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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第11章 アステル島へ向けて
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ルミナ魔道具店

 ノックスたちはその後、その足でオーウェンから紹介された『ルミナ魔道具店』を目指した。



 いきなり大金を所有したことにアインは最初こそ浮かれていたものの、誰かに盗まれないかと無駄に警戒していた。



「何をしているアイン?」


「何って警戒ッスよ!2人とも無防備すぎるッスよ!特にノックス様、ベヒーモスホーンなんてヤバい代物持ってるんッスから盗賊とかに狙われたら…」


「そのような不届き者、ノックス様の手を煩わせるまでもなくこの俺がすぐに斬り殺してくれる。」


「落ち着け。俺に不意打ちなど通用しないことはノエル、お前が1番理解しているだろう。」


「…まだ覚えてらしたんですか。忘れてください。」



 まだロンメア王国にいた頃、最初にスラムでノエルがノックスに不意打ちを与え損ねたことである。



「えぇ!?ノックス様を殺そうとしたんッスか!?…それでよく命が…」


「お前たち、誤解している。俺は誰でも彼でも殺すわけじゃない。」


「…忘れてください……あの時の私は井の中の蛙でした。」


「それにしてもアイン。あまり警戒しても仕方ない。逆にそんな大事そうにカバンを持って警戒しているほうが賊に狙われるぞ。」


「それもそうッスけど…なんか落ち着かないッス…」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 賑わいのある商店街から少し外れた閑静な場所に、なぜか1軒だけ隣接している建物が無く、孤立した店がポツンとあった。



 そこにはどこか不安になるようなたどたどしい文字で『ルミナ魔道具店』と書かれた看板が立てられていた。



 店の玄関らしき場所にはカラスやカエルが逆さ吊りで干され、それ以上に建物には継ぎ接ぎがある。



「…ほ、…本当にここなんでしょうか…?」



 建物の景観を見たノエルが不安そうに尋ねた。



「ここは……中々の店ッスね……」



 魔道職のアインですら少々面食らっている。



 ロンメアにあった『魔道具店ジェスター』で多少免疫がついていたノックスも、少々不安を感じずにはいられなかった。



 普段ならノックスのゆく所にどこでも着いて行くノアだったが、この時は頑として着いてくる事はなく、少し離れたところで待機していた。



 意を決して店の付近に近寄ると、その店の異様さに改めて気づく。




 臭いのだ。




 硫黄のような、腐乱した卵のような臭いが鼻につく。



 よく見ると雑草ですらその店の周りには生えていない。




「ふむ…これは中々に…中々だな……」



 店のドアを開けると、立て付けが悪いせいかギィィィ…と軋む。



 店の中はさらに悪臭が立ち込めていた。



「うっ…!!」



 ノエルもアインも堪らず顔を顰め鼻を塞いだ。



「失礼。店の者はいるか?付与宝石(エンチャントジュエル)の鑑定をお願いしたいのだが。」



 ノックスが声をかけても応答がない。



「……これ……もしかすると……中で誰か死んでるんじゃないッスか……?」



 アインが鼻を押えながらノックスに話す。



 ノックスもその可能性に思い当たり、店内の奥へと進んでいく。



 何冊も重ねられた本が床に所狭しと置かれており、ほとんど足の踏み場もない。



 店内はまだ昼間だというのに明かりもなく薄暗い。



 棚に置かれている瓶にはホルマリン漬けにされている目玉やねずみ、ヘビにトカゲ。



 それらがより一層不気味さを醸し出す。



 棚には他に鉢植えもあったが、花が萎れ掛かっている。



 時折、踏み抜けそうな床が音を立てて(たわ)む。




 悪臭に耐えつつも、辺りを注意しながら奥へと進む。




 臭いがさらに強くなり、扉が見えてくる。




 おそらくは、その奥に悪臭の原因があるのであろう。




 ノエルもアインも額に汗が滲んでいる。




 ノックスが2人の顔を見て、無言で頷く。




 2人も応じるかの如く、無言で頷く。




 意を決して扉を開けた。





 そこにあったのは巨大な鍋。



 緑のような紫のような色をした液体がグツグツと煮えたぎり、時折、赤や水色のような色が混ざり合い、マーブル模様を織り成している。



 そして、その傍らに、1人の女が白目を剥いて泡を吹き、ひっくり返ったカエルのように倒れていた。



「ひ、ひえぇぇ!!!!し、し、しんでる!!!!」



 アインは堪らずに叫んだ。



「悪臭の原因はコレか。さて、どうしたものか。」


「ノ、ノッグズ様…!!すびばぜんが…我らは……!!」


「…もう…無理ッズ……!!」



 ノエルとアインは堪えきれずに部屋を立ち去り、大慌てで店の外へと出て行った。



 外に出た2人は新鮮な外の空気をこれほどまでに美味しいと感じたことは初めてである。



「仕方ないな。しかし少しばかり換気させるか。」



 部屋に残されたノックスは風魔術を行使し、悪臭を店の外へと追い出した。



 その先には、涙を浮かべて安堵していたノエルとアインに再度『悪臭』という悲劇が襲いかかるのだが。




 ノックスが(あっ)と思ったのも束の間、遠くから2人の悲鳴が聞こえてきた。





 やがて、店からノックスが女を抱えて出てきた時には、ノエルとアインは真っ青な顔で道の脇に座り込んでいた。



「悪かったな。先に言ってやれば良かった。」


「……いえ……お気に…なさらず……」


「……ノックスざま……ひどい……ッス……グス……」



 ノックスは抱えてきた女を2人の横に寝かせ、魔術を行使した。



「解毒せよ。」



 ノエルとアインの顔色にみるみる生気が宿り、女の顔色も戻り始めた。

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