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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第11章 アステル島へ向けて
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付与宝石

 翌日。


 早速ウィンディア王国へと帰るべくノックスたちは朝からクレイのダンジョンを後にする。



 宿を出たノックスたちの元へ住民たちが押し寄せてくる事を懸念して、かなり早朝から出ることにした。



 その際、宿泊代を多めに支払おうとしたが断られた。


「もしまた来ることがあるんなら、そん時はまたウチに来な!」


 と威勢よく送り出してくれた。




 早朝から宿を出たことすら露知らず、後々ノックスたちがすでに出た宿へと商人たちが押し寄せて来たのだが。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 帰りの道中、心無しか足取りは軽い。


 特にそれはアインに顕著だった。



「そういえばダンジョンで拾ったこの宝石類、何かしらのアビリティを持つと言う話だったな。」


付与宝石(エンチャントジュエル)、ですね。左様です。ダンジョンの濃い魔素の影響により、特殊なアビリティを所有するらしいです。」


「どうやって調べるんだ?」


「魔道具店の中にはそういった物を鑑定するための鑑定用魔法陣があるんッスよ。」


「ほう…」


「あまり実践向きでないアビリティがほとんどです。『HPやMP、スタミナを0.01%上昇させる』と言った具合です。」


「ま、そういうのはあまり魔素が濃くない、低難度のダンジョンでの宝石類ッスね。今回はその点、かなり魔素が濃かったんでもしかするともしかするッスね!」


「そもそも、なぜ宝石類を持ち込んでダンジョンに?」


「冒険者は基本、その日暮らしだからでしょう。金目の物をどこかに置いたままにするより、身に付けたりするのがほとんどですから。」


「なるほどな。宝石ならばどんな宝石でも可能なのか?」


「宝石の種類によっては強いアビリティを持つこともあるらしいッスね。同じ場所にあるルビーとダイヤなら、ダイヤのほうが格段に良いアビリティになるって話だったッス。」


「法則性は?」


「うーん…その辺はどうなんッスかね。あんま考えた事ないッス。」


「人工的にアビリティを付与させようとお考えで?」


「無理なのか?」


「それを作ろうと研究者たちが試行錯誤していたようですが、不可能と判断されたのです。」


「なぜだ?」


「一説によると、宝石に浴びせる魔素は一定量を保ちつつ、時間をかけないとダメらしいッスね。人力ではいくらノックス様でも無理ッス。」


「それに、高濃度の魔素を一気に浴びせると宝石が割れたりするそうです。」


「なるほどな…」


「もしかしてホントに人工的に付与宝石でも作る気だったんッスか?」


「…もしもの話だ。自分たちにしかクリア出来ないような高濃度のダンジョンにわざと宝石を持ち込んで熟成させ、付与が付いたら売る、という商売でも成り立つのかと思ってな。」


「んー、ノックス様には申し訳ないッスけど、あまり現実的じゃあないッスよ。」


「…なぜだ?」


「そもそも付与宝石(エンチャントジュエル)になるまでかなり時間がかかるんッスよ。それも、1年とか2年じゃなくて5年とか。下手したら10年とか。」


「…そんなにかかるのか。それで仮に10年間付与を待っていたとしても、付与されるアビリティにはバラつきもある、か。良い資金源になればとも思ったのだがな。」


「自分たちで付与宝石(エンチャントジュエル)を作るよりは、様々なダンジョンで拾得していくほうが早い、というわけです。」



 活動資金作りのために付与宝石(エンチャントジュエル)を自作、あるいは管理しようとしたノックスの思惑は残念ながら叶いそうには無かった。




 だがこの思惑は、後々、思いもよらぬ形で実現しうることになるのだが。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ウィンディア王国へと着いたノックスたちだったが、まだクレイのダンジョンを踏破したとは伝わっていないにも関わらず、『英雄扱い』として歓迎されすんなりと入国できた。



 教会からの報復のことを少し心配していたが、門番に確認しても今はそのような動きは無いとのことであった。



 早速足早にノックスたちはギルドへと赴き、クレイのダンジョン踏破と、拾得した宝石類を鑑定してもらう魔道具店を紹介してもらうことにした。



 いくらの値が付けられるのだろうかとアインはウキウキしていたが、内心ではそれはノックスも同じであった。



 ギルドの門を開けるとそこには見知った顔の者がいた。



 オーウェン商会代表でもあるオーウェンだ。



「おやノックスさん!久しぶりですなあ!!」


「オーウェン殿、久しぶりだな。」


「そちらのお二人さんもお元気そうで!」


「オーウェン殿、お久しぶりでございます。」


「久しぶりッス!」


「しばらくノックスさんの顔を見てへんなあと思いましたけど、どこかに出掛けてたんです?」


「ああ。クレイのダンジョンにな。」


「…え?……ク、クレイのダンジョン…てことは……」


「お察しの通り、踏破して参りました。」


「えーーーーーー!!!!??」



 オーウェンの声がギルドに響き、全員の注目を集めた。



「クククククレイの!?ダンジョンをですか!!?」


「ああそうだ。こいつらには良い経験になったようだ。」


「その言い方やと、ノックスさんは楽勝ってことですか……はははは…」



 オーウェンは驚きのあまり表情が引きつっていた。



「ククククククレイのダンジョンをとととと踏破したんですかーー!!!??」


 オーウェンの声によりギルド職員がバタバタとなだれ込んできた。



「ささささ早速つつつつ通行証をお見せしていただいても!!!!??」



 そう言われるがまま、通行証を職員へと差し出した。



 受け取りの際に職員はあからさまに手が震えていた。



 あまりの出来事にパニくっていた職員だったが、とある台座をいそいそと出してきた。


 そしてそこへ通行証を載せると、台座に書かれている魔法陣が反応し、通行証に『踏破』の文字が浮かび上がった。



 それを確認した職員は椅子から転げ、腰を抜かした。



 そしてそれは職員だけでなく、野次馬に来ていた冒険者たちも同じであった。



「大袈裟だな。そこまで大層なことなのか?」



 あまりの反応にノックスがオーウェンに尋ねた。



「…大層なもんです…それも相当に大層なもんです……クレイのダンジョンは、噂では100年以上、誰も踏破でけへんかったと……」


「…せ、正確には…118年間です……道半ばで折り返して来る者はいましたが……」


「そんなに長い期間、か。…ああそれと、拾得した宝石類の鑑定、それと、ダンジョン内部に侵入していたベヒーモスから採った素材の買い付けもお願いしたいのだが。」



「「「「「…………は?………」」」」」



 先程までの騒ぎとは一転して、ギルド内は静寂に包まれた。

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