ノックスv.sスケルトン 1
着いた場所は鬱蒼とした林の中。
地面が少し湿っている。
雨が降った訳ではなく、この場所が湿地帯のようである。
その場所のせいなのか、気温で言うと夏に当たる季節であるにも関わらず、薄ら寒くも感じた。
ゴロゴロと周りに岩が乱立しており、その陰から禍々しい気配を放つ得体の知れないものの様子を見やる。
まだ距離があるためはっきりとは分からない。
だがどうも他のモンスターとは一線を画す輪郭であるように見える。
人型なのだ。
まさかこんな場所に俺以外に人がいるのか?
そう思いさらに距離を詰めて窺う。
近づくにつれて正体が見えてくる。
骸骨だ。
骸骨が数体、鎧を身につけ剣や盾を装備している。
装備の隙間から見える本体や顔は、完全に白骨化してしまっている。
「…スケルトンか…」
おそらくは生前にここに落ち、あるいは落とされ、非業の死を遂げてしまった者たちであるが、怨念なのか、はたまた魔力により動いているのか。奴らからは瘴気のようなものが見える。
「…俺が転生しなければ、この体もああなっていたのかもしれんな…」
意を決し、スケルトンの前へと足を運ぶ。
スケルトン達はノックスの気配を感じ取り、戦闘態勢に入る。
そして、骨とは思えないほどの速度で2体のスケルトンがノックスへと駆け寄る。
ノックスが構え、応戦しようとした刹那、大地から無数のトゲが突き出し、咄嗟に避けたもののノックスの脇腹を掠めた。
そこへ2体のスケルトンが左右から攻撃を見舞う。
ノックスは片方のスケルトンの攻撃をギリギリのところで躱しつつ、もう片方のスケルトンを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたスケルトンは岩に打ち付けられ、ガシャァァン!という音ともにバラバラに砕けた。
すぐさまもう片方のスケルトンへと対峙し、攻撃を仕掛ける。
が、頭上に気配がもう1つ。
巨大な斧を持ったスケルトンがノックスの脳天を斧で叩き切ろうかと迫っていた。
「…くっ……!!」
ズドンと振り下ろされた斧をすんでのところで躱し、大地を割った。
ノックスにとって想定外だったのは、スケルトンが魔法を行使したことだ。
最初のスケルトン2体が迫り来る際に、後方で控えていたスケルトンが地魔法を仕掛けてきたのだ。
だがノックスの想定外だったことはもう1つある。
蹴り飛ばしてバラバラになったスケルトンが、カタカタと揺れ動き、復活した。
復活したスケルトンはノックスにカタカタと笑いかけているかのようだ。
その後もスケルトンからの攻撃が続く。
2体のスケルトンがそのすばやさを利用し撹乱する。
合間を縫っては魔法が飛んでくる。
その対応に追われている間に斧スケルトンが致命傷を与えるべく頭上から迫る。
魔法を行使しているスケルトンを見やると、その手前に2体のスケルトンが腕を組んでこちらの戦闘を傍観している。
舐めプされていることに腹を立てたが、もしあの2体も戦闘に介入してくることがあればかなりマズイ。
いや、今の時点でも翻弄されているのだが。
とにかくこの状況を打破すべく、スケルトンに火魔術を放つ。
前世でのRPGならば、こういったアンデッド系には火魔術が有効であったからだ。
すばやいスケルトンの内一体に火魔術が当たり、火に包まれた。
だがスケルトンは火に包まれつつも攻撃を断続する。
火力を上げるべく魔力を集中させるも、スケルトンはまったく意にも介さない。
どうやらコイツらには火魔術は効かないらしい。
いや、火力をさらに高めれば灰にすることも出来るだろうが、奴らは瘴気のようなものにより、鉄をも溶かした温度でも平然としている。
さらにそこから火力を上げようものなら、MPは確実に枯渇する。
ノックスは一旦火魔術を解除し、刀での戦闘へと切り替えた。