表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】理不尽に殺された子供に転生した  作者: かるぱりあん
第9章 ウィンディア防衛戦
106/322

氷の雨

 ノエルが敵陣の後方から音もなくすばやく忍び寄り、控えのモンスターの横をするりするりと掻い潜る。


 すり抜けを許したモンスターたちはすり抜けられた事にも気付いていない。



 そのままスピードを殺さずに強大な気配を放つ者の背後へと忍び寄り、有無を言わずに背後から斬りつけた。



 だがノエルが音もなく放った斬撃はいとも容易く躱されていた。



「…背後からいきなり斬りつけるとはな。」


「…気付いていたのか?」


「気配を殺していたようだが、完全では無かったな。それにそんなスピードで迫ってくる者など他にいまい。」


「…ならば仕方ない。」


 ノエルは改めてその者を見やる。


 長身に長い銀髪を後ろで束ね、抑揚のない顔つき。手にしているのはレイピアであった。



「スタイン!そいつ何者!?」


 近くにいた短めのソフトモヒカンの男がいきなり現れたノエルに驚いていた。


「カイロス、貴様は離れていろ。コイツはお前では相手にすらならん。」


「スタインがそこまで……わ、分かったわ。死なないで頂戴ね!」


 そう言い残してカイロスは足早に離れていった。



 スタインはレイピアを抜き、ゆったりと構えた。



 じりじりとお互いに間合いを測り合っていたが、ノエルが口火を切った。



 ノエルは低い姿勢からスタインに斬撃を見舞う。


 スタインは高い位置からノエルを捉え、カウンターにレイピアを突き出した。


 突き出されたレイピアはノエルの喉元を正確に捉え、咄嗟に首と上半身を捻って躱した。


 躱しつつもさらに踏み込み、ノエルはスタインの胴を横一文字に薙ぎ払う。


 が、スタインは前方に宙返りしつつ斬撃をヒラリと躱した。


 ノエルは体勢を立て直し、さらにスタインに追撃する。


 ギィィイイイイン!!!!という甲高い音と共に、ノエルの斬撃はスタインのレイピアにより阻まれた。


 互いの刃がぶつかり合い火花を散らす。


 が、互いに押し勝つことは不可能と判断したのか、同じタイミングで両者が後方へと距離を取った。


「…この俺と渡り合う者がこんな国にいたとはな…貴様、名をなんという?」


「教会の者に語る名など無い。」


「…それは惜しいな。では名無しのまま散れ。」


 スタインが闘気を漲らせ、体に赤いオーラのようなものを纏った。


 おそらくは魔力で自身を強化したのだろうと推測した。


 そしてノエルもまた、付与魔法を詠唱し、自身に纏わせた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「…はぁ…!…はぁ…!…中々やるッスね…!」


「…ふぅ…そっちこそ…ここまでやれる魔術師がこんな国にいたなんて驚きよ。」


 お互いに一進一退の攻防を続けていたアインとマイナ。


 両者ともに無詠唱魔術を扱うものの、両者には違いがあった。



 アインが放つのは威力が大きく範囲も大きい。範囲攻撃と言えば聞こえはいいが、その分魔力の消費が著しい。


 対してマイナは威力を極力抑えている。魔力の消費は少ないが、その分殺傷能力には劣っていた。


 戦闘が長引けばマイナに分があることは察していた。



(お互いに無詠唱で魔力感知がある以上、不意打ちで魔法を当てるのは容易じゃない…俺のMPも半分は尽きたし…

 …だけどなんでアイツは範囲攻撃とかしてこないんだ?……まさか戦いが長引くのを当初から折り込み済みだった…とか?)



 マイナを見やりながら思案する。



 だが今更それを後悔しても仕方がない。

 今はただ、どうやればこの女に勝てるのか、その活路を見出さなければいけないとアインは自身に言い聞かせた。



「はぁ…こればっかりはあんまり使いたく無かったんだけど、仕方ないわね。」


 戦闘が思いのほか長引いたことにウンザリしたのか、マイナが唐突に語り始めた。


「…?…何をッスか?」


「私の『固有魔法』よ。せいぜい感謝することね。私の固有魔法なんて見せてもらえるんだから。」


「固有魔法……へぇ、やっぱりあるんッスか。でもいいんッスか?わざわざそれを敵である俺に言っちゃって?」


「構わないわよ。知られたとてアナタはここで死ぬんですもの。」


 マイナはそう言い自身の魔力を内に溜めた。


 アインは最大限に警戒し、マイナを見やりつつ自身に付与魔法を纏わせた。



 マイナはその後右手を天に翳し、アインの頭上にいくつかの氷の槍を発生させた。



「とくと味わいなさい。氷の雨(フロストレイン)!!」



 マイナにより氷の槍が無数に増殖し、アインの頭上を埋め尽くす。


「なっ!!?」


 そして無慈悲な雨がアイン目掛けて降り注いだ。


 躱すのは不可能と判断し、即座に魔障壁を展開したアインだが、氷の雨が止む事はなく、次第に魔障壁にヒビが入り、やがて魔障壁を突き破って直にアインに降り注いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ