003.秋葉原でデートはレベル高い
あの後、結局俺は中々寝付けなかった。
そして、すでに秋葉原にいる。
電気街口改札からは多くの人が降りてきていた。
約束の時間までは1時間ある。
俺、ちょー時間厳守。
1時間前行動とか神すぎる。
などと、同級生に聞かれたら「マジキモイ」と言われそうなことを考えながら待っていた。
まだ来ないだろうな、と思いつつ、先日作ったiアプリを起動して遊んでみる。
花火よりキレイなこの弾幕。
ホ、ホレル。
iアプリだからと言ってFPSにも妥協はない。
常に20~30をキープだぜ。
俺は携帯電話の操作性の悪さをものともせずにすべての弾幕を避けまくっていく。
あと少しでラスボスに到達。
そう思ったときだった。
ふいに携帯電話の向こうから人が覗き込んできた。
俺はびくっとして、手に持っていた携帯電話を落としてしまった。
「あわわ」
と言いながら携帯電話をキャッチする女の子。
携帯の向こうから覗き込んできていたのは三島だった。
「はい」
そう言いながら俺の携帯電話を手渡してくれる。
そこにエロい画像など映っていなくてよかったと思いながら受け取った。
「待たせちゃったみたいだね」
三島は白いワンピースを着ていた。
控えめに配置されたフリルが女の子らしさを強調していた。
「黒い服着てるから、ちょっと自信なくて声かけられなかったんだ」
え? すると、ずっと見てたってことですか?
「中々格好いいと思うよ。うん」
何かに頷く三島。
俺は「キュピーン」という効果音とともに2つ目になるであろうフラグが立つのを感じた。
「あぁ、まぁな。それよりどっかで打ち合わせしようぜ」
俺はめちゃめちゃうれしいのを抑えながら、カッコメン風に受け流すとパソコンを買うための打ち合わせを提案した。
現在、体感温度45℃(当社比)。
どこでもいいからクーラーが効いたところに逝きたいです。
「うん。そうだね」
電気街口から離れた俺たちは中央口へ向かう。
ビックカメラとか、UDXとか、その辺でいいだろう。
「スタバでいい?」
お、今の台詞、格好良くなくない?
「うん」
ほら、もう俺にメロメロ。
なんでも言うこと聞くね。
なんて思わずに俺は普通に歩く。
三島は俺の隣を歩かずに半歩下がって着いてくる。
なんですか? その微妙な距離。
俺はちょっとパニックになりかけた。
フラグは立ったはずだ。
ここは隣を歩いているときに手が触れ合って「あっ」とか言うイベントが発生するはずでしょ?
と思いたかったが、体感温度45℃の俺には関係のないこと。
そんな余裕はなかった。
っていうか、孔明、祈祷さぼったろwww
めっちゃ晴れてんじゃねぇーか。
……ちなみに体感温度は湿度が10%上がるごとに1℃上がり、風速が1km/h上がるごとに1℃下がる。
現在風速0km/h。湿度70%。しかも、晴れてて黒い服。
俺、殺されるwww
さすが孔明の罠。
俺は何とか死ぬ前にスタバについた。
シャツは胸のところと背中のところがばっちりフィット&ウェット。
これはフラグ折れたんじゃね。
「涼しい~」
2人ともキャラメルマキアートのアイスを頼むと、少し混雑している店内の隅に座った。
生憎とカウンター席しか空いていなかった。
俺と三島は隣同士に座った。
「今日は暑かったね~」
キャラメルマキアートを飲みながら三島は感想を述べる。
俺はというと、店内のガンガンに聞いたクーラーのおかげで、ここに来るまでに溶けてしまった脳みそを再構築し、人間らしさを取り戻しつつあった。
「まぁ、アキバはいつ来てもアツイけど」
何でアツイかは想像にまかせたぜ。
「ところで」
俺は今日の本題に入ろうと思った。
「エロゲ無事?」
「無事だよ。パソコンが無事買えたら来週返すから」
三島はつまらなそうに言った。
キャラメルマキアートをかき混ぜる手がどことなく早くなった気がした。