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teenagers  作者: 迎 カズ紀
12/12

一歩

 謎の三角関係判明事件から数日たった休日。俺とゆずは近所のスーパーへ買い出しに来ていた。

「どうやら大夢くんは野菜の見分けがへたくそみたいだからねえ。このゆず様が教えてしんぜようではないか」

「口調どうしたんだよ」

 でも実際、野菜の良し悪しとかは分からない。料理はそれなりに出来るから夕飯当番に組み込まれたけど、買い出しに行くことはなかったから、悪いものを買ってしまったら申し訳ない。

「でも、ゆずは夕飯当番に入ってないのに野菜の見分け上手いんだな」

「ふふーん、まあ経験の差? ですから」

「経験の差ってなんだよ……」


 ゆずのおかげであっという間に買い出しは終わった。良し悪しは何となくわかったが、まだ完ぺきとは言えない。

 レジへ向かおうとして、帝人さんからお互い二百円ずつお小遣いをもらっていたことを思い出した。何に使おうか。かごを持って悩んでいると、横からゆずがモナカタイプのアイスを入れた。九月ももう終わりとはいえ歩くと暑くなる。俺もソフトクリームタイプのアイスを買い、食べながら帰ることにした。

「大夢って食べ歩きする系の人?」

「あんまりしない系の人。落としそうで怖いんだよな」

「あ、わかる。地面に落としちゃったら最悪だもんね。でもアイスは溶けそうだし、あったかいものが冷めるのも嫌だし難しいよねー」

 そう言いながらアイスの封を開ける。口に含んだソフトクリームは優しい味だった。

「……ねえ大夢。もう生活に慣れた?」

 何でもないような口調でゆずは尋ねた。

「まだよく分からないこともおおいけど、アジトでの暮らしは楽しいよ。みんな良い人だし」

「それならよかった。楓ちゃんや武士さん、生月くんとはどう?」

「……まあ、会ったら会話するくらいかな」

 五十嵐さんは廊下で会ったら挨拶する関係になった。道ノ瀬さんは会う確率は低いけど、仲が悪い訳ではない。南雲は……。

「ゆずって、南雲くんのことどう思ってるの?」

「え、何突然。アイス落としかけたじゃん」

 じっとこちらの顔色をうかがってくる。顔色を変えていないつもりだけど、変に思われているのは間違いないだろう。


「生月くんはね、あたしがスカウトしたの」

「スカウト?」

「大夢を助けに行ったのは必然だったけど、生月くんは偶然だった。彼、自分だけの特別な魔術が開花したせいで、危ないところで迷子になってたの。そこから話すうちに良い子だなーとは思ってるけど」

 そうだったのか。つまり南雲にとってのゆずは恩人の先輩にあたるのか?


 何だか、恩人ポジションは特に特別な物じゃないんだなとぼんやり考えた。これから俺も誰かを救って、何でもないことのように捉えるのだろうか。ヒーローの在り方として最高だと思うけど、難しいことだと思うし、まだ想像ができない。

 黙ってしまった俺を見て、ゆずは背中を軽くたたいた。

「大夢は十人目だから、今後スカウトするのはない――ことを祈るけど、誰かを助ける瞬間はきっと来るから、ちゃんと向き合ってあげなよ。カウンセリングまでいかなくても、話すことは大事だから」

「カウンセリング?」

 思わず聞き返してしまう。カウンセリング。そりゃ悪魔が急に現れたら心を病む人もいるか。俺にできるだろうか。

「あたし、帝人さんにすっごく時間使わせちゃったから、恩はしっかり返したいんだよね。とりあえず、今度肩たたき券あげよ」

「肩たたき券って……」

 ゆずが帝人さんのことをお母さんだと思っていることは分かった。


「ただいま~」

「ただいま」

 アジトに戻りキッチンに行くと一さんと霧原さんがいた。

「おかえりなさい二人とも」

「明良さんに真太郎さん、ただいま――って、今からお茶するんですか?」

 二人は急須を用意していた。机の上には和菓子の袋が。

「部活終わりに武士がお裾分けだってくれたのよ。水ようかんなんだけど、あんたたちも食べる?」

「やったー! いただきます!」

 さっきアイス食べたばっかなのに……と思うも口には出さなかった。正直俺もお腹すいてるし。

俺とゆずで小さな皿を出して大広間に袋を持っていく。もうだいたいの食器の位置は覚えられたと思う。

 水ようかんはさっぱりして美味しかった。

「一さんも剣道部なんですか?」

 そういえば部活の事は聞いてなかったなと思い質問する。一さんはそうよと頷いた。

「武士のほうが強いんだけどね。あたしはまだまだよ」

「……武士は剣道道場の息子だから、仕方ない」

「分かってるわよ真太郎。でも武士の家って『和』の極みって感じよね。剣道道場しながら和菓子屋もやってるなんて」

「そうなんですか?」

 じゃあこの和菓子も……。刀を創る魔術と言い、本当に「和」を体現した人なんだなあと思いながら最後の一口をすくった。

「真太郎さんは何部なんですか?」

「俺は、ボランティア部。部長は亮介。叶くんは、何部?」

「俺は文学部です」

「へえ。あるのは知ってたけど、どんな活動をしてるの?」

「えっと、最近だったら――」

 お茶の時間は思っていた以上に和やかに終わった。ゆずは少し口数が少なかったけど、嬉しそうに俺たちを見ていたのが視界の端からでも分かった。


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