー!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
今日は王城での合同訓練会のため城へと足を運ぶ。
ただ、ノックスだけはノエルたちを訓練会へ行かせた後、ガンベルと話をしていた。
教会からの接触が無いかどうかの確認のためである。
「ノックス殿ほどの力の前に恐れを為したのでしょう。」
とガンベルは言うものの、どうにも気がかりであった。
「それにしても、ノックス殿のおかげで我が王国兵たちの練度が凄まじく上昇しております。」
訓練を見やりつつガンベルが言う。
「まして、竜人族と鳥人族が互いに連携力を鍛えるなどと、誰が想像出来ましたでしょうか。」
「過去の因縁を忘れろなどと無茶を言ったが、踏み入ってしまえばなんと言うこともないものだ。」
「えぇ。彼らもこの国を護るという誇りはあったということでしょう。そういえば…あの話は本当なのでしょうか…?」
唐突にガンベルが問いかけた。
「『あの話』とは?」
「船が完成次第、アステル島に行く、という件です。」
「ああ、それか。本当だ。」
「…ご存知とは思いますが…あそこは火龍の住処。いくらノックス殿がお強いと言えども、火龍を相手にするのは些か危険かと思いますが…」
「それについては問題ない。俺たちがこの先教会を相手にするには羽を休める場所がいる。火龍とて元はエトワールを滅ぼして奪った土地。
それに、案外、話せば分かってくれるかもしれないぞ?」
「ハッハッハッ!ノックス殿、冗談が過ぎますぞ!……じ、冗談…ですよね…?」
表情を崩さないノックスに、ガンベルが不安になる。
「…冗談だ。」
そんな話をしていた最中、1人の兵隊が部屋を訪れた。
「失礼します、ガンベル様!!陛下より火急の知らせがございます!!至急、作戦会議室へとお越し下さい!!」