アインv.sマイナ
「…あ、あた、あたしの可愛いドクちゃんが……!!…この、…この……このこのこのこのこのぉぉお!!!!」
自慢の合成獣を討ち取られ、カイロスは怒りを爆発させた。
「よくも!!よくもぉぉ!!!!」
「アンタが飼い主ってことッスか。じゃあアンタを討ち取ればモンスター共も敵味方無くなるッスね。」
「……ろし…やる………殺してやるぅぅう!!!!」
「落ち着いてカイロス。あの子は私に任せて頂戴。」
「マイナ!!落ち着いてなんていられるわけが!!」
「あの子は無詠唱魔術師の上に、かなりのやり手よ。貴方では分が悪いわ。」
「マイナぁあ!!!!」
「落ち着け、カイロス。マイナの言う通りだ。」
「スタインまで!!アタシの可愛いドクちゃんを殺されたっていうのよ!!このアタシの手で…!!」
「俺の言うことが聞けんのかカイロス。」
スタインはカイロスをギロリと睨んだ。
「うっ……わ、分かったわよ…!…マイナ、負けたら承知しないわよ…!」
マイナがやがてアインの方へと歩み寄った。
「アナタ、良い魔道士ね。無詠唱魔術なんてこっちでもそういないのに。」
「今度はアンタが相手ッスか。悪いけど、女だからって容赦しないッスよ。」
「当然よ。でも、負けた時の言い訳も考えおいてね。」
「ア、アンタ、俺たちも加勢しようか…?」
近くにいた衛兵がアインに尋ねた。
「いや、ここは俺一人の方がいいッス。あの女、かなりパネェッス。」
「そ、そうか。なら、俺たちはモンスターをやる!アンタも負けんなよ…!」
「モチロンッス!!」
衛兵たちがアインの元を離れ、モンスター達を討ち取るべく走り去った。
「いい判断ね。あの衛兵たちがいるとかえって邪魔になるもの。」
「アンタこそ、さっきの仲間の男みたいなことになっても知らないッスよ。」
「男ってスヴェンのこと?あんなのと一緒にしないで欲しいわね。それに…」
「それに?」
「スヴェンなら、ズーグ様に治療してもらってるでしょうし。ま、完治とはいかないでしょうけどね。」
「ズーグ様?それって12使徒の1人ッスか?」
「えぇそうよ。どう?怖気付いたかしら?」
「…いや、望むところッスよ。」
話をしつつもジリジリと互いに間合いを取り合っていた。
突如、アインの魔力感知に大地から魔力の流れを感知した。
アインが飛び避けた所、大地から仕留めんとせんばかりの勢いでトゲが飛び出した。
「あ、あっぶねぇ!!」
「あら?よく避けたわね。」
「い、いきなり仕掛けてくるなんて卑怯ッス!」
「戦争に卑怯もなにも無いわよ。」
「……うん。そうッスね。」
今度はマイナが突如飛び避けた。
そこにはアインが仕掛けた地魔術によりトゲが突き出した。
が、それで終わりではなく、アインは魔力をコントロールし、マイナの着地地点にさらに地魔術を行使した。
「くっ!」
マイナは体を捻りつつ風魔術で体ごと押しのけたが、トゲが左腕を掠めた。
「…アナタも…やってくれるじゃない…」
「『戦争に卑怯もなにも無い』ッスからね。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ズーグ様、…すみません。ありがとうございます…」
「獣と思って油断しているからだ。次は無いぞ。」
「は、はい…!獣共を一匹残らず殺してやります!!」
アインの氷柱攻撃に貫かれ、その上爆破攻撃により全身を焼かれていたスヴェンはズーグにより治療を施されていた。
ズーグと呼ばれたこの男は全身を黒いマントで包んでおり、手には錫杖を携えていた。
とはいえ完全に治療できてはおらず、所々火傷の後が生々しい。
(油断していたにしてもこのスヴェンをここまで追い詰めるような輩がいたとは。ウィンディアを舐めていたのは俺も同じだな…)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あれは…ノックス様からの合図…!!」
ノエルは塔から放たれた火魔術を確認した。
ノエルはこれまで相手陣の最後方で気配を殺して潜伏していた。
近くに来て分かったことだが、自身の感知スキルで、戦うべきと判断している相手はハッキリしていた。
この戦場の中でとりわけ脅威となる気配は2つあった。
その1つとはすでにアインが対峙しているマイナである。
そしてもう1つ。
ノエルは自身の肩に付けてある狼のマスクを被り、気配を殺しつつその気配の元へと猛スピードで駆けて行った。




