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異世界の宇宙連邦?剣士  作者: 炉里邪那胃(惰眠狼)
新版・第一章
7/29

1-7.なんちゃって竜の撃墜王

納品がやっと終わり、昼食は宿へ戻る。

100メートル程の距離か。


確認していなかったが宿の名前は“美食亭”、食堂かよ。

どおりで食事重視なわけだ、貴族向け高級宿でもあるまいし。

冒険者とか肉体労働じゃなきゃ太りそう。

宿泊料金は安いと言うより、「普通」なわけだ。


食事代御500円と思っていたのがおそらく1000円くらい。

つまり、一泊2シルバー = 2000円でなく4000円程度という事。



料理に満足し、ちょっと休憩。

エルも俺の感覚を通じて味を楽しんでいるようだ・・・。




再び朝と同じ狩場へ、あえてゆっくり歩く。


(いまさらだけど。

適格者だからっていきなり(さら)ってごめんね・・・)


マジ今更だが・・・言うチャンスをうかがっていたに違いない。

いや、仕方なかったのは分かるし、逆に感謝すべきかもしれない。

こんな所に飛ばされなかったらもっと良かったんだがな。

(ありがとう・・・)




(午後からはまず、バリアの本格的な使い方からね)


大まかに言えば、

バリアより小さく体を縮める「丸まり」は良いアイデアではある。

だが実際には、バリアの方を切り替えながら戦うらしい。

切り替えはかなり大変だろうが、考えれば当然だ。

非常に困難な重力制御の訓練、その際の「丸まり」は画期的だそう。



バリアの扱いは生命の安全に直結する、最初にやるべきだな。


 敵や魔物の攻撃や魔法を次々に防御!

異世界物のアニメを思い出しつつイメージする。


(・・・に切り替えます)

・・・・・・


何か言ったか?


答えが無い。

何か合成音が聞こえたような・・・。

そして、感じていた感情、存在感が消えた。


というより、居るべきヤツが居ない。

あるべきものが無い。

いきなりだ。


俺は足を止めた。




空虚感。

視界の裏側に存在するはずのものが消えてしまった。

加速も消失している?

メニュー画面が無い。


「メニュー」

口に出して言うが画面は目の前にも脳内にも現れない。

ふと気づいて周りを見回す、狩場に近づいているので誰も居ない。

まるでいきなり周囲が見えなくなったような。

いや目には見えているが、あるべき情報が消失した。

全てが。


この先、走っている方向に何があるのか全く分からない。


まずい。


慌てて町の方向を目指して戻る。

走る。

とんでもなく遅く感じる。


とにかく何も情報が無い。

魔物がどのくらい近いのかも分からない。

バリア設定画面も無いということは・・・バリアも無い?

恐らく、無いよな。



走った、こんなに走ったのは久し振りだ。

さっきまで走っていたのとはまるで違った。

加速の心地良い風を受けつつ、画面上の光点を目指すだけだったのだ。


そしてなにより、今は一人きりだ。

ずっと一緒だった意識の温もりが消えてしまっている。

喋らずとも、ずっといた大事な存在。


まだ、3日とちょっと一緒にいるだけなのに・・・。





もうここは野菜などの露天の出ている大通り。

はあはあと肩で息をする。


安心できる場所まで戻らずにはいられなかった。

どれだけ俺はガジェットに頼り切っていたのか。



もう分かった。

分かったから元に戻してくれ!


ガジェットを見ると、真っ白になっていた。






宿の部屋に入ろうとすると、掃除の女の子と入れ替わりだった。

素朴な感じ、15歳くらいか。

こんな時にと思うが、つい見てしまう。

「清掃終わりました、ごゆっくり」



整えられたばかりのベッドに倒れ込む。


何が起こっているのか。

確かめねば。

何を?


自分の中に残っている物はすぐ分かった。

『インベントリ』はある。

念の為、携帯食料の小さなパックを一つだけ取り出す。

「1食分」と印刷されている。

一目で食料だと分かるのはいいが、飢えた状態で一つで済むのか疑問だ。

慣れれば十分だと分かるが、小型化も考えものだ。


何を考えているんだっけか。

そうだ、『インベントリ』はあった。

つまり『剣技』もそのままのはず、きっと。

消えたのはエルとガジェットの力、技術というべきか。


回線の切断?

分からない。

誰にも相談出来ない。





いつの間にかウトウトしていた。

手に持った携帯食をついつい食べた。

なにせ一口だ。

2度目の満腹感とともに寝てしまっていた。


目覚め、真っ白なガジェットを見て現実が一気に戻ってきた。

窓からの日の傾きが夕方に近いことを教えてくれる。


そういえばギルドの受付の人、確かラミアさん、が言ってた。

安否確認のため、夕方には顔を見せろって。






「そうですか、魔道具が・・・」


もちろん最初からこんな話をするつもりは無かった。

だが、午前中は余裕で18匹もの魔物を狩っている。

同じ人間が獲物ゼロで落ち込んでいれば理由を聞かない訳がない。

今は奥の解体所手前の小部屋の一つにいる。

個人の能力や魔道具について、特別な理由でも無ければ追求は厳禁。

だが冒険者本人から相談するのなら例外だ。

プライバシーのための個室相談だ。



宇宙連邦の技術がここの人に理解できる筈がない。

だが待て。


『十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない』

偉いSF作家の人は言った。


魔法道具としての視点からヒント、糸口が見つかるかも。




この町で念の為買った紙とペンでメモを取りつつ話を聞く。

「では一つ一つ可能性を挙げますね。

とっくに調べたでしょうけど、まず最初の可能性は、魔力切れ」


なんてこった、ネットのような回線切れだけ考え他の可能性を忘れていた。

自分が馬鹿になっていたような。

例の「思考阻害」?


違う、これはパニックというやつだ。

そう分かった瞬間、多くの可能性が浮かぶ。

今までの思考停滞が嘘のように。



例えば(現代の)電話での詐欺。

俺は高校生だが、自分は大丈夫などと思わずに対応する。

大事そうな話は家族に伝え、こちらから相手にかけ直す。

番号は言われた通りではなく自分で調べて。


よく聞くのは、身内が危機だと聞いた時にパニックになるという話。

恐らく今の俺のように、思考がまったく働かなくなるのだ。

身を持って体験しないと分からない事はあるものだ。


まさに、俺はパニック状態だった。



「大丈夫ですか?」

「いえ、気が動転しててそんな簡単な事さえ忘れて・・・。

とにかく可能性を挙げてもらえますか。

分からない事は聞きますから」



「いきなり使用者の魔力が消えるのはほぼ有り得ませんね。

普通は媒体の特殊な魔石や、魔力貯蔵の仕組みの劣化です」

実際は電力か、いやエネルギーの種類さえ不明だな。

それが何らかの理由で無くなってしまったとしたら?

考えたくはないが。


故障の可能性、これならお手上げだが。

当然この世界の魔道具技師には無理だ。

自己修復機能だったか、あれは武器である棒に限った話なのか。



可能性に賭け、あることを聞いてみる。

「他とのつながりを持つ魔道具について知りません?」

「精霊を宿した魔道具は聞いたことが、都市伝説ですが」

「信じるかどうかは俺次第ってことですね・・・

何でも無いです」


ちょっと違う気がするが精霊ならぬニセ妖精がいるのは確かだ。

どうでもいいな。


「それら、というか彼らは一族や使用者との絆や誓約で動きます。

あっそうです!

危機や何か進化の手がかりを得た時、思索のため停止するそうですよ。

色々な本や言い伝えからの総合ですが」


まさかのピンポイントの可能性、「停止状態」?

いや、エネルギー喪失のほうが有り得るが。

どちらにしても今はどうしようもない。

もっとガジェットについてエルに聞いていれば。


そういえば最後に・・・『切り替えます』とか聞こえたな。

妄想に気を取られていなければ・・・。


スマホは充電できず、早々に諦め収納してある。

携帯やスマホの“省電力モード”のようなもの?

ありうる。

なら、やはりエネルギー切れか?

だがそれならますますどうしようもない。



狩りで今まで稼いだ恐らく20万円弱の貯蓄は有る。

それが尽きるまでに、まずこの地で死なずに稼げる程度にならなければ。

スキルと呼べばいいか、『剣技』と『インベントリ』を使って。

『帰還方法』探しはそれからだ。


「納得できました。

ラミアさんありがとうございます、気持ちが整理できました」

「いえ、落ち着かれたようで良かったです」





受付のある広間に戻ると、帰ってきた冒険者が少しずつ増えている。

もう日没が近いはず。


ラミアさんが声を張った。

「丁度よかったです! 撃墜王さんたち、この人です」

この人って、俺?


3人の冒険者が近づく。

剣士と魔法使い(?)2人の計3人。

剣士は長めで細い剣、金属と要所のガードを組み合わせた和洋折衷鎧。

ここではありふれた、形は和式、材質は金属のものだ。

あと2人はでかい杖にローブ、それぞれいかにも魔法使いだ。

3人とも20歳行かないか、金髪外人。

大事なことなので書くが、剣士だけ男だ。


「俺たちがCランクパーティー『目指せ、竜の撃墜王』だ、よろしく」

アニメのサブタイトルみたいな名前だ、だが・・・Cランク?

「Cランクのパーティーが何の用で?」


ラミアさんからのフォローが入る。

「彼らからのたっての希望で、メンバーを探してるんです」

「俺、昨日入った初心者なのに?」


「ああ、あんたみたいなヤツを捜してた」

後ろの2人もうんうんと頷く。

「その格好で1時間掛けずゴブ・・・」


「あっその話は奥で!」

ラミアさんだ、再び全員さっきの部屋へ戻る。




「今日の午前中は18匹でしたよ」

口をあんぐり開ける3人。

「待って。魔道具頼りだし、それは今動かないし」

「21匹全て急所一撃って、魔道具だけで出来ませんよ」


それが、ほぼガジェットのおかげなんだよなあ。

残念ながら『剣技』の効果は不明だ。



「特製なんです、宇宙の力が魔道具に・・・」

余計な事を言ったが、この程度の名目はありそうだ。

女性たちはポカンとしている。

剣士の男にいきなり胸ぐらを掴まれた。


「ゼファさん!」

ラミアさんには止められる筈もない。

部屋の隅に押し込まれ、顔が近づく。

野性的なイケメンだ、優しくして欲しい。


小声でゼファがつぶやく。

「宇宙って概念、それに言葉もこの世界には無いんだよ。

何が狙いだ?」


どういう事?

こいつも転生者・・・?

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