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【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第10章 ダンジョン攻略
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分岐路

 ノックス達がダンジョンに入って5日目。


 ノエルとアインの連携もある程度調整され、モンスターを倒す速度もかなり早くなっていた。



 ノックスも暇つぶしに何体かモンスターを倒すも、レベル差がありすぎて運動にすらならなかった。



 そんな中、目覚しいスピードで成長している者がいた。



 ノアである。



 ダンジョンに入る前は体長20センチほどだったにも関わらず、今ではすでに体長50センチにもなっている。



 野生生物の成長は早いと言えど、たった5日で2倍以上の体格になったのはこのダンジョンに滞留している魔素の影響だろう。



 それと共に、戦闘にもよく参加するようになったが、ノエルやアインと混じっての戦闘では足を引っ張るだけであったため、ノアの戦闘訓練にはノックスが個別に着いていた。



 レベル差が大きいため、基本的な戦闘はノックス主体だが、サポートとして横から噛み付いたり引っ掻いたりと援護していた。



 そろそろ戦闘もノアを主体にやらせても良いかもしれないなと考えていた。




「お疲れ様です、ノックス様。」


「あ、お疲れ様ッス!もうちょいでメシができるッスよ!」


「2人もご苦労。」


 ノエルとアインは先に休憩しており、アインは皆の食事を作っていた。


「……にしても、ここ数日でかなり大きくなりましたね。」


「…あの頃の可愛かったノアちゃんが……」


『フーーーッ!!!!』


 ノアの姿を見たアインがガッカリしていることに腹を立てたのか、ノアは威嚇してアインを睨みつけた。


「いやいや!冗談ッス!!ノアちゃんは今でも可愛いッスー!!!!」


『クルルルル…』


 アインの言葉が通じたのか態度を和らげたものの、ノアはアインからプイと顔を背けた。


「ノアちゃ〜〜ん……」


 アインはそっぽを向かれたノアに寂しげな声をあげていた。




 食事を摂り奥へ進むと、分かれ道が現れた。



 分かれ道自体これまでいくつかあったものの、基本的に全員でどちらかの道を選んでやってきていた。



 が、ノックスがここで疑問に思う。



「また分かれ道…か。体感ではすでに4、5日このダンジョンにいるが、ここまで広いものなのか?」



 ダンジョン内が入り組んでいて迷路のようになっているとはいえ、かなりの広さに驚いていた。



「噂ッスけど、ダンジョン自体が魔素のせいで生きていて中に入った者を惑わす、なんて話もあるッスね。」


「アイン、それはこの暗がりのせいと、さらに戦闘を挟むことで来た道が分からなくなる、というのがそんな噂の原因だ。」


「本当にそうなんッスかね…それならいいんッスけど…」


「そういえば所々でノエルは壁に印を付けていたな。」


「はい。分岐点では印を付けておりましたので、単にこのダンジョンが思った以上に深い、ということかと思われます。」


「なるほどな。進むしかないということか。それで、この分岐はどうする?」


「ノックス様。私共から提案がございます。」


「改まってどうした?」


「私とアインは左の道。ノックス様のノアは右の道。という形でお任せいただけないでしょうか?」


「俺からもお願いするッス!ノックス様がいるとつい安心しちゃうというか、課題の答えに辿り付けないッス!」


「ふむ…ノエルはともかくアインまでそこまでやる気とは驚いた。だがいいのか?俺がいないということは、致命傷を負った時に治療もできなくなるぞ。」


「私とアインで話し合った際、ノックス様がいれば多少無理をしても大丈夫だという心の隙があることが分かりました。そんな甘えた考えでは到底ノックス様からの課題でもある『真の連携とは?』の答えに辿り着くなど不可能と判断したのです。」


「課題をクリアして絶対にご褒……じゃなくてノックス様に認めてもらうッス!」



 アインはどうしてもご褒美が欲しいようであり、珍しくやる気になっていた。



「ふっ…理由はともかく、やる気になってくれたのならいい事だ。なら左の道はお前たちに任せる。もしすぐに合流したとて、次の分岐も同じように二手に分かれよう。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ノエルはともかく、アインまであれほどやる気になるとはな…」


 分岐路を右へと進んだノックスはノアを連れてダンジョンの奥へと進んでいた。



 ノアの成長は目ざましく、近くにいるモンスターの気配をいち早く感知し、ノックスの前に出てはモンスターのいる側を向いてフーッ!と威嚇して知らせていた。



 ノックスの気配感知でも既に感知していたのだが、ノアの感知能力はそれに劣らない程に研ぎ澄まされていた。



 現れたのは狼の様なモンスターだが、ハウンドやホワイトウルフとは違って体毛の代わりに鱗で覆われているモンスターが4匹現れた。


 この世界では『アーマードウルフ』と呼ばれるモンスターである。



「ここに来て新しい種のモンスターか。ノア。一見お前の爪や牙では攻撃が通らなそうだがやる気か?」



 ノックスからの問いかけにノアだったが、アーマードウルフの群れを睨みつつ間合いを測り、尚も臨戦態勢を取っていた。



「いいだろう。好きなだけ暴れろ。」



 ノックスのその声に反応し、ノアがアーマードウルフに向けて駆け出し、前足の爪で引っ掻きにかかった。


 アーマードウルフはノアの攻撃を避けるでもなくその硬い鱗で受け止め、逆に前足でノアに向けて払うように攻撃した。


 その間に別のアーマードウルフは左右から同時にノックスに飛びかかって噛みつきにかかったが、展開した魔障壁によりそれは阻まれた。


 反撃されたノアはもろにその攻撃を受けて吹き飛ばれたが、体毛がクッションとなったおかげか、致命傷には至らなかった。



 ノアはすぐさま身を起こしたが、さすがに分が悪いと感じたのか、自ら攻撃に仕掛けることはせずにアーマードウルフの動きを注視していた。



「やはりお前の爪ではあの鱗の前では通じなかったな。俺がやろうか?」


 声をかけられたノアはノックスを見やった。


 その言葉の意味を理解したのかは不明だが、ノアは軽く首を左右に振り、再度アーマードウルフへと向き直った。


「ふむ。やる気なのはいいことだな。ならば、少々お前の戦いやすいようにしてやろう。」



 ノックスがそう言い放つと、1匹のアーマードウルフとノアを囲む様に魔障壁を展開させ、拡大させた。


 簡易的ではあるものの、1対1で戦闘できるスペースを無理やりに作り出したのだ。



 残りの3匹のアーマードウルフは尚もノックスに向けて噛み付いたり体当たりをしたりと攻撃を仕掛けていたが、それら全てノックスの周囲に張られている魔障壁により阻まれていた。



 1対1となったものの、アーマードウルフはノアの事など微塵も脅威とは感じておらず、単なる『恰好の獲物』として積極的に噛みつきかかる。


 その度にノアはヒョイヒョイと身を躱しながらも反撃を仕掛けるも、アーマードウルフの硬い鱗を突き破れることは無かった。



(さすがにまだ相手が悪すぎたか…)



 攻撃を躱す事だけに専念していたノアを見つつノックスはそう思ったが、ノアの目はまだ諦めてはいなかった。




 その時であった。



『ゴァァアアアアアアア!!!!』


 アーマードウルフが咆哮し、それにより周囲の岩や天井に亀裂が入る。


 ノックスも知らなかった事だが、アーマードウルフの咆哮には特殊な音波と自身の魔力により相手を一時的にマヒさせる効果がある。


 今まで爪や牙での攻撃しかしなかったアーマードウルフの奥の手である。



 ノアはその咆哮により身体機能を奪われ、硬直した所へアーマードウルフが一瞬で駆け寄り、ノアの喉元目掛けて鋭い牙で噛み付き、血飛沫が舞った。

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