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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第11章 アステル島へ向けて
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アクセサリー店メーラ

 ノックスたちは昼食を済ませた後、ジェルゾに紹介された彫金師、『アクセサリー店メーラ』へと訪れた。



 店内には指輪にネックレス、ブレスレットにアームレットなど、様々な種類のアクセサリーが販売されており、どれもこれも見事なディテールが彫り込まれていた。




「いらっしゃいませー♪」


 ノックスたちを見つけた店員が陽気な声で声を掛けた。

 が、改めてノックスたちを見て「あっ」という顔をしたかと思うと駆け足で店奥へと駆け出して行った。



 やがてドタドタと慌ただしく店奥から鳥人族の女が現れた。



「おおおおおおお待ちしておりましターーーー!!!!」



 女は頭から滑り込みながらノックスの前で土下座していた。



「……は?」


「あああ、あの、あの、あああ、姉がお世話ニィィィ…!!」


「……?………まさかメローネ殿の妹か?」


「はいぃぃ!!そそそその説は……」


「そんな事はいい。というか……それを止めて普通にしてくれ……」



 この騒ぎのせいで、店内にいた他の客の注目を集めてしまっていた。




 落ち着き払った所で、この妹から話を聞いた。


 というよりも、一方的に聞かせられた。




 自分はこの店の2代目店主であること。


 名前はリモーネで、メーラというのは母親の名であること。


 自分は戦闘よりも母親譲りの手先の器用さで彫金師になったこと。


 ヤンチャな性格の姉は昔から問題行動を繰り返し、そのせいで両親から勘当され、王国兵となってからもずっと連絡を絶っていたこと。


 だが自分とだけは隠れて連絡を取り合っていたこと。


 同期の竜人族シリュウがムカつくこと。




 防衛戦終結後、危篤の知らせを受け、急いで駆けつけてみるとピンピンしており肩透かしを食らったこと。


 聞いてみると、ノックスが治療し助けてくれたこと。


 それだけでなく、突如上空に現れた大岩を砕き、惨劇を回避したのはノックスのおかげだったということ。


 あれだけ忌み嫌ってたシリュウと今では共に訓練していること。




 話を切るタイミングすら受け付けない勢いでリモーネはノックスたちに聞かせていた。



「……という具合だったんでスー!!それにウチらの両親もなんやかんや言いながらモ…」


「リモーネ殿、もうわかった。」


「へっ!?で、でモ……」


「今日はその話を聞きに来た訳じゃない。アクセサリーを購入しに来ただけだ。」


「…へっ!?…ア、アクセサリーを…!?うちでカ!?」


「ジェルゾ殿の紹介でな。これらの宝石をアクセサリーに取り付けてほしいだけだ。」


「…そ、そりゃ済まなかったネ……早とちりしちゃっテ…!じゃあその宝石を見せてもらってもいイ?

 その間、店にある装飾具でも見ててくレ。」



 リモーネに宝石を渡し、さっそく大きさや重さを測っていた。



 ノックスたちは店内に飾られてある色んなアクセサリーを見て回る。



 大きさの問題もある以上、ノックスとノエルはブレスレット、アインはアームレットが順当だろう、ということで、その辺りのアクセサリーを吟味する。



 ノックスは当初、控え目なアクセサリーを選んでいたが、ノックスが選んだアクセサリーを見てからノエルとアインが選んでいるのに気がつく。



 おそらくは自分より高価なアクセサリーを買わないように配慮してのことだろう、と推察した。



 仕方なくノックスは2人が遠慮しないよう、とりわけ高価なプラチナ製のブレスレットにした。


 装飾に小さな宝石が(ちりば)められている。


 下降効果(デバフ)のある付与宝石(エンチャントジュエル)を飾りつけるには勿体なすぎるほどではあるが。



 ノックスが高額のアクセサリーを選んだのを見て2人も違うアクセサリーに交換しているのを見て少し微笑んでいた。




 その後、シャロンに与えるための指輪も吟味する。


 指のサイズが分からないためフリーサイズの指輪にしておいた。




 選んだアクセサリーを再度リモーネの所へと持っていく。



「それで、どのアクセサリーにどの宝石を付ければいいのかナ?」


「このプラチナ製のブレスレットには大きいほうのルビー、シルバーのブレスレットにもう1つのルビー。アームレットにはペリドット。指輪にはダイヤで頼む。」


「了解だヨ!超特急で仕上げるけど、1時間は見といてくれるかナ?」


「ああ。それとここに時計はあるか?」


「時計?それなら2階にあるヨ。」


「わかった。近くにはいるから時間になれば取りに来るのでよろしく頼む。」


「了解!!超特急で仕上げるヨ!!」





 2階へと続く階段を登ると、秒針を刻む時計の音がいくつも重なり、次第に大きくなる。



 大きな柱時計や壁掛け時計、卓上タイプの時計など、大小様々な時計が時を刻んでいた。



「…いらっしゃい……何にしやしょう…?」



 (しゃが)れた声に白い髭をたっぷりと蓄えた老齢の鳥人族の男が応対する。



「ノエル、どんな時計がいい?」


「ノックス様、ありがとうございます。所望致しますのは、小さく持ち運びのできる時計であらば、と。」


「…畏まりました……では、懐中時計などいかがでしょう…?」


「ちょうど良いかと思います。いくつか品を拝見させていただいても?」


「…少々…お待ちくだされ……」



 頼りない足取りで老人が奥へと歩いていく。



 ノックスはその間に並べられている時計を眺めていた。



「ノックス様、ありがとうございます。」



 不意に背後からノエルが声をかける。



「礼はいい。というよりお前たちは俺に遠慮しすぎだ。さっきのアクセサリー選びの時もそうだ。」


「だ、だってノックス様より高額なの身につけるのはなんか申し訳ないじゃないッスか…」


「左様です。下僕が主より良い物を身につけるなど不敬でございます。」


「俺は気にせん。」


「そういう訳にもいきません。」


「全く…頑固者だな。」


「ご配慮、ありがとうございます。」


「まあいい。…しかしながら何故時計を所望したか聞いてもいいか?」


「構いません。職務を完璧に遂行するためには必然かと思い所望いたしました。有事に関わらず、何か決まり事がある際に時刻が分からず遅刻する事がないように、と。」


「ノエルはそこんとこ、ホント真面目ッスね〜…」


「さらに、時計があれば時間をもっと有効的に活用出来るかと思い、それも理由の一つでございます。」


「なるほどな。」



 そんな話をしていると、お盆の上に懐中時計を3つ載せ、頼りない足取りで老人が現れた。



「…こちらでございます……」



 3つ全てハンターケースと呼ばれ、蓋が付いており二枚貝のように開くタイプのものであった。



 1つは装飾が施されているものの地味目な時計。


 もう1つは他のより一回りサイズの大きい時計。


 3つ目は装飾がかなり施され、高級感漂う時計。



 ノエルはそれら3つを見比べていたが、どうも3つ目に関しては除外しているようだった。


 サイズの違いについて尋ねていたが、大きいサイズのものは中に魔石が内蔵されており、それがさながら電池の役割を果たすようである。


 残りの2つはどれもゼンマイを巻く手巻き式で、2、3日に1度は巻く必要があるそうだ。



 その説明を聞いたところで、ノエルは1つ目の懐中時計に決めた。



 時計を買い付け、1階に戻って一段落していると、アクセサリーも出来上がった。



 金を支払い礼を言うと、逆にリモーネから感謝された。




 さっそく3人はそれぞれのアクセサリーを身につけ、ノエルは懐中時計を内ポケットにしまい込んだ。



「ノックス様、ありがとうございます。」


「ありがとッスー!!」


「礼を言われるほどじゃない。時計はそれで良かったのか?」


「はい。ノックス様より頂戴したこの時計、後生大事にさせていただきます。」


「それなら良かった。」


「はいはーーい!!ノックス様!!次、俺の番ッスよ!!」


「分かっている。『リリスの花園』だっけか?」


「そうッス!」


「何を買うか楽しみだな。」


「ちょっ…!ヤダなぁノックス様ぁ!!『買う』だなんて……!デュフ…」


 アインは分かりやすく鼻の下を伸ばしたが、そもそもそんな店では無い。


「今から行っても開いてるのか?」


「むしろ夜から開いてるッス!!」


「なるほどな…ならこのまま向かうとするか。」


「ひゃっほーーー!!!!楽しみッスーー!!!!」



 浮かれるアインを他所に、ノアはアインに軽蔑の視線を向けていた。

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