出撃命令
「間に合ったか……ってなんだコイツは!?」
「グルーガか、随分お早い到着じゃねぇか。コイツはあの飼い主が作った合成獣だそうだぜ。」
「合成獣だと…!?ふざけた連中だ…!!」
加勢に駆けつけたグルーガ率いる獣人族は目の前の合成獣に絶句していた。
「俺たちが撹乱する!!てめぇらはその隙に攻撃叩き込みやがれ!!」
「言われずともだ!!」
「おいおい、そんなに熱くなんなって。もっと周り見ないと、俺らだっているんだぜ?」
「「……!!」」
その声の主を見ると、短めのウルフカットの青年がいくつか引っ提げていた竜人族の首をぶっきらぼうに投げ捨てた。
「き、貴様…!!俺の仲間を……!!」
シリュウは拳を握りしめ、牙を向いて睨めつけた。
「ハッ!そう怒んなよ。それよか、よそ見してていいのかよ?」
シリュウたち目掛けて合成獣が毒を吹きかけた。
攻撃される瞬間、鋭い嗅覚でグルーガは感知したものの、自分の身の安全を守ることしか出来なかった。
「グゥァァァァァァァァァ!!!!」
毒が掛かったシリュウの右腕が焼け爛れる。
毒をまともに浴びた者はドロドロに体を溶かされながらも両手を前に突き出し、さながらゾンビのように数歩歩いては崩れ落ち絶命した。
「クソッ!!お前ら、毒に気をつけろ!!」
グルーガが呼びかけつつシリュウを引き取り一旦後方へ下がる。
竜人族や獣人族が協力して合成獣へ攻撃するも、外殻を全く破れず、先のマグナピードに与えられたジャンプ攻撃ですら歯が立たなかった。
「おいおい、俺も忘れんな、よっと!!」
スヴェンがすばやい動きで竜人族や獣人族の体を斬りつけた。
「はっはぁ!!数だけいたって無駄だってぇの!!」
スヴェンはその後も休むことなく斬り続けた。
実力差があるはずなのに敢えて致命傷を与えず、いたぶっていた。
そこへドサドサッと鳥人族たちが地に落ちた。
空中で他のモンスターを相手していた鳥人族たちは複数の小さな氷柱により貫き殺されていたのだ。
戦いは合成獣、スヴェン、マイナの介入により一変していた。
大勢いたハズの竜人族、後から駆けつけた獣人族はスヴェンによりいたぶられ、合成獣に毒で溶かされた。
前線はかなり押され、王国門前付近まで後退していた。
巨人族、ドワーフ族も戦闘に加わり、エルフ族はその後方から支援攻撃を繰り出している。
だが戦局は芳しくなく、王国門が破られるかという所まで来ていた。
「あんなモンスター見たことないな…それに、あの男、わざと致命傷を避けていたぶるとはいい趣味をしている。」
ノックスは塔から戦いの様子を見守っていた。
「そろそろ限界、か。仕方ない。」
ノックスは登から雷魔法を打ち出し、アインへと出撃の命を下した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…お?ノックス様から出撃命令ッスね。」
エルフ族よりさらに後方で控えていたアインは背伸びをして服を正した。
「さぁ、張り切って行くッスよ!!」
アインは身元が判明しないようにとネコの仮面を被り、戦陣へと赴いた。