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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第11章 アステル島へ向けて
136/322

1センチ

「こっからが本番ッスよ!!」


 アインが、自分とノエル、ノアにパワーとスピードの上昇効果(バフ)を掛けた。



 早速攻撃を仕掛けたノエルとノアに、先程よりも格段にスピードにキレが増す。


 この短時間でノエルとノアの連携攻撃に磨きが掛かっていた。


 スキをついての反撃も許さぬほどに。


 両者から繰り出される攻撃に対応するノックスだったが、手数の多さを嫌ってか一旦距離を置く。



 そこへ待ってましたと言わんばかりの巨大な爆炎が巻き起こる。


 アインによる火魔術だ。


 が、それで仕留められるとは毛頭考えておらず、爆炎が巻き起こる一瞬のうちに神速で移動する物体を捕捉する。


 ノアが急速に間合いを詰め、ノックスの行く手を阻む。


 ノアとて真正面からやり合ってノックスに勝てるなど微塵も考えていない。


 ノックスに考えるヒマを与えない。


 遅れてアインから氷柱が射出される。


 ノアの動きを完全に読み、スキのある部分や攻撃の合間。それらを完全に補う形でアインがサポートする。


 さらにそこへ、先程と同じく大地が揺れる。


 先と大きく違うのは、ノアがすでに攻撃の為に飛びかかっており、地に足が着いておらずに体勢を崩されていないことだ。


 ぐらりと足元を取られたノックスは多少ではあるのの重心がぐらつく。




 目の前のノアを捌き、気配を殺して頭上から迫っているノエルを相手取るか?


 もしくは、一旦冷静に距離を取るか?




 ノックスの頭に一瞬の迷いが生じる。



 そんな0.1秒にも満たない間にアインがノックスを取り囲むようにぐるりと魔障壁を展開させた。


「逃がさないッスよ!!」


「ここで!!」


「ミャウ!!!!」


 真正面からノア。真上にはノエル。


 どちらかを相手にすれば、もう片方の攻撃を受ける。


 距離を取る為にはこの魔障壁を破らねばならず、そうしている内にノエルとノアの攻撃を受ける。



 加速する思考を巡らしつつ、ノックスはニヤリと笑った。




 ノックスは目の前から迫っているノアに対してさらに踏み込みつつ鞘を下から首筋へと叩き込む。


 下から払い除ける形でノアを攻撃した後、頭上のノエルを見上げ、振り落とされる双剣を受け止めるべく、刀を抜いて受け止めた。



 ほんの一瞬の出来事であった。



「こ、これでもダメなんッスか……」


 またも空振りに終わってしまったことにアインが嘆く。


 展開されていた魔障壁が解除され、ノエルも少し肩を落としていた。


 ノックスがカウンターを受け失神していたノアを治療する。


 治療を施されたノアが目を覚ますも、同じく肩を落としていた。



「ダメなことは無い。合格だ。」


「真剣を使わないって言ってたのに抜いたからッスか?」


「あれはそうしなければ直撃を免れなかったからだ。」


「…ですが、結局傷一つ付けられずで……ノックス様のご期待に応えられず……」


「見ろ。」



 ノックスが自身の右腕を見せつける。


 そこには1センチ程度の赤い線があり、血が少し伝っていた。



「ノエルの最後の攻撃を受け止めた時に出来た傷だ。」


「……え……?……ほ、ほんとに……」


「……!!!!」


「ミャウ…!」


「……やった……やった……!!……やったーーー!!!!」



 その瞬間、ギャラリーからも歓声が巻き起こる。



「お前たちの連携は完成されていた。特に最後の攻撃。あれは良かった。」


「ありがとう…ございます…!!」


「やったーー!!!!やったんッスよー!!!!俺!俺たち!!」


「ミャウ!!!!」


「特にノア。初めての2人との連携にも関わらず、自分の能力を把握し、『勝つ』ために役目を果たす。その動きは見事だった。」


「ミ…ミャウゥゥ……」


 褒められたノアは嬉しそうに照れていた。




 与えられた傷はたかが1センチ。


 真剣を使わず、魔法も不使用。


 3対1という数的有利。



 されども、この1センチの傷には価値がある。



 手の届かないほどの強さを誇るノックスを追い詰めた2人と1匹は、ご褒美のことなど忘れて周りの目もくれずに喜んでいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 合同訓練を終えたノックスたちは、衛兵たちに連れられ飲み屋へと赴いていた。



 とは言え全員では入り切らず、各部隊長が優先され、その他はくじ引きで決めたようだ。



「グルーガの言うように、ホントこの人にケンカ売るなんざぁ教会の連中もバカとしか言えねぇなぁ!!」


「今じゃこの人“たち”だヨ。さっきの戦い、あんな凄いの見た事なイ。」


「俺だってあんなのは初めてだ…改めて自分が如何に『井の中の蛙』だったか思い知らされたよ。」


「それで、何か感じ取れたものはあったか?」


「あぁ。ノエルさんにアインさん、それにノアだったか。あいつらの戦いぶりを見て思い知ったぜ…俺たちの連携はまだまだだってなぁ。」


「世の中にあんな戦い方があるなんて、驚きと同時にワクワクするネ。」


「あぁ!俺らも負けてらんねぇ!!この歳になってあんなワクワクするような戦い方があるなんざ知らなかった!!」


「…それに、いつも冷静に澄ました顔をしてるかと思いきや、いざと言う時の真剣な表情のノエルさン………」



 メローネは思い出しては顔を赤面させ、ウットリとノエルのほうを見やった。



「アァン…?メローネ…てめぇまさか…?」


「うるさいネ!あたいだってまだ乙女だヨ!」


「…お…おと…め……」



 席を見ると、ノエルの席には女性が多い。


 反面、アインの席には男性が多い。


 ノックスの席には各部隊長。


 ノアは女性にたくさん可愛がられていた。

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