2-4.秘匿通信?
今回まで、この異世界やガジェットの役割などへの布石の会話であり、動きは少ないです。
管理者待ちに変わりはありませんが、次回より様々な動きがある予定です。
一気にランクアップで喜んでいる場合じゃない。
大変なことになってしまったとしか。
他からの嫉妬などは別に問題無い。どうでもいい。
問題は“世界を導く役割”、というなんだかわからないが大それた役目。
何だそれ。
扉が閉じた瞬間現れたエルも、いつもの芸を披露できず固まっている。
いや踊り始めた、盆踊りっぽいな。
「昨日の帰りに突然管理者2人の目前に召喚され、伝えられました。
100年後前後に危機が早まったことは確定だと。
その後すぐ全てのSランクに知らされたようです。
今日も先程まで管理者通達を待っていたのですが・・・」
「とりあえずのことしか決まってない、とかです?」
俺の予想にシェーンさんがうなずく。
「今後が分からなければあなた方も混乱すると思い、遅れました。
なにせ世界に関わるので、詳細には教えてもらえませんが・・・。
問題が山積みで時間が無い、という事は言っていました。
期限が恐ろしく縮まったのですから、当然かもしれません」
管理者の都合は分からないが、期間が100分の1。
100日後開催のイベントが明日になった・・・例が合っているか知らないが。
ああ、いつの間にか昨晩考えた「ゲーム管理者」に例えてしまう。
もちろんそんな事は口になど出さない。
(ここはVRじゃないし)
まあそうだが。
事実はともかく、そんな感じで当てはめるとしっくり来るのは確かだからな。
とりあえずは、シェーンさんが他の決定事項を話してくれるはず。
どんな難題が待っているのか、なにせ“世界を導く”んだからな。
息を呑んで待つ4人+ニセ妖精。
「言いました通りすぐに皆さんはAランク、場合によりそれ以上にもすると。
特にガジェットを持つ私達の役割は重大なのだとか。
詳しくははまだ聞いていませんが・・・」
確か□□□□□という俺の元々の立ち位置が、なぜか関わっている?
シェーンさんも似ているのだが、何かが引っかかる。
「まず一つだけ、管理者側からの絶対条件があります」
来た、俺でさえチビりそうだ。
バンティ、ヤリマそれにユイはさぞ・・・こんな時に何を俺は。
エルは名前が出ずに不満げ・・・?
「パーティー名は“蒼きドラゴン”を名乗っていただきます。
決定事項です」
確か一つだけって言ったよな?
シェーンさんは嘘つかないはずだし。
しかし、すっかり忘れていたパーティー名がこんな形で決定とは。
正直助かった。
「後は」
やはりまだあるのか・・・。
「活動資金、兼ドラゴンゾンビ討伐報酬兼・・・。
まあ、その他諸々全て含めて1000ゴールド支給されます。
素材分は別に、通常通り支払いますのでご心配なく」
って、こっちがもらう分だけでは?
そういえばドラゴンママにも同額もらったんだよな。
約2億円程度? この額になると地球と比較しようがない。
「ゴールド、つまり金は管理者には簡単に集められるらしいです。
実は通貨が一箇所に集まるだけで様々な問題があるのですが。
ですのでこれがとりあえず限度ということです。
あなた方なら、ずっと持っていて緊急時使うだけでしょうけれども」
なるほど、こちらは換金不要の普通の通貨か。
「最初に言ったパーティー名“蒼きドラゴン”ですが。
これを広め、バイオレットドラゴンの姿での活動をやり易くします。
もちろん、不要ならドラゴンにならなくても構いませんが」
「ユイ、その時は頼めるか?」
「うんいいよ」
「とりあえずコウさん、皆さん、こんな感じでお願いします」
「それだけですか?
もしかして、実際何をするかはまだ不明ということですか?」
「その通りです。
おそらくは管理者の計画を補助するのでしょうけれど。
それ以外は全く不明ですね」
「恐ろしく漠然としてますね」
「昨日言った通り、コウさんのガジェットは普通ではないですよね。
世界の仕組みを解析し・・・今もそれは続いているのですね。
それが鍵なのか・・・全く的外れかもしれませんが」
エルがパニクって・・・いや既に消えていた。
学習能力はあるらしい。
シェーンさんもわざと意地悪を言っているのではないだろう。
そうとしか考えられない事はガジェットの通信で体験済みだし。
こっちには2つしか存在しないが、その驚異的な進化は俺自身知っている。
「俺も何らかの関係は疑ってますけど・・・。
でも、今は回線が・・・通信石の範囲外みたいな状態なんです。
独自解析はかなりの成果を上げてますけど」
(それが、ちょっと変なの)
エル、支障がなければ声で皆に話してくれるか?
エルがあらわれた!
全員の中央、ガジェットからの敵出現のBGMとともに。
ゼファが感心している。
一応突っ込むか。
「シリアス場面でそのBGMは・・・」
止まった。
「回線の件だけど・・・。
記憶容量の減り方がおかしいの」
「どうおかしい?」
「相当使ったのに割合が減ってない。
クラウド・・・無尽蔵な外部領域があるとしか思えない」
「この世界には・・・電波とかは無いのか」
「ほんの少しあるけど、遠くて雑音に近いね」
「もしかして管理者か?」
ゼファが思わず口をはさむ。
「神が電波って? どういう・・・」
「いや、あくまで仮説だよ。
それと、俺の妄想だけど今言っとく。
管理者ってこの世界をゲームサーバーのように・・・
機械的にって言うか、分かる範囲だけ自由にできるんじゃないかって」
言ってしまった・・・。
おっと、本題に戻ろう。
電波の事は、皆なんとなく理解してくれているように思える。
ゲーム管理者について伝えるのは難しいが、機会があれば話そう。
「ガジェットが今使ってるのは電波じゃない通信か、念話とかみたいな?
仮に電波としても、時間速度の差で周波数を50分の1に・・・。
まあとにかく何かに繋がってるのは確かみたいだな」
ここの人間にも電波については、「通信」という言葉で伝わったと思う。
俺はアマチュア無線の免許を持ち、周波による電波の特性変化を知ってる。
現代人にさえ説明がややこしくなるからやめておいたが。
というか、時間速度の異なる世界に電波が送れるのかは分からない。
テレパシー、念話のような未知の通信なら可能かもしれない。
いつも使ってるが、細かいことは全く知らない。
エルは知ってるんじゃ?
(私も地球人・・・本体のほうね、だから教えてもらってないよ)
あ、宇宙連邦地球支部にいたのは・・・少なくともエルの本体は地球人。
初めて知る驚愕の事実、でもないな。
最初は宇宙人かと疑ったが、何となくだが分かってた。
特にギャグとか古いし。
テレパシー多用すると挙動不審になるので会話に戻る。
「エル、これって隠蔽しようとすればできたはずだよな。
わざと表示とか変えるのは簡単なはず。
何かヒントをもらってる気もするんだけど。
まあ、その意味さえ全く不明なんだが・・・」
「うん、少しずつ分かることを増やすしかないね」
エルが真面目だ。
バンティとヤリマも必死に考えているようだ。
彼女らなりに、魔法を基準に分かることがあるのかも・・・
可能性は皆無じゃないよな。
もちろんシェーンさんはもっと悩んでいるだろうな・・・。
部屋を出る。
管理者やガジェット関係の会話以外、もう周囲に気にすることはない。
世界中のSランク、ギルド本部も公認の依頼に就くのだ。
まだ内容不明だが。
単純な報せだったが、なんやかやで結構時間を取ったな。
Aランク昇進や、報奨・活動資金などの申請関係は・・・。
既にSランク全員による推薦書類が本部に提出済みだそう。
それほど念を入れてくれているのだ。
今日やることは無い、そのまま全員普通に帰途に就く。
日曜、ギルド内は何も無かったように静かだ。
外はかろうじて雨ではないが、もう真っ暗だ。
宿に帰っても、昇進祝いをするでもなく皆言葉少なに食事を摂る。
バンティとヤリマはそのうちいつものようにイケメン談義になっていたが。
俺の話もたまに出て恥ずかしい・・・。
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