表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第9章 ウィンディア防衛戦
109/322

アインv.sマイナ2

 スタインを討ち取ったノエルはすぐさまポーションを口に含んで飲み下した。


 とはいえ毒まで抜けることはなく、尚もノエル自身の体を蝕んでいた。


「…くっ……アインは、無事なのか…?」


 よろめきつつもアインのいる方向へと意識を向け、感知スキルで探してみた。



 戦場にいたモンスターたちは衛兵たちによりかなり数を減らしていた。



 そんな中、アインのいる方向では2人の気配を感知した。


「…まだあの魔術師の女と戦闘中…か。」


「おいアンタ!無事だったのか!!」


 衛兵がノエルを見つけ、肩を貸した。


 自分たちが魔族だと知りながらも躊躇なく肩を貸してきた獣人族を見てノエルは疑問に思った。


「…俺は…魔族だぞ…?」


「そこの男に同胞も為す術なくかなりやられたってのに…アンタはそれを倒してくれた……アンタはこの国の恩人だ!!」


「……恩人……か……」




 そんなやり取りをしつつ、肩を貸してもらい移動していたノエルに、とてつもなく巨大な気配に悪寒が走った。


 どうやら肩を貸していた衛兵も同様らしい。


「…なっ、なんだっ!!?」


「…これは……!」


 感知スキルで気配の元を探ると、アインのいる方向とは別の場所から発せられていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 辺り一帯に氷の槍が地面に突き刺さっている。


 氷の槍は近くにいた衛兵だけでなくモンスターをも巻き添えに串刺しにしていた。


 土煙が立ち込めており、それを見つめていたのはこの魔法を行使したマイナである。


「ふぅ……かなりごっそりと魔力を消費しちゃったわ……さすがにこれでは生きていたとしても無傷では済まないでしょうね。」


 マイナは感知スキルにより、アインの生存は感知していた。



 やがて土煙が風に流され、アインの姿が現れた。


 体に氷の槍が3本突き刺さっており、その他にも裂傷がいくつも見て取れる。


「今のを生き残るなんて、なかなかにしぶといのね。」


「はぁ……はぁ……ぐっ……いってぇ……」


「終わりにしましょ。今楽にしてあげる。」


 マイナはそう言い放つと両手を翳し、それにより再度アインの頭上を埋め尽くさんとする氷の槍が現れた。


「とどめよ!氷の雨(フロストレイン)!!」


 無常にも幾重にも重なった氷の槍の雨がアインに降り注いだ。


 アインは頭上から降り注ぐ氷の槍に対し魔障壁を展開したが、幾重にも連なる氷の槍に耐えられずにヒビが入り、すぐさま砕けた。


 その間も新しい氷の槍は現れては降り注ぎ、周囲を土煙が覆った。



 その時であった。


 マイナの後ろ側を取り囲むように突如として大地が隆起した。


「…!?」


 いきなりの出来事にマイナは驚き、振り返って隆起した大地を確認する。


 自身の感知スキルでその魔法を行使した者を探るも、近くには誰も確認できない。


 ただ一つだけ気配はあった。


「ま、まさか…」


 マイナは驚いて土煙のほうを見やる。



 降り注ぐ氷の槍。それにより発生した土煙がもくもくと立ち込めていたが、時折合間からは赤い光が漏れだしていた。


 それだけではなく、氷の槍が発生している辺りにも赤い光が見て取れた。


 それは火魔術であった。


 アインは降り注ぐ氷の槍に対して火魔術を展開して溶かしていた。


「火魔術!?だとしても相殺できるハズが…!!」


「…はぁ…!…はぁ…!…相殺できずとも…いいんッスよ…!」


 氷の槍は火魔術により溶かされ小さくなってはいたものの、それでも重なれば十分な殺傷能力を持っているハズなのだ。



 ではなぜアインが耐えれているのか。



 マイナは気づくべきだった。


 最初に氷の雨(フロストレイン)を発動した時、アインの斬撃の耐性が高いことに。


 そしてマイナの悪いことに、アインにマイナの固有魔法の弱点を見抜かれていたことに。




 マイナの固有魔法は『複製』。


 本来、自身の魔力でのみこれだけ大量の氷の槍を降らせるには消費魔力が膨大すぎてすぐに枯渇する。


 マイナは何本かオリジナルの氷の槍を発生させ、自身の固有魔法によりそれを複製して降らせていたのだ。


 となれば、オリジナルの氷の槍を小さくすれば複製された氷の槍も同じく小さくなる。


 アインは初撃こそ対応出来なかったものの、二撃目の折にダメ元で氷の槍の発生源にいくつか小さい火魔術を発生させ小さくさせた。


 すると降り注いでいる氷の槍のほとんどのサイズが小さくなっており、その結論に至ったのだ。



 それと、マイナの誤算。


 アインはこれまで魔道士という役職の割に前線に立って戦い、ノックス相手に何度も斬られていた。


 斬撃耐性がおよそ普通の魔道士が持ち合わせるレベルでは無かったのだ。




「今度は…俺の番ッスよ!!」


 アインは魔力を練り上げ、周囲を取り囲まれ逃げ場を無くしたマイナに向けて火魔術を撃ち放った。


 マイナは急いで氷の雨を解除し、魔障壁を展開させて迫り来る火魔術をガードする。


「お返しッスよ!!」


 マイナは前方から来ていた火魔術に気を取られ、頭上の氷の槍に気が付かなかった。


「なっ…!!?」


 不意を突かれたマイナの体に氷の槍が突き刺さり、それにより魔障壁が崩れた。


「いけぇぇぇええええ!!!!」


 アインはありったけの魔力を火魔術に注ぎこみ、魔障壁を完全に砕き、マイナの元へ最大火力の火魔術が襲い、逃げ場を失ったマイナに直撃した。


 激しい爆音と高熱が周囲を包み、アインの展開した土魔術は崩れ去り、やがてそれが収まると、大地が高熱で赤くなっており、マイナは跡形もなく消え去っていた。


「はぁ……!!はぁ……!!…か、勝った………」


 討ち取ったことに安堵したアインは緊張の糸がプツリと切れ、蓄積したダメージと魔力枯渇の疲労によりそのまま倒れて意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ