ノックスv.sノエル&アイン&ノア
「うわぁ……すっげぇギャラリーいるぅ……」
訓練場には入り切らないほどたくさんの衛兵が押し寄せていた。
「2人とも、本気で来い。ノアもだ。」
「手加減してくださいッスよ……」
「いや、手加減はしない。」
「えぇー!!?」
「その代わり真剣と魔法は使わん。」
「畏まりました。いいな?アイン、ノア?」
「ミャウ!」
「り、了解ッス…」
「俺に傷一つでも付けられればお前たちの勝ちだ。」
「てことは俺たちが勝ったらご褒美ッスか!?」
「当然だ。」
「やったーー!!!!」
「浮かれるなよアイン。相手は他の誰でもない、ノックス様だ。」
「トーゼンッス!!ノアちゃんも頑張るッス!!」
「………ミャウ。」
浮かれ気味のアインに冷ややかな目をしつつノアが返事をした。
互いに距離を取り相手を見やる。
すでにノエルもアインも真剣を抜いて臨戦態勢に入っていた。
「ノア。俺と共にゆくぞ。アインに背中を預けろ。」
「……ミャ………」
「不安そうだな。アインが信じられんか?」
「ひ、ひどいッス!ノアちゃん、信じて!」
「大丈夫だノア。アインを信じろ。やる時はやる奴だ。特にご褒美が掛かった時はな。」
「絶対勝つッスよー!!」
「……ミャウ!」
「アイン、ノアの動きは頭に入ってるな?」
「トーゼンッス!!」
「ならばノア。俺たちに遠慮せずガンガンいけ。時には利用しろ。」
「ミャウ!!」
「では……ゆくぞ!!」
ノエルとノアが猛スピードでノックス目掛けて走り寄る。
それと同時にアインは別方向へとすでに駆け出していた。
手始めにノアが前足でノックスに斬り掛かる。
ノックスはひょいと避けた所へ、ノエルが絶妙なタイミングで斬りこんできた。
ノックスは地を蹴り剣戟を躱す。
ノエルとて避けられることは織り込み済み。
体を捻りつつ逆手に持った剣をノックス目掛けて串刺しに掛かる。
キィィイイイイイン!!!!という金属のかち合う音がしたのと同時に、ノックスは空中へと身を投げ出していた。
自身の鞘をノエルの剣に当て、受け流しつつ上空へと跳んだのだ。
「轟けぇぇえええ!!!!」
アインが空中にいるノックス目掛け雷魔術を解き放つ。
刹那、激しい轟音が鳴り響き、雷撃と共に激しい稲光を発生させた。
だがすでにノックスはそこにはおらず、雷撃と入れ違いとなる形でアインに向かって駆け寄り始めていた。
が、そこへ横から気配を殺していたノアが飛びかかる。
感知スキルで捉えていたノックスは、突如としてスピードを緩め、飛びかかってくるノアの死角から首根っこを鷲掴みにした。
そしてそのままノアをアインへと投げつけた。
「ノ、ノアちゃ…!!」
思わぬ攻撃に動揺したアインだったが、ノアはアインとぶつかる手前で体を捻り、アインの体を踏み台にしてさらにノックスへと飛びかかった。
その反動でアインは後方へと飛ばされたのだが。
飛びかかってくるノアとは逆側からノエルも剣戟を放つ。
が、どの剣戟も躱され、あるいは鞘にて受け止められる。
ノエルとノアの激しい攻撃にも関わらず、ノックスは涼しい顔をしていた。
「…痛ってぇぇ……ノアちゃんめ……なかなかやるッスね。俺も負けてらんないッスよ!!」
起き上がりつつアインが呟く。
「揺らせ!!!!」
アインが地魔術を行使し、ノックスの足元を激しく揺らした。
いきなりの地魔術にバランスを失い掛けたノエルとノア。
ノックスもややバランスを失い掛けていたが、2人よりも早く立ち直し、まずはノエルにと蹴りを見舞う。
咄嗟にガードしたとはいえ相応の威力で蹴られたノエルは顔を顰めつつ後方へと退く。
入れ替わるようにそこへアインがナイフで斬りかかり、先程まで揺れていた大地からは次々とトゲが現れ、ノックスへと襲いかかる。
「なるほど。普通の地魔術では感知され避けられる。だから二重に別の地魔術を放ったのか。」
アインが無詠唱とはいえ、魔力感知スキルの高いノックスからすれば、どこに魔法が飛んでくるかがある程度分かってしまう。
なのでアインはまず地魔術で足元を揺らすことで、大地に流れてくる自分の魔力はこの地震のためだと錯覚させる。
が、それは迷彩。
地震はこのトゲによる地魔術を感知させないためであった。
本来ならここで相手を仕留めれるはずだったのだが、相手はあのノックス。
迷彩を見抜かれたアインが少し残念がった所へ容赦なく鞘の先端が腹に食い込む。
「うっ!!」と呻いた時にはすでにノックスの蹴りが自身の顔面に迫っていた。
そうはさせまいとノエルとノアが、大地から突き出るトゲに傷を負いながらも両サイドから攻め立てる。
急遽ノックスはアインを蹴るのを止め、軌道を変えてアインの頭上にわざと蹴りを空振りさせた。
そしてその回転を活かしたまま、両サイドの攻撃を鞘で弾いた。
弾かれ体勢を崩したノエルとノア。
ノックスは地を蹴りノエルの元へと一瞬で詰め寄り、胸ぐらを掴んで背負い投げの要領でノア目掛けて投げ飛ばした。
さすがのノアも体勢を取り戻すのに間に合わず、そのままノエルにぶつかり吹き飛ばされた。
「面白い攻撃方法だったな。それで、これで終わりか?」
涼しそうな顔でノックスが2人と1匹を見やる。
「…さすがはノックス様です……やはり一筋縄ではいかない……」
「くぅぅ、今の避けるとか、いや、避けるだけじゃなく反撃するとかヤバすぎるッスよぉ……」
「ミャウ……」
「危うくかすり傷を負うところだったぞ。」
「結果かすり傷負わせられてないんじゃ意味ないッス!」
「どうする?終いにするか?」
「まだまだやるッスよ!!ノエル、ノアちゃんもいけるッスよね!!」
「当然だ。」
「ミャウ!!」
ノエル、アイン、ノアは体を起こし、第2回戦へと突入した。
そしてここまでの戦いを見ていた衛兵たちは、当初口をあんぐりさせていたが、次第に真剣な眼差しで食い入るように見つめていた。