合成獣
「怯むな!!足を止めるな!!」
「ポーションは?回復ポーションを寄越せ!!」
「クソッタレが!!この忌々しいモンスターめ!!」
「お、おい!!誰か巨人族の暴走を止めろ!!」
「ガァァアアアアアッッッ!!!!」
戦闘が開始されおよそ2時間。
前線はすでに王国門前へと退けられていた。
「おいおい、逃げんなっての!お前も溶かされろよっと!!」
スヴェンはまだ動ける兵を斬りつけては動けなくし、そこへ容赦なく合成獣から毒を吹きかけられて殺されていた。
「はっはぁ!!お前らみたいな獣共にゃお似合いだろぉ!」
「ぐっ…クソッ…!!この…!!」
スヴェンに腱を斬られ、動けなくなった所へと合成獣から毒を浴びせられる。
この戦いで幾度もその光景を目の当たりにしていた。
そしてこの獣人族もそれと同じ目に合わんかとする所だった。
「や、やめ……う、うわぁあぁああ!!!!」
だがその毒は届くことは無かった。
「良かった!間に合ったッスね!」
アインが展開した氷の壁により毒は遮られていた。
「あ、あんたは……?」
「んなことは後ッスよ!!誰かこの人に早く治療を!!」
「す、すまねぇ!!衛生兵!!」
負傷していた獣人族は衛生兵に運ばれ後方へと下がった。
それを確認したアインは氷の壁を解除し、合成獣へと向き直った。
「うげっ。改めて近くで見るとすげーキモイッスね…」
「おいおい、なんだてめぇ?せっかくのお楽しみを邪魔しやがってよぉ?それに魔道士風情が前線に出てくるとは、てめぇらの脳みそはホント獣だな!」
「…言ってくれるッスね。んじゃあ前線に出てきた魔道士はパネェってこと、見せてやるッスよ。」
「あぁん!?ハッ!じゃあてめぇらの脳みそでも分かりやすくその体に刻みこんでやるよっと!!」
アインの元へスヴェンが高速で近づく。
スヴェンから繰り出された剣は致命傷を避けるべく斬りつけにかかった。
アインは小さく悲鳴をあげながらもそれをヒョイヒョイと躱していく。
「クソがっ!!チョロチョロと逃げ足だけは早い獣風情が!!」
アインにことごとく剣戟を躱されたことにイラついたスヴェンはやや大振りで斬りかかってきた。
「ひえっ!」
大振りで振られた剣を躱したのだが、足元に転がっていた死体で足を取られてよろめいた。
「ハッ!!周り見ろってんだよ!!薄汚い獣が!!」
スヴェンがアインの腹を突き刺しにかかる。
「それはコッチのセリフッスよ!!」
アインはよろめきつつも左右の手のひらから展開していた氷柱をスヴェンに目掛けて打ち出した。
「なっ…!!」
放たれた2つの氷柱の内1つはなんとか躱すことが出来たものの、もう片方の氷柱は見事にスヴェンの横っ腹を貫いた。
「ぐあっ!!」
激痛に顔を顰めるも、すぐさまアインを睨めつける。
「て、てめぇ…!!この獣ふ…ブフッ!!」
すぐさまアインの次なる魔法が襲いかかる。
土魔術により大地からトゲが突き出した。
トゲはスヴェンの顎を貫きはしなかったものの撃ち抜かれてよろめいた。
「食らえぇ!!」
その隙を見逃さず、アインは火魔術でスヴェンに爆破攻撃を見舞わせた。
ドガァァアン!!という轟音が響き、スヴェンは爆破の威力で吹き飛ばされていった。
「「「「うぉおおおおお!!!!」」」」
その光景を見守っていた衛兵たちが歓喜した。
「まだ戦いは終わって無いッスよ!!」
アインはすぐさま合成獣に向き直り、他の衛兵も改めて臨戦態勢に入った。
合成獣はアインを一睨みするとすぐさま毒を吹き掛けた。
「その攻撃、見飽きたッスよ!」
アインは氷の壁で毒を遮断しつつ、さらに壁から氷柱を発現させて合成獣に打ち出した。
氷柱は合成獣の外殻を破れなかったが、その後氷柱は弾け、無数の氷の粒がキラキラと太陽の光を反射させ、合成獣の視界を埋め尽くした。
「轟き貫けぇぇえええ!!!!」
アインが魔力を練り上げ、合成獣の頭上から雷を発生させ、合成獣は感知することも出来ないままに雷の餌食となった。
ドゴォォォオオオオ!!バリバリバリバリ……
という轟音と凄まじい閃光が戦場を包み込む。
まともに雷を直撃した合成獣は体から煙をあげ、6本の足で支えていた体はズシィンと地に落ちた。
「今のうちにトドメを!!」
「あ、あぁ!…巨人族!トドメを!!」
「「「了解だ!!」」」
3人の巨人族は大きく斧を振りかぶり、最大限の力を込めて合成獣に叩き込んだ。
巨人族の凄まじい腕力により、合成獣の外殻は砕け、斧により両断され絶命した。