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異世界の宇宙連邦?剣士  作者: 炉里邪那胃(惰眠狼)
新版・第一章
11/29

1-11.『中断しました』

「次のオークは単独で。行けるよな?」

ゼファが言う。


オークの注意点はパワーと大きさ。

振り回す腕に当たれば体が千切れる事もあるらしい。

他の魔物と比べれば早くはないが、巨体でも野生動物並みには動ける。

変異種というか親玉でもなければ、群れたり武器も持つ事はないそうだが。


『竜の撃墜王』2日目だが、昨日の対練で問題無いとゼファが判断した。

一匹目はゼファの手本を改めて観察だった。

オークの動きと攻撃範囲は解ってきていて、ギリギリ近くでじっくり見た。

恐らく問題無いが、命が懸かってるからな。


次のフォーメーションはもちろん俺が前衛、念の為ゼファがすぐ背後。

少し離れてバンティ・ヤリマだ。

もしもの牽制火球や治療の準備も抜かりない。




今更だが、最初の単独オークはどこを攻撃していいものやら迷った。

試しに直前にジャンプしてみたが、普段と変わらなかったからだ。

腕振りを避けた後続けておもいきり跳ねると、首までぎりぎり届いた。

首を斬りつけ、吹き出す血を浴びながら避けているとそのまま倒れてくれた。

軽く『恩恵』を感じる、昨日から数匹目で1レベルアップといったところか。


「剣を持って集中しないと肉体強化できないか、まだ今は」

ゼファは冷静に見ている。

「そうなんだ。弱点は首の後ろで合ってるな?

今更だけど」

「ああ、ほとんどの魔物や獣はそうだ。

できれば首ごと切れればこっちも相手も楽でいい」



1時間かからず次のオークに遭遇。

蹴りに注意しつつ集中。

腕を振り下ろしてくるのを避けつつ跳び上がる。

前かがみになるのを狙ったが、普通に頭を越える高さだ。

そのまま首の後ろに剣を振り下ろす。

ドシリと倒れる、首が切れかけだった。

そう簡単ではないな・・・。



「戦う前になるべくウォームアップするよ。

まだ自分自身の実力が計れてない」

「それもそうだが、集中を素早く高める訓練だな。

まあ結局は慣れだな、いきなり恩恵上げしたコウは特殊だ」

俺自身でもちょこちょこ集中を試そう。


『剣技』自体意識するのもいいかも・・・やってみよう。


「ちょっと待って」

何もいないが剣を抜いて構える。

「剣技!」

めんどいので詠唱方式だ。

跳び上がり、昨日習った型を思い出して振る。

さっきの1.5倍くらい跳んだ、最高記録だ。

ゼファと同等だ。

こんなにチョロくていいのか・・・。


「次からは声出さないから」

「魔法と同じみたい!」

「発見ですね」

「コロンブス・・・卵を割って立てやがったな」

ゼファの言い直しはちょっと笑え・・・感心した。



次のオークは1時間少しで見つけた。

40メートルの気配感知ではこんなものだろう。

隠れている敵にはかなり有効だが。

『レーダー』がいかにチートだったかという事だ。


剣技の無言詠唱で一瞬で終わった。

「恩恵」の酔いは感じなかった。




「ごっはんー、ごっはんー」

見晴らしが良い場所に移動する。

全員ストレージの到達範囲にいるので、手を出させ次々弁当を出す。

「まだあったかいです!」

「できたてバンザイ」

いきなり出てきたのは無視、出来立ての方に感動してるのか。

別にいいけど・・・。


「忘れてました、清浄」

血液まみれでジャージまでパリパリだったのがキレイになった。

「食事くらいキレイにして食べたいでしょうから」

「ヤリマありがとう、体全体きれいになったみたいだ」

「便利ですけど、なるべく必要なときだけですよ。

それと仲間だけの秘密でお願いしますね」





「おう、おまえらがここらにいるって久々だな。

やっぱりあのせいか」

いきなり剣士らしい男が声を掛けてきた。

4人組パーティーのリーダーか、親しげだ。


「あのせい、ってなんだ?」

「例のパーティー全員の遺品が見つかったそうだ。

貼り出されたのが昼前だったから見なかったか」

「ラフィーナ唯一のBランク『炎魔剣』が・・・?」



ここのギルドが“ラフィーナ支部”であるのは知っている。

色々な場所に行こうという思いが強く、ここの地名はスル―してた。

話しかけて来たのはDランク『いつかは竜騎士』のメンバー。

剣士の彼と大盾の剣士、軽装の小剣持ちと女性魔法士だ。

この辺りオークエリアはDランク上位のメイン狩場らしい。



「前ははぐれオーガー仕留めて全員酔いつぶれて捜索されたからな。

今度も変異スパイター仕留めて同じバターンかと思ってたが・・・」

ゼファが深刻に言う。


オーガーはこの辺で一番の脅威らしい。

Aランクなど飛び抜けたパーティーか、B・Cランクのベテランが予め罠等仕掛け、うまくおびき寄せでもしなければ全滅必至だそう。

対して、普通のラージスパイダーはCランク程度が「恩恵上げ」によく狩る。

素早く集団で動くので、技量が無ければ恐ろしい相手だという。

だが、一定の技量やスキル持ちには良いカモでもある。

牙毒を持ち、解毒薬かヒーラー必須。

これから俺たちの獲物となる予定だったようだが・・・。



変異スパイターの討伐依頼が出ていたが、目撃情報が曖昧で変異の「クラス」が不明だったのだ。

この辺りで出るとすれば「いつも程度」だと思われていた。

オーガーも倒すパーティー『炎魔剣』ならば問題無いはずだった。

話によれば、上位変異はグレート、アーク等名前に付く。

中でも物語などでデーモンスパイダーというのが有名だそう。

真っ黒なのが特徴で、ドラゴンクラスの魔物とされている。

皆が色々語るが、実際は出遭う事など無い御伽噺(おとぎばなし)のような物で、あまり意味は無さそうだ。



「なるほど、新人メンバーか」

「言っとくが、コウはお前らより強いぜ。俺もすぐ追い抜かれる」


気づくと、少し離れた小剣持ちがなぜか異様に睨んでくる。

意味分からん・・・。


昼食と休憩を終え、香ばしい名前のパーティーと別れる。

他所のパーティー名の事は言えないが。

『目指せ、竜の撃墜王』とか、誰が付けたのかいつか問い詰めよう。

それにしても、彼らはさっきのとこでまだ飯を食っている。

昼に出掛けて来て、危険な時にわざわざ狩場で飯とは。

やる気があるのか無いのか・・・。




スパイターのエリアは遠くはないはずだが、情報のせいか足が進まない。

ついには全員足を止めた。


「どうします?」

「予定じゃスパイダーだったよねー」

「情報が少なすぎるからな・・・。

そうか、さっきの『竜騎士』と合流しよう」

名前だけは縮めるとまともだな。


「アサシン、小剣のがいただろう、あいつは感知が抜群に広い。

だから昼出勤であっという間に狩って帰る。

それで仕事は終わりだから万年Dランクだ。これは内緒だぞ」

「でも、それならあいつらすぐ帰るんじゃ?」

「いる間だけでも異変が有ったら分かるからな。

帰るまでは一緒にいてやろう、みんなはイヤか?」

「構いませんです」

「しゃあないねー」

「俺も、もちろん」



さっきの場所へ戻っていると、数人走って来る。

縮めて『竜騎士』のやつらだ。

「チル、どうした!」

アサシンの名前か。

「大群、絶対クモだよ! まだ遠いけどすぐ来そう」

女の子っぽい高い声に吹きそうになる、あ、女の子だったのか。

「止めてるからギルドに知らせてくれ!」

「わかったあぁぁ」

ここはオークの狩場のはずだが・・・。



「コウはさっきの話で分かったよな、牙の毒に注意な。

まずできるだけ魔法でかき集める。

最初は剣が前衛、囲まれたら剣二人の中央に魔法士で!」


町からは遠いがこの辺岩石地帯は火山のなごりか、木は少なく遠くまで見渡せる。

やがて見えてきた。

クモだけあって速い、焦げ茶っぽい色で1メートルはあるか。

だが小さいのをそのまま大きくしたほどの速さではない。

それでもこのままだとさっきのあいつらも追いつかれるな。


微小な炎が雨のように大クモの群れに降り注ぐ、バンティだ。

詠唱らしいのを今まで聞いていないが、集中って言ってたな。

大クモたちのターゲットを取れたようだ、さすが。


来た。

脳内詠唱「剣技」で次々斬る、走りも早くなり敵の動きも遅く思える。

ゼファは移動メインに速くしている。慣れてる、上手い。

完全に囲まれる事は無く、V字の陣形だ。

ファイアアローが少し離れたクモを先んじて貫く。

たまに背後まで行ったのはカマイタチのように切れていく、ヤリマか。


“恩恵酔い”が続いたが、やがて無くなってきた。

ラージスパイダーもあと十数匹程度だ。



だが。


黒い巨大なものがどこかから落ちてきた。

あの時を思い出す。

あのでかいカニ、違う、真っ黒く巨大なクモだ。

同じ大きさに見えたが幅だけだ、しかしそれでもでかい。

胴体だけで幅2メートルはあり、足が更に長い。


「シールド、退避!」

氷盾が出現し、残ったザコは無視して4人とも滑り込む。

炎、真っ黒クモのブレスが僅かに見えた。

間に合った。

しかし、ブレスが来るってよくわかったな。

ザコのクモがほぼ焼け死んだような、仲間じゃないのか。



ブシュッとロープのような何か、糸だ、背後側の大木に飛んだ。

巨大黒クモ本体が一気に飛んだ、10メートル程背後に移動した。

氷盾の反対側、背後を取られた。

速さがゼファを凌駕している。

勝てない。

終わった。



見覚えのある画面。

(中断しました)の声。

何を中断?

レーダー、加速、重力制御、弱点表示、全部動いている。

当たり前のように。



全員ブレスに包まれた。

体は反応できなかった。

だがメニューは既に作動していた。


『緊急試験動作』

(フィッティング中)

(バリア:試験オート 自律)

(重力制御:試験オート 自律)

(加速:試験オート20%)


ヤリマ、バンティ、ゼファ、全員いる。

バリアは全員を包む範囲だった。

自動だったのか。

俺がさっき自分で広げたのか。



『剣技再起動せよ』の文字が。

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