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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
閑話
124/322

12使徒

 サントアルバはロンメア王国より遥に南に位置しており、首都には荘厳な教会が建てられている。


 この教会は最高峰の権威を持っており、皆からは『聖域』とさえ言われている。



 はるか昔、魔王を打ち破った勇者たちはこの教会で『祝福』を受けたと伝えられており、それは今日も続いていた。



 15年前、新たに教皇の座に就いたアズラエルにより『魔族排斥』『勇者の排出』の理念の元、その力を急速に築き上げた。




 その教会の一室にて、薄暗い部屋の中、中央にある長机を6つずつの豪華な椅子が向かい合うように置かれており、上座には更に一際豪華な椅子が置かれている。



 机には赤のテーブルクロスが掛けられ、真ん中に置かれている燭台には炎が揺らめいていた。



 そして、そこには上座を除き9名の者が腰掛けていた。




「今日集まってもらったのは他でもない…ウィンディア侵攻の件だ。」


「…ウィンディア…?…そういえばそんな話もあったか。」


「畜生共が治めてるという国のことか。」


「ああ。ズーグに任せた件だが、失敗した。」


「はぁ!?」


「…何かの間違いでは…?」


「『千里眼』持ちからの情報だ。ズーグは殺された。」



 室内がザワつく。



「…それでこの緊急招集というわけか…」


「その通りだ。」


「教皇様には伝えたのか?」


「そうしたかったのだが、生憎教皇様は外出中だ。」


「なら他の2人は!!?」


「彼らにも伝えたが、今は手が離せないとの事だ。」


「ふざけやがって……で?俺ら呼んだのはズーグの敵討ちでもやれっていうのか?」


「事はそう単純では無い。」


「…というより、ウィンディアの畜生なんかにやられるなんて、思った通りの役立たずっていうことね。」


「…相手を侮り、過信したのだろう。こんな事で教会の名を汚すとは…」


「落ち着け。『千里眼』からの報告によると、ズーグは『固有魔法』を行使していた。」


「…は?」


「更には、その魔法で攻撃しようとしたが、相手の魔法で砂粒にまで破砕された。」


「「「「…!!?」」」」


「その後、一瞬のうちに魔障壁を切り裂き、どうやらその後殺された。」


「おいおい!いくらなんでも吹かしすぎじゃねぇのかよ!!」


「…奴の固有魔法、それに魔障壁までも……腐っても奴は『賢者』の称号持ちだったはずだ。」


「それを無力化するということは、それだけの魔力を有している……フフ…興味深いですねぇ…」


「…で?相手の素性とか顔とか分かってるのか?」


「いくら『千里眼』といえども、認識していない相手まで見えん。」


「てこたぁ、ウィンディアには賢者をも凌ぐ亜人がいるってことか?」



 室内はさらにザワついた。



「…腑に落ちんな…」


「デュバル、何がだ?」


「そもそも亜人がそんな力を有しているのか、ということだ。」


「…何か心当たりでも…?」


「心当たりという程でもない。」


「んなことどうだっていいじゃねえか!ウィンディアは教会に楯突きやがったんだ!」


「左様。畜生共に粛清を与えねばなりませんな。」



 殺気立つ室内の中、一人の男が立ち上がった。



「くだらん。元はと言えばこちらから攻め立て、返り討ちにされたのだ。」


「…ああ?おいノース、奴らを許すつもりか?」


「そんな事は言ってない。俺が言いたいのは負けたズーグが悪いのだ。その後始末まで俺に言われたとて知らん。敵討ちでもしたいのなら貴様らでやれ。」


「言うねえ…ま、確かに俺も尻拭いなんてゴメンだね。」


「ゲラート…てめぇまで…!!」


「落ち着けよ坊や。敵討ちだなんだって騒ぎ立て、更に兵力を向かわせてみろ?それこそ戦争だろ?他の国…特にロンメアなんかは黙っちゃいないぜ?」


「構やしねぇ!!あんな畜生共なんざ、俺が1匹残らず殲滅してやるよ!!」


「はぁ…まったく、血の気の多い坊やだこと。」


「ゲラートの言う通りだ。本来事が公になる前にウィンディアの侵攻を終わらせるつもりだったのが失敗したのだ。」


「それに、戦争となったとしても、相手の戦力よね。ズーグをいとも容易く屠るような相手がいるとなれば、それ相応の兵力は必要よ。」


「ならば暗殺のほうが宜しいのでは?」


「やるならそのほうがよいだろう。ただし、生半可な相手ではまた返り討ちに遭うだけだが。」


「それなら俺が殺ってやるよ!」


「坊やじゃダメだろ。」


「ゲラート…ナメてんのか?俺が負けるとでも思ってんのか!!?」


「そういう事じゃない。すぐに熱くなる奴に暗殺なんて無理だってだけ。」


「その通りだな。」


「ぐっ…」


「他の者はどうする?」


「俺は先も言ったが、尻拭いなどせん。」


「俺もパス。」


「では、ノース、ゲラート、ロウ意外の者だな。」


「ではその任、私にお任せ頂ければ、と。」


「分かっているとは思うが、相手はズーグを容易く殺せる奴だぞ。」


「分かっておりますとも。なので、少しでも危険と判断すれば撤退させていただきますよ。」


「あぁ!?そんな心持ちでやるっつうのか!?」


「どんな御方がズーグを屠ったのか、些か興味がありましてね。あなた方もこのまま何の情報もないままよりも、多少なりとも情報は欲しいでしょう?」


「勝算は?」


「無い、とは言いませんよ。ただ、少しばかり試したいこともありますのでね…フフ……」


「相変わらず薄気味の悪い…」


「いいだろう。ではリームス、貴様にこの件は一任する。しつこいようだが、騒ぎを起こすなよ。」


「分かっておりますよ。…フフ…では失礼致します。何かと準備が必要ですからねぇ。」

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